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これで「夏休みの昼ご飯問題」が解消…103歳が編み出した火を使わずチャーハンができる「モミモミ調理」のすごさ

  • 2024.7.29

親にとって「夏休みの子どもの昼ご飯」は頭の痛い問題だ。料理研究家の荻野恭子さんは「母は私の著書を参考に、90歳半ばから料理づくりに『モミモミ調理』を取り入れた。モミモミすることで、おいしい漬物などをつくりながら手の運動も兼ねていた」という。子どもから103歳まで誰でも楽しく料理に取り組めるレシピとは――。

※本稿は、荻野恭子『103歳の食卓 母とつくり上げた卓上クッキング』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

モミモミだけで漬物からスープまでできる

母の一日の食事は、朝昼を兼ねたブランチと夕食の2食でした。ブランチはパンにチーズや生ハム、ソーセージと野菜。夕食は肉や魚介の主菜に野菜、そして少量のご飯。こんな具合に朝夕とも簡単な献立にしていました。

漬物が好きだった母は、朝に夕にとサラダ感覚で漬物を食べていました。そこで役に立ったのが「モミモミ調理」です。ジッパーつき保存袋に野菜と調味料を入れてモミモミすれば、簡単に漬物が出来上がります。漬物だけにとどまらないのがモミモミの頼もしいところ。サラダや和え物、スープに至るまでいろいろな副菜がつくれます。

きゅうりと生姜の漬物
きゅうりと生姜の漬物
※『103歳の食卓』より


材料(つくりやすい分量)
きゅうり……2本
生姜……1片
塩……小さじ1
砂糖……小さじ4分の1

つくり方
きゅうりは1cm幅の輪切りに、生姜は薄切りにしてジッパーつき保存袋に入れ、調味料を加え、全体がなじむまでモミモミする。

モミモミ調理は子どもの夏休みにも有効

母が「モミモミ調理」をはじめたのは、90歳半ば頃。私が出版した『ポリ袋漬けのすすめ』(文化出版局刊)がきっかけになりました。

『ポリ袋漬けのすすめ』(文化出版局 刊)を手に
※『103歳の食卓』より

今や私の定番ともなった「ポリ袋調理」ですが、ヒントになったのはタイでの経験です。30年ほど前、姉が仕事でタイに赴任していたので、母や家族とよく遊びに行っていました。滞在中に、ちょくちょく屋台でテイクアウトしたのですが、どこの屋台も料理をポリ袋に入れて持たせてくれるのです。揚げ物などのおかずはもちろん、驚いたことにフォーなどの汁麺も。それがなかなかいい。容器要らずでゴミも少なく、汁もれをすることもないし、手軽です。これはいろいろ使えるな、とひらめきました。ポリ袋ならどこのキッチンにもあるし、コンパクトにストックできますから。それ以来、ポリ袋を使ってつくる料理をあれやこれやと研究し、1冊にまとめました。

この本を参考にして母はポリ袋を使ってせっせと副菜をつくるようになりました。手の運動にもなるモミモミ調理は高齢者におすすめですが、実は子供にもなかなかウケがいいんですよ。遊び感覚でモミモミ。それが料理になるから喜びはひとしおです。

材料はキッチンバサミで切れば安心。さらに母のようにホットプレートで加熱すれば調理も安全です。

たとえば適当に切ったハムや野菜、そしてご飯と調味料をポリ袋に入れます。そこに卵を割り入れてからモミモミ。全体が馴染んだらホットプレートにざーっと広げて炒めます。卵に火が通ったらチャーハンの出来上がりです。

荻野恭子『103歳の食卓 母とつくり上げた卓上クッキング』(プレジデント社)
荻野恭子『103歳の食卓 母とつくり上げた卓上クッキング』(プレジデント社)

そしてもう一品。缶詰めの焼きとりをポリ袋に入れて卵を割り入れ、モミモミ。ホットプレートで加熱して卵が半熟状になったら温かいご飯にのっけます。子供たちにも大人気の親子丼が出来上がり!

さらにモミモミはおやつづくりにも一役買います。ヨーグルト、好みのフルーツ、砂糖を袋に入れてモミモミ。袋ごと凍らせればフローズンヨーグルトに早変わり。ボウルも泡立て器も必要ありません。

最初は親子で一緒につくってください。コツがわかれば次からは子供だけでもつくれるはず。自分でつくる楽しさを覚えてしまったちびっこは、どんどん進化していきます。材料を変えたり、味つけを工夫したり。夏休み中にレパートリーが増えること間違いなしです。

フレンチトースト
フレンチトースト
※『103歳の食卓』より


材料(1人分)
食パン(6枚切り)……1枚
卵液
卵……1個
牛乳……大さじ2
バター……大さじ2
シナモンパウダー、メープルシロップ……各適量

つくり方
1 ポリ袋に卵液の材料を合わせてモミモミして混ぜる。
2 食パンを4等分に切って1に入れ、卵液を全体にしみ込ませる。
3 ホットプレート(鍋)にバターを熱し、2を入れて両面を香ばしく焼く。皿に盛ってシナモンパウダーをふり、メープルシロップをかける。

握力アップでストックが増える

モミモミ副菜にはフレッシュな野菜に加えて市販の乾燥野菜もおすすめです。野菜を切ってから乾燥させてあるので包丁いらず。乾物特有の滋味あふれる風味と、しっかりとした歯ごたえが気軽に楽しめます。味つけは自由自在。塩、醤油、味噌をベースに胡麻を入れたりピリ辛にしたり、旨味出しにじゃこや桜海老も重宝します。

チャレンジ精神旺盛な母は、素材と味をいろいろに組み合わせてアレンジを楽しんでいました。数種類つくってストックしておけば副菜には困りません。実は「酒のあて」につくっていたのかも。

モミモミ後、空気を抜いて保存するのがポイント。3~4日はおいしく食べられる。
※『103歳の食卓』より モミモミ後、空気を抜いて保存するのがポイント。3~4日はおいしく食べられる。

モミモミ調理は火を使わずにできますから、これぞ卓上クッキングの極みです。さらに嬉しいのは、「モミモミ」は手の運動になるということ。くるみやボールを「にぎにぎ」するのと同様に、握力アップに大いに役立ちます。おいしい副菜をつくるだけではないところが、母がモミモミにハマっていた理由だと思います。

トマトのガスパチョ
そうめんや細めのパスタを入れてもおいしい。流水麺を使えばさらに手軽だ。
※『103歳の食卓』より そうめんや細めのパスタを入れてもおいしい。流水麺を使えばさらに手軽だ。


材料(つくりやすい分量)
トマト……2個(400g)
きゅうり(粗いみじん切り)……大さじ2
玉ねぎ(粗いみじん切り)……大さじ1
パプリカパウダー(あれば)……小さじ4分の1
塩……小さじ2分の1
レモン汁……大さじ1
オリーブオイル……適量

つくり方
トマトは角切りにしてジッパーつき保存袋に入れ、モミモミしてつぶす。
パプリカパウダー、塩、レモン汁とオリーブオイル大さじ2を加えてさらにモミモミする。
器に盛ってきゅうりと玉ねぎを散らし、オリーブオイル、パプリカパウダー各少々をふる。

荻野 恭子(おぎの・きょうこ)
料理研究家、栄養士、サロン・ド・キュイジーヌ主宰
ユーラシアをはじめ、65カ国以上の国を訪れ、家庭や店で土地の料理を学ぶ。日本でつくれるレシピに置き換えて多くの雑誌や本で紹介している。『塩ひとつまみ それだけでおいしく』(女子栄養大学出版部)、『ビーツ、私のふだん料理』(株式会社扶桑社刊)、『ポリ袋で簡単!もみもみ発酵レシピ』(株式会社池田書店刊)など、著書も多数。

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