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祝90歳!ジョルジオ・アルマーニの功績をスタイリストの喜多尾祥之さんが振り返る

  • 2024.7.29
ジョルジオ・アルマーニと愛車のビートル

言わずと知れたファッションデザイナーのジョルジオ・アルマーニ氏は、今年90歳の誕生日を迎えた。今も現役でデザインの現場に立ち、毎シーズン世界中の洋服好きを魅了するコレクションを発表し続ける巨匠だ。そんな彼が手がけるイタリア発のブランド〈ジョルジオ アルマーニ〉も、実は来年で50周年!1975年の創立以来、革新的な服作りで時代の先頭を走ってきた。

誰もが知る〈ジョルジオ アルマーニ(以下アルマーニ)〉というブランド、そしてアルマーニ氏の魅力について、BRUTUSでも一緒に企画を作っていただいているスタイリストの喜多尾祥之さんに話を聞いてみた。40年以上ブランドを見てきた喜多尾さんにとって、アルマーニとはどんなブランドなのか?喜多尾さんの私物とともに紹介します。

スタイリスト・喜多尾祥之さんが語るアルマーニ氏の魅力とは?

「僕が初めてアルマーニを買ったのは高校生の時。雑誌『ポパイ』で読んだ、ドレスダウンにイタリアものを交ぜて外すという着こなしに憧れ、〈エンポリオ アルマーニ〉のニットタイを買いました。

その後、アルマーニの真のすごさを思い知ったのは、スタイリストになってからのこと。“ソフトスーツ”が登場した時ですね。70年代のヒッピームーブメントの反動で、構築的なジャケットを軸にしたDCブランド人気が高まっていた頃に、アルマーニは時代の逆を行く存在でした。

パワーショルダーのスーツが流行するなか、ジャケットから肩パットを排し、ビスコースという婦人服に用いられる柔らかな素材でメンズスーツを作り上げたのです。揺れるように柔らかなスーツにTシャツを合わせるという、新しいファッションスタイルを築き上げたともいえます。まさに、革命でした」

〈エンポリオ アルマーニ〉のニットタイ
喜多尾さんが初めて買った〈エンポリオ アルマーニ〉のニットタイ。
〈エンポリオ アルマーニ〉のニットタイ
「高校生の時に雑誌『ポパイ』を読んで。白い短パンに足元は〈ティンバーランド〉、ダンガリーシャツにこのタイを締めてジャケットを羽織る、みたいな格好でしたね」。
〈ジョルジオ アルマーニ〉のソフトスーツ
喜多尾さんが25歳の時に買った〈ジョルジオ アルマーニ〉のソフトスーツ。喜多尾さんいわく、1940年代のテーラリングをモデルにしていると思われる。正統派といわれる40年代のスーツをベースに素材を柔らかくし、ボタン位置やラペルのノッチを下げ、ショルダーには傾斜がつき、気品と知性は損なわずに着心地のいいスーツを作り上げた。
〈ジョルジオ アルマーニ〉のソフトスーツ
「このスーツにTシャツか〈ジョン スメドレー〉のニットポロを合わせ、〈パラブーツ〉の茶色のプレーントウを履くのが、当時の僕の一張羅でした」。

柔らかさと知性溢れる服作り

喜多尾さんは25歳の時にソフトスーツを購入し、そのスタイルに傾倒していったという。

「アルマーニのかっこよさを一番よく映し出したのは、写真家アルド・ファライだと思います。彼の撮るビジュアルには僕も強く影響を受けました。イタリアやモロッコの街中で、現地のモデルたちの自然体の姿を切り取った写真は、アルマーニの持つ柔らかなエレガントさにマッチし、独特の“抜け感”が生まれていて。ほかのブランドにはない、肩の力が抜けたかっこよさがあったのです」

アルド・ファライが撮影したジョルジオ・アルマーニのルック
アルマーニのファッション写真といえばアルド・ファライ、といわれるほど、ふたりが作りだすビジュアルは洗練されていた。イタリアやモロッコなど、ブランドにゆかりのある地で、現地の人をモデルに起用し独特の空気感を映し取る手法は、ファッション写真におけるリアリズムの先駆けともいわれている。©Aldo_Fallai
アルド・ファライが撮影したジョルジオ・アルマーニのルック
「僕は特にモロッコのシリーズが好き。絶妙な“抜け感”が写真に表れていて、モデルたちの肩肘張らない表情や仕草など、真似しようとしてもできない良さがありました。そんなアルド・ファライの写真とアルマーニの洋服が持つ柔らかさが見事にマッチしていて、アルマーニらしさを体現するビジュアルばかりでしたね」©Aldo_Fallai
雑誌『GQ』1990年1月号のファッションーページ
。「写真からも生地の柔らかさや美しい“落ち感”が伝わります。この生地が揺れる感じこそ、アルマーニの真骨頂。ジャケットはもちろん、パンツの美しさも際立っているビジュアルです。僕が思うに、アルマーニのパンツが一番エレガント。ぜひ、大人に穿いてもらいたい」雑誌『GQ』1990年1月号掲載。
雑誌『GQ』1990年1月号のファッションーページ
雑誌『GQ』1990年1月号掲載。
雑誌『GQ』1990年1月号のファッションーページ
雑誌『GQ』1990年1月号掲載。
雑誌『GQ』1990年1月号のファッションーページ
雑誌『GQ』1990年1月号掲載。

さらに喜多尾さんは、アルマーニ氏本人のファッションやライフスタイルにも、ブランドに通ずる信念が感じられると語る。

「デザイナーって、華美な人もいるし、逆に自分には無頓着な人もいるけど、アルマーニ氏の私服のバランスにも憧れます。建築にも精通していて、服作りに知性が宿っています。愛車もスーパーカーではなく、フォルクスワーゲンの白いビートルというのも粋。

また、近年の〈エンポリオ アルマーニ〉がエネルギッシュでとてもよく、“服作りを楽しんでいるな”と感じます。アルマーニ氏の活躍を見ると、情熱さえあれば年齢なんて関係ない、現役に終わりはないのだと勇気をもらいます。知的で大人なアルマーニ氏のクリエイションが、これからも楽しみです」

ジョルジオ・アルマーニと愛車のビートル
アルマーニ氏の愛車はビートル。「自身のスタイルとブランドのイメージが合致するのも魅力です」と喜多尾さん。

最近の冬の愛用アイテム

〈ジョルジオ アルマーニ〉のアウター
近年愛用する〈ジョルジオ アルマーニ〉のアウター。
〈ジョルジオ アルマーニ〉のアウター
「5年前に購入。裏地に肉厚のフリースが使われていて、スキーウェアやアウトドアジャケットが着想源なのかなと。機能性とデザインが共存する、アルマーニらしい一着です」

知性があって、不思議と落ち着く。それは香水も同じ

《アルマーニ プリヴェ ノワール コガネ》とシグネチャーの《アルマーニ プール オム オードトワレ》
喜多尾さんも愛用している香水《アルマーニプリヴェ ノワール コガネ》(左)とシグネチャーの《アルマーニ プール オム オードトワレ》(右)。「イタリアらしい大人な香りなんだけど、やっぱり知性を感じるんです。強めに付けても嫌な顔をされたことがないくらい上品。昔は写真右のを、今は左の金継ぎデザインの香水を使っています。アルマーニの香水は、洋服のデザインと一緒で深みがある。香りが何層にも重なっていて、人の記憶に残ると言いますか、一緒にいる人から“落ち着く香り”とよく言われます。程よくスパイシーで刺激的な感じも好みです」

左/アルマーニ プリヴェ ノワール コガネ 100㎖ 52,250円。右/アルマーニ プール オム オードトワレ 100㎖ 13,200円(共にジョルジオ アルマーニ ジャパン TEL:03-6274-7070)

profile

ジョルジオ・アルマーニ

1934年イタリア生まれ。世界的なファッションデザイナー。国立ミラノ大学医学部在学中に兵役に徴集され、中退。ミラノの名百貨店〈ラ・リナシェンテ〉のバイヤーやフリーランスデザイナーとして経験を積み、75年に自身のブランドを設立し来年50周年を迎える。

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スタイリスト・喜多尾祥之

喜多尾祥之

きたお・よしゆき/1965年東京都台東区浅草生まれ。スタイリスト。80年代に雑誌『ポパイ』でデビュー。以後、雑誌、広告などや俳優のビジュアルディレクションを手がける。食通としても知られ、著書に『魔味探求 五感が覚醒、男の深夜めし。』がある。

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