【中央区】お一人様専用「喫茶カルメル堂」

突然雨が降り出した。

次の予定までまだ間があり、ぶらぶら散歩しようと思っていたのにひどい雨で傘がない。

そんな時はあそこで何か美味しいものを食べよう。本も読めるし静かな時間を楽しめる。

「お一人様専用喫茶店カルメル堂」

表通りからちょっと入った中小路の雑居ビル。しかも6階、これぞ隠れ家。

入口は、昭和どころか大正時代みたいなレトロぶり。

からんとドアを開けると、いらっしゃいませとにこやかに声がかかる。お好きな席にどうぞと言われ、暗く落ち着いた壁ぎわの席へ。

実はプリンを食べようと思っていたのだが、6月で終わったらしい。

硬めのプリンはまた来年の春までおあずけ。

こうした季節のメニューがあるのも、人気の理由だろう。

では、ドライフルーツとナッツの生チョコレートにしよう。それと深煎りのコーヒー。

店員さんを呼ぶのは小さなベルである。

おしゃべりは極力少なく。

まるでシャーロックホームズに出てくるディオゲネス・クラブのようだ。

この徹底した静謐さこそがこの喫茶店の素晴らしさ。

本のページをめくる音と、シックなピアノ曲だけ。

二人以上で訪れた場合は、離れた席に座り会話は禁止。

注文を受けてから豆を挽き、ていねいにコーヒーを落としてくれる。

本を読みながらゆったりと待つ。

おひとり様90分程度のご利用でお願いしますとあるので、安心して1時間本を読むことができる。

チョコレートには、ふんだんにイチジクやレーズンが入っており、ラム酒の豊かな香りがたまらない。

イチジクってどうしてこんなに美味しいんだろう、ちょっとプチプチしすぎじゃないだろうか！

私の後に来店した女性は、一人で3000円くらいのオーダーをしていた。

こういう熱心なファンも多かろう。そのくらい素敵な店なのだ。

気が付けばいい時間。

古いエレベーターで下に降りると晴れやかな青空。

なんだかタイムスリップしたような気持ちになった。