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コモドドラゴンの牙は「鉄コーティング」で殺傷能力をUPしていた!

  • 2024.7.28
コモドドラゴンの牙は「鉄コーティング」されていた
コモドドラゴンの牙は「鉄コーティング」されていた / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

”生きた恐竜”とも称される世界最大のトカゲ、コモドドラゴン

彼らの鋭い牙に「鉄コーティング」が施されていたことが英キングス・カレッジ・ロンドン (KCL)の最新研究で明らかになりました。

これにより獲物を引き裂く殺傷能力が格段にアップしていたようです。

研究の詳細は2024年7月24日付で科学雑誌『Nature Ecology & Evolution』に掲載されています。

目次

  • コモドドラゴンの「鋸歯」は肉食恐竜と似ている
  • 鋸歯に「鉄のコーティング」が施されていた!

コモドドラゴンの「鋸歯」は肉食恐竜と似ている

インドネシア原産のコモドドラゴン(学名:Varanus komodoensis)は、現存するオオトカゲの中で最大の種です。

全長は2〜3メートル、体重は70〜80キロに達し、最大だと全長3メートル13センチ、体重166キロの個体が確認されています。

コモドドラゴンは生息地の頂点捕食者として君臨しており、彼らに敵うものは誰もいません。

小型の爬虫類から鳥、鹿、馬、水牛にいたるまで、サイズを問わず、ほぼあらゆる種類の獲物(※)を食べることができます。

(※ 人が襲われて死亡したケースもいくつか報告されている)

生態系の頂点捕食者に君臨する「コモドドラゴン」
生態系の頂点捕食者に君臨する「コモドドラゴン」 / Credit: canva

彼らを恐怖のプレデターとして君臨させている最大の要因は、口内に生えそろった「鋸状の鋭い歯」です。

カーブを描いたギザギザの歯は、かつての肉食恐竜たちが持っていた牙と類似していることがたびたび指摘されています。

英KCLの研究チームは今回、コモドドラゴンの強靭さをより深く理解するため、歯に見られる化学的構造を新たな調査しました。

鋸歯に「鉄のコーティング」が施されていた!

チームは高度なイメージング(画像化)技術と化学分析の手法を用いて、博物館に保管されているコモドドラゴンの歯や頭蓋骨を分析しました。

それと並行して、ロンドン動物園で飼育されている15歳のコモドドラゴン「ガナス(Ganas)」の歯も調べています。

その結果、歯の側面に沿っているギザギザの鋸歯が「鉄」で覆われていたことが新たに判明したのです。

鉄分は鋸歯の先端部分を覆うように濃縮されており、それによってオレンジ色のコーティングができていました。

コモドドラゴンの歯の顔面図。オレンジ色の部分が「鉄のコーティング」
コモドドラゴンの歯の顔面図。オレンジ色の部分が「鉄のコーティング」 / Credit: KCL/Dr Aaron LeBlanc(2024)

研究者たちは、オレンジ色の鉄コーティングが歯の切れ味を高める層として機能していると指摘。

鉄の層のおかげで獲物を切り裂く能力が格段に高まっていると考えられます。

また鉄コーティングがなかった場合、コモドドラゴンの歯におけるエナメル質の磨耗が早くなり、獲物を捕食するたびにすり減って切れ味が鈍くなっていただろうと説明しました。

コモドドラゴンが頂点捕食者に君臨できる所以は、この鉄コーティングされた歯に大きな要因があったようです。

チームはこの予想外の発見に驚きを隠せませんでした。

というのも、爬虫類の歯には一般的に「鉄分が豊富に含まれている」という報告がないからです。

そのため、鉄分を歯の表面に濃縮させるコモドドラゴンの能力は、爬虫類の中でも極めて稀なケースだといいます。

Tレックスも「鉄コーティングの歯」を持っていた?

ただ研究チームは、コモドドラゴンと同じ「鉄コーティングの歯」を持つ最有力候補として、ティラノサウルスを代表とする肉食恐竜を挙げています。

先ほども言ったように、コモドドラゴンと肉食恐竜の歯は互いによく似ていることがわかっています。

ですから、肉食恐竜の鋸歯にも鉄コーティングが施されていた可能性は十分にあります。

肉食恐竜も「鉄コーティング」の歯を持っていたかも
肉食恐竜も「鉄コーティング」の歯を持っていたかも / Credit: canva/ナゾロジー編集部

しかし意外にも、肉食恐竜たちの歯にそのような証拠はまだ見つかっていません。

その理由について、研究主任のアーロン・ルブラン(Aaron LeBlanc)氏は「化石化の過程で何らかの化学変化が生じ、それが元々の鉄の量を変えてしまっている可能性がある」と指摘しています。

それでも現在の化学分析の技術を発達させれば、肉食恐竜の歯の中にも鉄コーティングの存在を示す新たなマーカーが見つかる可能性は高いです。

現にコモドドラゴンと肉食恐竜は同じ爬虫類の一派なので、両者が「鉄の牙」を共有していたとしてもおかしくはないでしょう。

もしコモドドラゴンがTレックスと同じ牙を持っているとなると、今日の生態系で無双状態になっているのも納得ですね。

参考文献

Komodo dragons have iron-coated teeth to rip apart their prey
https://www.kcl.ac.uk/news/komodo-dragons-have-iron-coated-teeth-to-rip-apart-their-prey

Komodo dragons bite prey with iron-tipped teeth
https://www.nhm.ac.uk/discover/news/2024/july/komodo-dragons-bite-prey-with-iron-tipped-teeth.html

元論文

Iron-coated Komodo dragon teeth and the complex dental enamel of carnivorous reptiles
https://doi.org/10.1038/s41559-024-02477-7

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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