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やきものの街、岐阜・多治見の「新町ビル」で器やアート作品との心が動く出会いを

  • 2024.7.29

やきものの街として長い歴史を持つ、岐阜県多治見市。時間をかけて培われた豊かな文化をベースに、新たな展開を見せる街の拠点になっているのが「新町ビル」です。東濃地方のやきものを扱うお店と個性豊かなアイテムに出会えるセレクトショップもあり、多治見観光に訪れる人にとってもチェックしておきたい場所。多様な作品や人との出会いに感性が刺激される、岐阜・多治見のスポットを訪れてみませんか。

やきものの街、岐阜・多治見の「新町ビル」で器やアート作品との心が動く出会いを
やきものの街、岐阜・多治見の「新町ビル」で器やアート作品との心が動く出会いを

2つのショップとイベントスペースを備える

やきものの街、岐阜・多治見の「新町ビル」で器やアート作品との心が動く出会いを
目立った看板はないが、通りに入るとすぐにそれと分かるたたずまい

美濃焼の産地として知られる東濃エリアに位置する、岐阜県多治見市。陶芸にまつわる複数の美術館や陶器店が並ぶ街並みがあり、街のあちこちでやきものの文化や歴史にふれられます。そして近年は、やきものなど、ものづくりでつながった人たちが、多様な文化を発信する動きも盛んに。その中心地の一つが「新町ビル」です。名古屋駅から多治見駅までは、JRで約40分。駅から10分ほど歩いて、ゆったりとした土岐川を越えると、商店街の手前に「新町ビル」が見えてきます。

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ビルのエントランスにあたる、1階のイベントスペース。10日~2週間程度で展示内容が替わる

やきもののお店「山の花」とセレクトショップ「地想」、イベントスペースを備える「新町ビル」は、2019年にスタート。20年近く使われていなかったビルを改修して、2階と4階でそれぞれにお店を営む、花山さんと水野さんが手がけています。遠方から多治見を訪れて立ち寄る人をはじめ、二人を訪ねる作家さんや地元の人もあり、幅広く多治見の文化交流拠点となっていることが感じられます。
1階と3階はイベントスペースで、花山さんと水野さんがそれぞれのペースで企画展を開催。レンタルスペースとしても利用されています。

東濃のやきものに魅せられた店主による「山の花」

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多治見で作陶を行う呉瑛姫さんの作品。独特のフォルムと白の下からほんのり浮かぶ色合いが素敵

2階にある「山の花」は、東濃のやきものに魅了された花山さんが営む店。陶芸作家の知人を訪ねて多治見を訪れた際に心を動かされ、この街へ移住。それ以来、やきものに関するさまざまな仕事に携わってきたそう。東濃エリアのやきものと作家さんたちに魅力を感じて、この地域の作品を観てもらえる場所、いろいろなジャンルの人が交わる場所を作りたいという思いが高まり、「山の花」をオープンしました。

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階段を上がってすぐの広い空間と、奥にもスペースがある

多治見周辺には2000 ~ 3000 人もの陶芸作家さんがいると言われていて、その幅もとても広い」と話す花山さん。年代も様々で、全国的にも知名度の高い作家さん、20 代の若手作家、他業種でお勤めしてその傍ら作陶を続ける人など、多様な作家さんが活動しているそうです。まだあまり作品を発表する場を持たない人の中にも、いいなと思う作品は多いらしく、この店を地域の中で作家さんにとって制作活動を続けていく上で意義がある場にしたいという思いも花山さんは抱いています。

作家さんの背景や思いも汲んで、つなぐ役割も

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しょうゆ差しは大江憲一さんの代名詞的な作品。「かっこよくて、機能的にも優れている」と花山さん

そんな「山の花」で扱うやきもののセレクトの基準の一つは作家さんとの距離の近さ。それは物理的な距離だけでなく、関係性の近さも含めてです。「陶芸作家さんたちは人間的にも魅力的で、自分のものづくりにも嘘がない。接していると気持ちがよく、見習いたくなる人が多い。まずは僕自身が作家さんのファン」と花山さん。作品を作り続けてほしいという思いもあり、お客様だけではなく店を訪れる他地域のバイヤーさんたちに、作家さんの紹介をして、つないだりすることもあるそう。東濃のやきものと人への愛着が感じられます。

ともに作品を作る意識で、見せ方や伝え方も工夫

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近年は農業にも携わっている大隅新さんの器(写真右)。瑠璃色が美しい。作品には、作家さんの生活や思想が自ずと表れるそう

店内のディスプレイには、作家名や作品の紹介を記したキャプションはほとんど置いていない。「キャプションがあると作品のかっこよさが半減してしまうこともある、作品をかっこよく見せたい」というのが理由だそう。ディスプレイは季節や天候によっても印象が変わるので、絶えず見直しているという花山さんならではのこだわりです。
その分、作品や作家さんに関する説明は、花山さんがしっかりと伝えてくれます。単なる情報だけでなく、作家さんの背景や思いを伝えるお話を聞くほどに興味が湧き、目の前にある器の魅力も増してきます。

「作り手側に立つことで共に焼物文化を作るということにもなるはず」と話す花山さんが手がける「山の花」は、東濃のやきものの魅力を感じるにはうってつけの場所。「やきもの以外にも素敵なお店が多いんですよ」と多治見愛もあふれ出す花山さんに、おすすめのスポットもぜひ聞いてみてくださいね。

宝探しのように発見を楽しめる「地想」

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陶器やガラス、洋服など多様なアイテムが並ぶ

4階は東濃エリアに限らず、全国から選りすぐったアイテムと出会えるセレクトショップ。名古屋のセレクトショップで店長やバイヤーとして活躍した経験を持つ、水野さんのお店です。多治見市に近い瑞浪市の出身で、ゆくゆくは地元でお店を持ちたいと思っていた水野さん。花山さんに誘われて、ここを最初に見に来た際、「廃墟みたいな状態でしたが、前職で古物を扱ったり、古い場所をリノベーションすることに携わっていた私には、すごく魅力を感じられました。駅からの距離もちょうどよく、大きな川が近くにある。観光の中心地からは少し離れている立地もいい」と感じて、ここでお店を始めることを決めました。

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沖縄の作家、比嘉奈津子さんが“地想”という店名をイメージして作ってくれた作品

お店のコンセプトは“見知らぬ地を想う”。制作の仕方や考え方が他にない方の作品がいいと思い、自身も感動するかどうかを基準にこつこつと作品を集めているそう。全国のいろいろな街へ出かけて、メインストリートをちょっと外れた別世界に出合うのが楽しいと話す水野さん。「作家さんに会いに行って、どんな場所でどんな思いで作っているかを感じ取ることが大切で、それがお店のコンセプトに繋がっています。」そんなお店づくりへの姿勢は、店内を回りながらそれぞれの作品について聞いていると十分に伝わってきます。

地域でのイベント開催にも携わる

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一つひとつ異なるユニークな形の鳥たちは、地元の作家 小平健一さんの作品

訪れる人と気さくに交流する水野さん。多治見を拠点として活動するさまざまなジャンルの人とつながり、新町ビルはこのエリアの新しいムーブメントの台風の目のような存在になっています。今年の秋に多治見で開催される「国際陶磁器フェスティバル美濃'24」の時期に合わせて、多治見~土岐~瑞浪のエリアで行われる芸術祭の企画にも携わっているそう。「土の価値を見直そうという、土をテーマにした芸術祭。酒蔵など歴史ある建物にアート作品を展示する予定です。」東濃のエリアを初めて訪れたり、あらためてじっくりめぐってみたりするきっかけにするのもよさそうです。

ここに来れば、魅力的な作品はもちろん、何かに出会えそうな期待が高まる新町ビル。多治見や東濃エリアを訪れるお目当ての一つにしてみてはいかがでしょうか。

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