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衣類ケアのプロが推奨。大切な1着を長持ちさせる、服のお手入れ&保管方法

  • 2024.7.27
Women clothes on racks in a boutique store
Women clothes on racks in a boutique storeWomen clothes on racks in a boutique store

初めてヴィンテージの服をダメにしてしまったときのことは忘れられない。3Dフラワーの装飾が施された1950年代もののブラウスを、近所のごく普通のクリーニング店に持ち込んだ。そして預けたブラウスは変わり果てた姿で戻ってきた。シフォンのオーバーレイはズタズタに、爛々と咲いていたシルクの花はくしゃくしゃになって、悲しげに萎れていた。まあ、言ってしまえば自分のせいだ。考えればわかることなのに、とても古くてデリケートな服であること、細心の注意を払って扱われるべきだということをクリーニング店にちゃんと伝えなかった。そもそもドライクリーニング不可の服だったのだ。

ファッションは儚い。美術館や博物館が所有する古い収蔵品の中で、最も取り扱いに注意が払われているのは、ファッションとテキスタイルの品々だ。油絵などは常設展示されるのに対し、衣服の展示は半年間に限定されている。もちろん、美術館に収蔵されていないヴィンテージアイテムは大切に着られるためにあるが、それなりのケアが必要だ。

そこで、ニューヨークの衣類保管サービス「Garde Robe」の知恵を借りた。個人や機関の希少なコレクションを預かっている同社は、厳重なセキュリティのもと、ヴィンテージを含む衣類を数多く保管、メンテナンス、そして管理する。クライアントは政治家、ハリウッドの大物セレブ、資産家、デザイナーといった錚々たる面々で、料金も超がつくほど高額だ。そんな服のプロを束ねる共同設立者のダグ・グリーンバーグに、洋服やアクセサリーのケアと保管のいろはを聞いた。

1. 衣類カバーをかけて吊るす

「吊るす服はすべて、通気性のいい衣類カバーをかけて保管してください。モスリンやポリプロピレン(PP繊維で作られた不織布)のものは保護力があり、ほとんどの場合、洗濯できるので長持ちします。また、クリーニング店で被せられたビニールカバーは衣類を傷める可能性があるので、家に持ち帰ったらすぐに外してください。繰り返し使えるカバーを持参すれば、安価なビニール製のものを使うことなく、プラスチックごみの削減にもつながるのでなおいいです」

2. ハンガーはアイテムごとに種類を変える

ニットといった伸縮性のある生地、バイアスカットが入ったアイテム、装飾の多い厚手の衣服などは歪んでしまう可能性があるので、絶対に吊るさないこと。すべての服に同じ種類のハンガーを使うのも禁物です。見栄えはよくないかもしれませんが、服にはそれぞれベストなハンガーがあるので、常に適切なハンガーを選ぶようにしましょう。例えば、重めのコートには肩幅の広いハンガー、スラックスにはクリップ付きのボトムハンガー、デリケートなアイテムにはクッション性のあるパッド入りハンガーなど。ワイヤーハンガーは論外です!迷ったときは、吊るさずに平置きで収納してください」

3. 無酸性ティッシュペーパーを活用する

「高価なアイテムをクローゼットに保管するときに欠かせないのが、無酸性ティッシュペーパー(薄葉紙)です。シワをなくしたり、ショルダー部分や袖やバッグの形を保つために役立つだけでなく、クローゼットや収納ボックスの中の仕切りとしても使えます。服と服の間、特に装飾やビーズのついたものの間に挟むと、ほかのアイテムに引っかかる心配がありませんし、レザー、スエード、デニムの色移りも防げます」

4. クリーニング店は溶剤で選ぶ

「クチュールレベルの衣類ケアに精通しているプロはほとんどいません。なので、一般的なクリーニング店では、高価でデリケートなプレタポルテやクチュールを扱うことは到底できないのです。一流のドライクリーニング業者は、手作業で多くのアイテムをクリーニングし、生地によって溶剤や機械を使い分けています。逆に巷にあるクリーニング店の大半は、ひとつの溶剤しか使用しておらず、それが必ずしも持ち込んだ服に適しているとは限りません。『環境に優しい』と謳われている溶剤もありますが、ものによってはひどい汚れを落とすのにはあまり向いていないです。

クリーニング店に大切な衣類を預ける前に、できれば溶剤や工程について尋ねてみてください。溶剤は選べるのか?手作業でクリーニングしているのか?皮革製品のクリーニングは自社で行っているのか、それとも外部に委託しているのか?など。住んでいる地域によっては、クチュールピースも請け負える宅配クリーニングサービスを利用した方が安心かもしれません」

5. 繊細な生地のシワは衣類スチーマーで伸ばす

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「熱が強いアイロンは、コットンのように高温に耐えられる丈夫な生地のシワ伸ばしには向いていますが、より繊細なものはスチームを噴射してシワを取るのが効果的です。ただし、シルク、ベルベット、レザー、スエード、メタリックの装飾品が施されたものは、アイロンもスチーマーもダメージの原因になります。もし、どうしてもデリケートな衣服のシワをスチームで伸ばさなければいけない場合は、スチーマーと服の間にモスリンなどの当て布を挟むことで、生地へのダメージを抑えることができます。でも、基本的にはこれらのアイテムはプロに任せるのが賢明です。知識が豊富な高級クリーニング店では、毎回クリーニング前にボタンや装飾品を取り外して、後から付け直すといった配慮が行き届いているので、自ずと料金もかなり高くなるのです」

6. 硬くなったファスナーは蜜蝋バーで滑りをよくする

プラスチック製のファスナーは1960年代後半に普及し始めたので、服についているジッパーが金属製のものであれば、1965年以前のヴィンテージピースであると考えていい。金属製のファスナーの方が頑丈で、経年劣化によるゆがみが少ないが、引っかかることがある。そういったときは蜜蝋を塗ると、再びスムーズに開閉するようになるのだとか。

7. バッグは“バッグピロー”で型崩れを防止する

丸めた紙をバッグの中に入れるのも型崩れ防止にはなるが、よりフィット感のある“バッグピロー”を使えば、ひとつのバッグに詰め物をいくつも入れずに済む。さまざまなサイズで展開されていて、紙よりもずっと取り出しやすいというメリットもある。

8. 脇汗パッドで服を汗ジミから守る

落ちにくい汗ジミや黄ばみから衣類を守るのにおすすめなのが、脇汗パッドやインナーだ。気になる脇部分の汗を吸収してくれて、服そのものに染みるのを防いでくれる。

9. レッドシダーブロックで防虫対策をとる

すべての虫に効果があるわけではないが、「天然の防虫剤」といわれているレッドシダーをクローゼットや衣装ケースなどに数個入れておくと、害虫の侵入を防いでくれるという。香りが弱くなったときが替えどきだが、やすりで軽く磨けば効果が復活するのだそう。

10. 靴の形はシューキーパーで維持する

メンズの革靴はシューキーパーを入れて保管すると、シワや型崩れを防ぐことができる。ウィメンズのシューズはスタイルや素材のバラエティがより富んでいるため、ぴったり合うシューキーパーが見つかりにくいが、ディッシュペーパーなどで代用するのもの手だ。

Text: Lilah Ramzi Adaptation: Anzu Kawano

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