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「オリンピックが終わったらギャルになりたい!」──柔道日本代表・阿部詩の素顔

  • 2024.7.26

東京2020オリンピックで金メダルを獲得した柔道日本代表の阿部詩。決勝でフランス代表のアマンディーヌ・ブシャールを相手に延長の末一本勝ちし、柔道女子52㎏級で日本初の快挙を成し遂げた。そして、兄の一二三も男子66㎏級で優勝し、二人で金メダルを掲げた光景は今も多くの人の記憶に残っていることだろう。来るパリ2024オリンピック。迷いなく「兄と二人で金メダルをとる」の言葉を口にする世界王者の瞳からは、強さを更新し続けるしなやかなたくましさが漂う。

──パリオリンピックへの出場が内定したとき、どんなお気持ちでしたか?

東京オリンピックが終わってからは、パリで二連覇したいと思い続けていたので、一安心した気持ちが大きかったです。そして内定したことによって目標がより現実的になり、改めて覚悟が固まりました。

──金メダリストという称号を持つ現在、前回大会と比べて今の心身の状態はどう変化していますか?

精神的な部分は、東京オリンピックを乗り越えたことでさらに強くなったのを実感しています。また、当時は怪我とともに試合に挑んでいたのですが、そのあと手術を受け治療したことで、動きに制限がなくなり今まで以上に思うように動けているのを感じます。なので身体的な部分での変化は大きく、もっと強くなっているのを実感しています。

──自分自身が分析する強さとは?

絶対に負けたくないという気持ちの強さ。純粋に柔道で強くなりたいという思いは、誰にも負けません。世界一になった今は、自分との闘いだと思うので難しい部分はありますが、私にとってそれはあまり苦ではありません。現状維持をしようとしたら衰退していくと思うので、常に進化し続けようと思いながらやっています。

心を動かしたアスリートたちの存在

阿部が柔道と出合ったのは5歳のとき。「兄の真似をしたい時期だった」と柔道を始めたときのことを振り返るように、妹は兄を追って柔の道を歩み、切磋琢磨しながら成長してきた。それが比類なき強さの理由の一つだ。2018年にはアゼルバイジャンで行われた世界選手権で兄が二連覇を達成し、妹は初出場で頂点に。そして21年の東京オリンピックのあとも快進撃は続き、22年と23年の世界選手権で兄妹揃っての優勝を果たし、世界最強の地位を兄とともに築き上げてきた。

──ご自身にとって、お兄さんはどのような存在ですか?

常に前を走り、背中を見せてくれている存在です。私が柔道を始めたのも、兄が通っている柔道教室が楽しそうで「仲間に入りたい」と思ったから。その当時は、ここまで続けるとも、強くなりたいとも全く思っていませんでしたが。

──柔道との向き合い方が変わったのは?

小学校高学年ごろに、負けるのが悔しくて勝ちたいと思い始め、全然好きじゃなかった練習をするようになりました。そして、兄が中学の全国大会で日本一になり、私も日本一になりたいという目標ができ、向上心に火が付いた瞬間でした。兄の影響は大きく、兄がいなかったら今の私はいません。心から尊敬しています。

──お兄さん以外にロールモデルとしている選手はいますか?

こういうアスリートになりたいと思ったのは、レスリングの吉田沙保里さんです。ずっと勝ち続けるという偉業を成し遂げたことだけでなく、最後の2016年リオオリンピックは負けても大きな感動を与えていて。この人が生きてきた道がいかにすごいかを試合を通して感じました。

──吉田さんと個人的にお会いしたことはあるのでしょうか?

あまりないのですが、私が16歳のときにレスリングと柔道で一緒に合宿をすることがあり、そのとき吉田さんと組んでレスリングをしました。柔道と似ているからもっと簡単にできるだろうと思ったのですが、全く体を掴めなくて、タックルは軽トラに当たったような感覚。レスリングの難しさと吉田さんのすごさを体感しました。

自分のスタイルを貫く23歳の本音

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「オリンピックで兄妹二連覇」という自らの目標と周囲の大きな期待を背負って挑むパリ。本人たちにしかわかり得ない幾多の試練を乗り越えてきた経験から滲み出る迫力があり、前人未到の境地を切り拓く姿は私たちを惹きつけてやまない。そんな王者の素直な本音と意外な一面もまた、魅力を放つ。

──座右の銘は?

「千里の道も一歩から」。何事も初めの一歩から始まり、一歩ずつ進んでいけば、地道に自分が目指しているゴールに近づけると思っています。この言葉と出合ったのは、確か高校への送り迎えをしてもらっていたときの車の中。結構古い曲なのですが、ラジオから水前寺清子さんの「三百六十五歩のマーチ」が流れ、その歌の中にこの言葉がありました。2018年に初めて出場する世界選手権を前に、どう挑んだらいいのかわからなくなっていたときにこの曲を聴いて、人生は本当にこの通りだなと思い、それから座右の銘になりました。

──試合前はどんな曲を聴きますか?

キアラ・セトルの「This Is Me」という曲が好きです。どうしても、試合の前の期間はいろんなことを試したり変化をつけたりしようと思いがちなのですが、この曲を聴くと「いつも通りの自分でいいんだ」ということを思い起こさせてくれます。

──自分を信じることの難しさと対峙したときは、どのように対処していますか?

いろんな不安が押し寄せてきて、自分を信じられなくなるときもあり葛藤しています。そういうときは無理に切り替えるのではなく、寝たら忘れるのでとりあえず寝ることにしています(笑)。試合本番を迎えると、そういうことは考えないから問題ありません。

──ラッキーアイテムなどはありますか?

ドリンクボトル。長年使っていたものを突然なくしてしまい、去年5月の世界選手権のときに新調しました。その大会で勝ったので、縁起がいいアイテムとして持ち歩いています。あとは、試合の日だけにはくバナナ柄の靴下は、2016年から今も愛用しています。

──最後に、パリオリンピックを終えた後にしたいことはありますか?

パリ大会が終わったら、ギャルになりたいです!(笑)。というのも、個性を大事にし、周りの目を気にせずに自分を強く持っている女性に憧れます。なので、めっちゃネイルをして、髪の毛をハイトーンにして、今までできなかったことをすべてしてみたい。柔道家としての強さは一旦置いておいて、自分磨きに励み、私らしくやり通したいです。

Profile

阿部詩(Uta Abe)

2000年7月、兵庫県出身。パーク24所属。柔道女子52㎏級日本代表。5歳から柔道を始め、2018年の世界選手権で兄・一二三とともに兄妹同時優勝。東京オリンピックでもまた柔道史上初の兄妹同時金メダル獲得を果たした。袖釣込腰や内股などの投げ技を得意とし、足技や寝技にも磨きをかける。

問い合わせ先/

アディダスお客様窓口 0570-033-033

Photos: Kizen Styling: Ami Akishima Hair: TAKAYUKi Nukui at home agency Makeup: Shino Ariizumi at Tron Text: Mina Oba Editor: Sakura Karugane

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