主役はロンドンの若手デザイナーたち。エマ・コリンが着こなす、ファッション最前線のレッドカーペットルック

スキャパレリ（SCHIAPARELLI）のアートのようなバイカージャケット、ガーターベルトが品よく映えるサンローラン（SAINT LAURENT）のミニドレス、ミュウミュウ（MIU MIU）のショーツなど、人気ブランドのアイテムがこれほどまで揃うルックのレパートリーを持つ人は、今現在、エマ・コリンしかいないだろう。かといって、名だたるブランドの服だけを纏うわけではない。コリンがスタイリストのハリー・ランバートとともに作り上げるルックは、新進気鋭のデザイナーによるピースを頻繁に取り入れ、若き才能にスポットライトを当てている。

「従来のやり方に、あまり囚われたくないんです」と、UK版『VOGUE』の2023年3月号で語ったランバートのスタイリングアプローチは、レッドカーペットルックの概念を広げ、見る者を笑顔にする。ジェイ ダブリュー アンダーソン（JW ANDERSON）のビニール袋に入った金魚を模したミニドレスを選ぶなどする秀逸なセンスの持ち主で、コリンも彼のアンテナの高さにはいつも驚かされるという。「大手メゾンだけでなく、セントラル セント マーチンズ（CSM）を卒業したばかりの若手デザイナーの作品も取り入れたりします。一番斬新なものは、こういう新たな才能から生まれるんだと思います」

ランバートの感度の高さは、今月から始まったコリン出演作品『デッドプール＆ウルヴァリン』のプレスツアールックの数々にも感じられる。ファッションシーンではおなじみとなりつつある16アーリントン（16ARLINGTON）やディラーラ フィンディコグルー（DILARA FINDIKOGLU）といったロンドン発のブランド以外にも、セントラル セント マーチンズを卒業して間もないデザイナーの作品を採用するなど、いいと思ったものは分け隔てなく用いる。

その好例が、今週初めにコリンが『グッド・モーニング・アメリカ』出演時に披露したルックだ。この日コリンが着ていたのは、フレディ・クームズとマット・エンプリンガムからなるCSM出身のデザインデュオが手がけたバブルヘムドレス。さまざまな素材を組み合わせるユーモラスなデザインで、在学中からすでにその名を馳せていた2人による、インパクト大のピースだ。ちなみにランバートは今年5月にも、クームズとエンプリンガムが制作したアシンメトリードレスをレッドカーペットルックとして採用。纏っていたのはシエナ・ミラーで、デュオの巧みなプロポーション遊びを世間にアピールした。

そして『グッド・モーニング・アメリカ』出演からわずか数日後、今度は『ジミー・キンメル・ライブ！』でコリンはまたしても、ニューフェイスのデザイナーによるルックを着用した。レッドとブラックのコントラストが印象的なシルバーのビーズドレスは、ジョシュア・エウジー（JOSHUA EWUSIE）がCSMの修了コレクション「You Don't Fear the Cold」の一部として、今年2月に発表したばかりもの。同コレクションで2024年BFCシャネルスカラシップを獲得したエウジーは、コリンが纏ったブランドの中でも、一番の若手といえるだろう。

「作品を面白くするのは、周りからのアドバイスを常に聞き入れることではありません。自分の直感を信じ、自分のやり方で制作することで、面白いものが生まれるのです」とUK版『VOGUE』に語ったエウジー。その考え方は、コリンとランバートの独創的なレッドカーペットルックへのアプローチを、見事に言い表している。

Text: Laura Hawkins Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.CO.UK