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快適なだけじゃない。イタリア発モルデカイが目指す、コンフォートウェアのその先【若手デザイナー連載】

  • 2024.7.28

イタリア人デザイナーのルドヴィコ・ブルーノがモルデカイ(MORDECAI)をスタートさせたのは2023年。その名の由来については「ただ気に入ったから」と切り上げようとしたが、何かしらの理由があるだろうと問い詰めると、彼はウェス・アンダーソン監督の『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001)に登場する同名の鷹がインスピレーション源であると明かした。彼の言葉を借りるに、「軽やかかつ正確に、人生の重苦しさの上を鋭く滑空する」鳥の名は縁起がいいと感じたという。

シーンレスに纏えるコンフォートウェアを追求して

ブルーノはニューヨークのプラット・インスティテュートで学んだ後、3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIMやエドワード・ブキャナンのサンソヴィーノセイ(SANSOVINO 6)での仕事を経て、モンクレールMONCLER)での10年にわたるキャリアをスタートさせた。

モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)のヘッドデザイナーを務める前は、ガム ルージュ(GAMME ROUGE)とガム ブルー(GAMME BLEU)のラインに携わり、在任中はジャンバティスタ・ヴァリ藤原ヒロシトム・ブラウンなど、一流のクリエイターたちとコラボレーションをした。なかでもブラウンのテーラリングに対するこだわりは彼のデザインに強い影響を与えたそうで、ブラウンがガム・ブルーのクリエイティブディレクターだったとき、二人は上質なフランネルや軽やかなウール素材を使ってテーラードの要素をダウンジャケットに落とし込んだり、標準的なパデッドジャケットよりもフィット感がある洗練されたシルエットを作り上げたりと、新しく実験的なアプローチを展開した。

その後、アンブッシュ®(AMBUSH®)ユンのもとでさらに腕を磨いた彼は、自身のレーベルを立ち上げることに。その背景について、「ストリートウェアとテクニカルなスポーツウェアに代わるものを見つけたかったから」とブルーノ。「もっとゆったりとしていて、着心地がよく、旅行にも行きやすい、それでいて程よくきちんとしている」という、彼のパーソナルなスタイルに合ったものが欲したかったからだと話す。

旅好きな彼はフィットネスにも情熱を注いでいるそうで、毎日トレーニングを欠かささない。マーシャルアーツにも長けている彼の体格は、控えめに言ってもがっしりとしていて、「最近の細身のメンズウェアなんて、着たくても着られないですね」と冗談めかす。

重厚感のある見た目とは裏腹に、圧倒的に軽い着心地

ブルーノが作る服は、高性能スポーツウェアのテクニカルな要素、旅先で見つけたスタイル、ストリートウェアのクールさ、そして洗練されたフォーマルさを兼ね備えている。ボリュームこそあるものの、機能的なレイヤリングと幅広い着こなしを可能にするため、生地と構造においては軽やかさを追求しており、シルエットは「首、手首、足首をポイントにした8の字型」とデザイナーは説明する。

モルデカイのシグネチャーピースとなるのは、ポンチョやストール、ケープといったアウターだ。そのほとんどは超軽量のコットンナイロン製で仕立てられており、さりげないパディングが効いている。6月のメンズ・ファッション・ウィーク中にミラノで発表された2025年春夏コレクションは落ち着きのあるニュートラルカラーで繰り広げられ、ジムウェアにインスパイアされた軽やかなレザーやタオル地の質感を再現した着物風のコートや、シルエットを変えることができるユニークな仕掛けがとりわけ目を引いた。

すべてのルックには、決してブレることのないブルーノの姿勢が映し出されているようだ。

Text: Tiziana Cardini Adaptation: Motoko Fujita

From VOGUE.COM

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