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松本潤さん「演出家の世界観を具現化する、媒介者になりたい」/舞台『正三角関係』インタビュー

  • 2024.7.27

「まっさらの状態」で作品を観てほしい

昨年の大河ドラマ『どうする家康』で主演を務めた松本潤さんが次に挑むのは、野田秀樹さん率いるNODA・MAPの最新作『正三角関係』。約20年前からプライベートでは野田秀樹さんと親交があるという松本さんですが、NODA・MAPへの参加は初めてです。

「野田さんから『久々に飯でも食わない?』と連絡をもらって。かくかくしかじか、こういうことを考えてるんだけど……と舞台の話を聞いて、『めっちゃ面白そうですね、ぜひやりたいです』と即答しました。ただ、東京で2か月ぐらい公演をして終わりかな?と思っていたけど、北九州や大阪もあって、最後はロンドン。それはぜんぜん想像してなかった(笑)。これだけ長い公演は楽しみでもあり、怖くもありますね。ケガやアクシデントのないよう、しっかり準備しないと」

これまで、劇場に足を運んだり、戯曲を読んだり……と野田作品に触れてきたなかで感じた印象は?

「戯曲を読んだときと、舞台を観たときの印象は全然違うんです。もちろん読み物としても素晴らしいけど、生身の人間が台詞を発して、動いて表現することで完成する部分はすごく大きい。僕は2006年に『白夜の女騎士』という、野田さんが夢の遊眠社時代に書いた戯曲を蜷川幸雄さんが演出した舞台に出たことがあるけど、そのときも『これはどういう意味なんだろう?』と最後までわからない言葉も正直ありましたね。でも頭で理解できなくても、言葉が押し寄せてくるスピードやテンポに圧倒される。言葉の響きだけでも感動できるのが不思議だな、と思いながらやっていました」

作品のベースとなっているのは、ドストエフスキーの代表作「カラマーゾフの兄弟」。とはいえ「カラマーゾフを読んだからといって、この作品が読み解きやすくなるわけではない」と松本さん。

「カラマーゾフをそのままやるわけではないので、読むかどうかはお好きなように、というところだと思います。ただ、あらすじだけ読んで来るのはやめたほうがいい。野田さんも言っていましたが、だったらまっさらの状態で観た方がいいと思います。そこは強く書いておいてください(笑)」

大切にしたいのは、演出家の世界観やメッセージ

松本さんにとっては、13年ぶりとなる舞台出演。多くの作品でキャリアを重ねた松本さんも、新鮮な気持ちで舞台の上に立つことになりそうです。

「13年ぶりなんて、もう初めてと同じですよ(笑)。感覚的な部分や身体的な表現方法はしっかり取り戻さないといけないとは思っています。ワークショップでも、実際に動いてみると『こうだったな』『こういうところは気をつけなきゃな』と発見があるんですよね。特に大河ドラマで家康公を演じていたことで、声の使い方が映像向きになっていて。なかなか癖が抜けないので、そこは本番までにクリアしなきゃいけない課題です」

久々の舞台だからこそ表現したいもの、新たにつかみたいものはあるのでしょうか。

「僕自身が表現したい、というものはなくて、それよりも野田秀樹さんが描きたいものをどう表現できるか。自分の肉体を渡して、カンパニーの一員となることで、野田さんの世界観の媒介者になれればいいと思っています。まわりは芸達者な皆さんだし、僕より圧倒的に経験も多いでしょうから。たくさん勉強したいし、僕が足を引っ張らないようにしないと」

大切にしたいのは、自身の俳優としての欲よりも、演出家の世界観。作家のメッセージを具現化し、観客へ届けることを目指して、作品に臨みたいと松本さんは話します。

「そうじゃないと、野田さんの作品に出る理由がない。野田さんが何を望んでいるのかを汲み取り、見せたいものに近づくことに意味があるだろうと思っています」

#松本さんに最近のこと、聞きました! Q&A

━━Q.13年前に出演した舞台『あゝ、荒野』で感じたことは?

寺山修司さん原作の『あゝ、荒野』も、言葉が印象的な作品でしたね。僕は物語の舞台となった昭和の新宿は知らないけど、撮影や取材でゴールデン街へ行って、「あの時代はこうだったんだろうな……」と思いを馳せたりして。公演中は、舞台ならではの時間軸というか、上演時間の中で旅をするような感情の波があって。今回の作品ではどんなことを感じられるんだろう?と楽しみにしています。

━━Q.松本さんから見たNODA・MAPの魅力は?

アンサンブルの皆さんを含めたチーム感やクオリティの高さ。演出家の意図を汲み取るのも早いし、表現の方向性がぶれない。そして、「野田さんはこういうものを求めているんじゃなかろうか」と作ってみると、野田さんが全然違う方向にぶっ壊すという(笑)。でもその関係性が素敵だし、新しいアプローチを探るために、あえて野田さんもそうしているんだと思います。

━━Q.ロンドン公演も含めた長期公演になりますが、乗り切るためのルーティンは?

食事、ストレッチ、スタンバイ……と、本番前の過ごし方は確実にルーティン化すると思います。舞台って不思議なもので、公演中は舞台以外のことをあまりやりたくないんですよね。公演自体は2〜3時間だけど、その3時間のためだけに一日を生きるというか。ただ、これだけ長いなら、さすがにほかのこともやらないとね。

舞台『正三角関係』

劇作家・演出家である野田秀樹さんが主宰するNODA・MAPの新作公演。19 世紀ロシア文学を代表するドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を入り口に、「日本のとある場所のとある時代の花火師の家族」である唐松族の兄弟の物語が描かれる。松本潤さんの役どころは花火師の長男。物理学者の次男を永山瑛太さん、聖職者の三男を長澤まさみさんが演じる。全公演にて当日券販売あり。

東京公演:7月11日〜8月25日(東京芸術劇場)
北九州公演:9月5日〜11日(J:COM北九州芸術劇場)
大阪公演:9月19日〜10月10日(SkyシアターMBS)《9月1日(日)正午チケット一般発売》
ロンドン公演:10月31日〜11月1日(サドラーズ・ウェルズ劇場)

松本潤さん Profile

1983年、東京都生まれ。1999年、嵐のメンバーとしてCDデビュー。嵐のコンサート演出なども担い、プロデューサーとしても才能を発揮する。2023年、『どうする家康』でNHK大河ドラマ初出演にして初主演を果たす。主な出演作に、ドラマ「花より男子」シリーズ、「99.9-刑事専門弁護士」シリーズ、『となりのチカラ』、映画『ナラタージュ』『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』など。

[衣装クレジット]ジャケット¥59,400、パンツ¥29,700/ともにmando(mando)、シャツ¥25,300/LAD MUSICIAN(LAD MUSICIAN HARAJUKU)

photograph:Akiko Sameshima styling:Tatsuhiko Marumoto hair & make-up:Yoshinori Takeuchi text:Hanae Kudo

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