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40歳の誕生日がこわい! 一生独身を覚悟した直後、エレベーターで再会した彼

  • 2024.7.29

「このままずっと一人なのかな」と悩むあなたに届けたい、本当にあった大人のマリッジ・ストーリー。35歳以降に結婚した大人婚の先輩たちに、出会ったきっかけや結婚の決め手、妊活・キャリア・親の問題まで根掘り葉掘り聞きました。ここに紡がれた幸せな物語はすべてほんもの。だから全部あなたにも起こりうること――。今回は、40歳の誕生日直前に、運命の人に再会したというMさんの大人婚物語。

【今回の大人婚】Mさん 結婚時の年齢:40歳

メイクアップアーティストとして働くMさんは現在46歳。同い年の夫・Rさんと都内で穏やかな二人暮らしをしています。結婚生活も6年目に入りました。

いつも恋より仕事を選んできた

地元で結婚式や撮影のヘアメイクの仕事をしてきたMさん。30歳目前となり、東京で勝負したいと思うようになりました。当時、5年ほど付き合っていた彼から「俺を置いていくの?」と反対にあい、迷ったものの恋より夢をとって、別れを決断。上京の準備を進めました。すると、同じく上京の夢を持つ男性と出会い、意気投合。先にMさんが上京し、1、2年の遠距離恋愛を経て、彼も上京。同棲生活をスタートしました。

「彼が東京に来ると言ったとき、自分のために来るならいいけど、そうじゃないなら来ないでって言ったんです。私は東京で夢を叶えようといっぱいいっぱいで、彼のお世話をする余裕はない。それくらい私はこの仕事に本気でした。彼もそれを了解して上京したはずなのに、仕事に全力投球する私に『お前のために来たのに』と言われたんです」

その彼とは結局別れることとなった。
「7年付き合ったので、後半は結婚の話も出ましたが、いつも私に選ばせて自分では動こうとしない彼に頼りなさを感じました。それに、私は複雑な家庭環境で育ったので、夫婦というものに憧れがなくて。結婚するときは相手との子どもが欲しい時だと考えていたのですが、彼とはそういう気持ちになれませんでした」

結婚式のヘアメイクをしていた頃。上京後は仕事に無我夢中だったので写真が何も残っていない

恋の始め方を忘れてしまっていた

37歳でひとりになったMさん。仕事は充実していて、雑誌や広告のヘアメイクとして活躍するようになったものの、プライベートではだんだん焦りを感じるようになりました。

「子どもはどちらかと言えば苦手なのですが、やっぱり40歳が見えてくると、身体的なタイムリミットが迫ってくるのをひしひしと感じて。〈本当に子どもを産まなくていいの?〉〈一生、独りでやっていくの?〉と自問自答して、パートナー探しに焦るようになりました。でも、これまで、すぐ同棲して長く付き合って熟年夫婦みたいになる恋愛だったので、恋の始め方を忘れてしまって。いいな、と思った人も友達みたいになっちゃうし、遊ばれて終わっちゃうことも。気が付いたら39歳の誕生日を一人で迎えていました」

Mさんにとって「40歳」は大きな節目だった。
「40歳と言えば、人生もうあと半分しかないじゃないですか。どうしよう、あと1年で40歳になる。それまでに私は人生のパートナーを見つけられるんだろうか、それとも一人で生きる覚悟を決めて、保険の見直しとか、マンションの購入とか考えたほうがいいんだろうか、と真剣に悩んでいました」

その数日後、ある出会いが訪れた。

〈40歳飲み〉の約束をして

「その日は出版社のロケ撮影の仕事。帰り道、ロケバスが渋滞に巻き込まれてしまい、『借りていた撮影機材の返却が間に合わない』とスタッフさんが困っていました。その返却先が私の家の近くだったので、『家まで送ってくれたら、私が撮影機材をいったん預かって、翌朝返しにいきますよ』と提案したんです」

それはありがたい、ということで、他のスタッフは駅で降り、運転係の編集さんがMさんを家まで送り届けることに。
「その人は、転職したばかりで、本来ならそのロケのメンバーではなかったのですが、運転免許を持っていたことから急遽手伝いに駆り出されたらしいんです。初対面のその人と打ち解けようと、『私、こないだ39歳の誕生日を一人で過ごしたんですよ~。40歳がこわいです!』って話をしたら、『えっ、僕同い年です!』と盛り上がって。でもその時は、あくまで仕事先の人という感じでした」

それから1年、出版社のエレベーターの前でばったり彼と再会した。
「そのとき、彼が『そういえば今月、お誕生日でしたよね』と言ってくれたんです。覚えていてくれたことにびっくりしました。私も、彼が早生まれで先に40歳になっていたことを思い出して、『どうでしたか? 40歳になってみて』と聞いたら、『別に何事もいつもと変わらず』ってのほほんと答えるんです。『え~!もっと真剣に考えたほうがいい! 今度〈40歳飲み〉しましょう』って私が社交辞令で言ったら、いいですねって翌月の仕事終わりに飲むことになったんです」

〈40歳飲み〉は話が弾んでとても楽しかったそう。すぐに2回目のご飯に行くことに。その帰宅後、お礼メールをすると、次の日、彼は当時ヒットしていた映画「カメラを止めるな!」を観に行くと言う。ちょうどMさんも観たかったので一緒に行くことに。

コロナ禍もあり、結婚式は挙げなかったけれど、友人たちが手作りの結婚パーティを開いてくれた。「仕事柄、たくさん結婚式に出たので、もう自分のはいいや、と思っていました(笑)。友達からのおめでとうの気持ちがとても嬉しかったです」

大人は告白なんてしないと思ってた

「映画を観て、お昼ごはんを食べ、一緒に街をぶらぶら歩いているときに、彼が『こんなデートするの久しぶり』と言ったんです。それで、あ、向こうはこれを〈デート〉だと思ってくれているのか、とキュンとして(笑)。その日、楽しすぎて終電を逃した彼がうちに来たいと言い出したんです」

いつもだったら警戒するところを、なぜかOKしてしまったMさん。並んで寝たものの、「そういうことはしないから」という約束通り、何もなく朝を迎えた。
「翌朝、彼が真剣な顔で『付き合ってください』と言ってくれました。これまで、きちんと言葉にしたりせず、なし崩し的に『これって付き合ってるよね?』ってなるのが大人の恋愛だと思っていたんです。気が付くと、都合のいい女になっていたこともありました。だから、彼がちゃんと言葉にしてくれたことに感動しました」

その彼が、のちの夫となるRさんだった。
「Rは付き合い始めてすぐに、『この年齢の人と付き合うのだから、結婚することを前提で考えている』と話してくれました。早い展開に不安になることもありましたが、今までは自分が引っ張っていく恋愛で失敗に終わっていた。そうじゃなくて、相手の用意した船に乗って任せてみるというのもいいのかもしれない、と思うようになりました」

フリーランス仲間と毎年のようにお参りに行っていた神社。いつも商売繁盛を祈願していたけれど、「そろそろ恋愛についてもお願いしたら。最近、なんかないの?」と言われ、頭に浮かんだのが彼との食事の約束だった

「子ども」問題、二人が出した結論

交際半年で結婚したMさん。ただ、ひとつだけ「子ども」については意見の違いがあったという。Mさんはこのとき、できれば子どもを欲しいと考えていた。

「彼は子ども好き。でも、自分が子を持つのには消極的でした。じつは、彼はきょうだいが若くして産んだ子の学費援助をするなど、20代、30代は家庭で色々苦労があったそうなんです。その子が独り立ちして、ようやく自分の人生を考え出した時に私と出会い、結婚を決めたそうで。彼には『あの大変さを今の年齢からもう一度繰り返すのは……』という気持ちがあったんです。だから私は自分に問いかけてみました。子ども好きというわけでもないのに、欲しがっているのはどうしてなんだろうって。それはやっぱり、『最後のチャンスかも』っていう焦りからで、じゃあ実際に今、子どもが生まれたらちゃんと育てられるのかな、いや、自信ないな、って思ったんです」

二人で出した結論は、妊活まではせず、自然に任せることだった。

結婚して幸せを感じるのは、どんな時ですか。
「一人暮らししてたときは、仕事から帰ったらすぐテレビをつけていたんです。誰かがしゃべっている声が聞こえていないと寂しくて。でも今は、Rがいる。二人で別々のことをしていたとしても、そこにいてくれるだけで安心します。結婚するときにちょうどパンデミックがあったんですが、仕事が減って、人と会わなくなったあの時期、もしRと出会っていなかったら、私、心が折れていたと思います」

今の楽しみは、Rさんの運転するバイクに乗って、あちこち旅行すること。大人婚でよかったと思いますか。
「若い頃だったら、たとえ相手がRでも喧嘩別れしていた気がします。大人になった今だから、相手と意見が違っても、『何もかも一緒じゃなくてもいいよね』って思える、お互いを認め合える。Rとはほとんどケンカしたことがないんですよ。このままずっと、現状維持でいきたいな。あ、ひとつだけ夢があって、それは二人で犬を飼うこと。彼はペットロスがこわくて躊躇(ちゅうちょ)していますが、私は愛情深い彼と一緒になにかを育ててみたい。今、機会をうかがっているところです(笑)」

タンデムツーリングでの一コマ。かっこいいMさんを撮ったのはRさん

(写真:本人提供)

■清繭子のプロフィール
エッセイスト/ライター/エディター。エッセイ集『夢みるかかとにご飯つぶ』(幻冬舎)2024年7月発売。出版社で雑誌・まんが・絵本の編集に携わったのち、39歳で一念発起。小説家を目指してフリーランスに。Web媒体「好書好日」にて「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」を連載。特技は「これ、あなただけに言うね」という話を聞くこと。note「小説家になりたい人(自笑)日記」更新中。

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