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【佐々木蔵之介さん】インタビュー「仕事に満点は付けられない。だからこそ次に繋がる」

  • 2024.7.25

いまや俳優としてゆるぎない地位を確立した佐々木蔵之介さん。映像作品での活躍はもちろん、ホームグラウンドである舞台にも定期的に出演しています。この夏に出演する、中世ヨーロッパを舞台にした『破門フェデリコ~くたばれ!十字軍~』の見どころ、大人世代の仕事との向き合い方のヒントを尋ねました。

フェデリコは現代を生きる私たちにも響く、“覚悟のあるリーダー”

ドラマや映画を中心に活躍する佐々木蔵之介さんですが、その原点と言えるのは、学生時代にのめり込んだ舞台。2005年には演劇ユニット「Team申」を立ち上げ、「自分が面白いと思えるもの」「演劇ならではの見せ方ができるもの」を軸に、みずから作品をプロデュースしてきました。

「Team申は、狭い空間を使って、手作りで作品を作ってみたくて始めた演劇ユニット。ただ単にキャストとして出るだけでなく、戯曲やキャスティング、演出……といろんなことに関わります。そのぶん、仕事量は増えますけど、そういう機会が持てるのはありがたいですね」

8月からはじまる舞台『破門フェデリコ~くたばれ!十字軍~』では、2021年のTeam申の公演『君子無朋(くんしにともなし)』の脚本を手がけた阿部修英さんと、劇作家で演出家の東憲司さんが再びコラボレーション。中世ヨーロッパを舞台に、敵である異教の君主と友情を育むという画期的な方法でキリスト教とイスラム教の戦争を停戦し、平和を築いた神聖ローマ帝国皇帝・フェデリコの生涯を描きます。

「僕は今まで、わりと王様や殿様、皇帝を演じてきたほうだと思うんですよ(笑)。『リチャード三世』も『マクベス』も舞台でやりました。でも、今まで演じてきた彼らとフェデリコは違うんですよね。みんな領土が欲しい、権力が欲しい、財が欲しい……という野望があったけど、フェデリコは既に土地も権力も金もある。そういう人間が世界を変えて、平和を掴み取ろうとする。今までにはない、覚悟のあるリーダーだと思っています」

稽古場では、率先してNGを出したい

今作の企画は、あるドキュメンタリー番組を通じて、フェデリコの存在を知ったことが出発点に。

「8 か国語を話し、カステル・デル・モンテという8 角形の謎の城を建て、マッドサイエンティストばりの実験をする……。そんな破格の天才が、100年以上続いていた十字軍を止めたと聞いて。どんな人なんだ?-と興味を持ちました。日本ではそれほど知られていないけど、イタリアではドラマ化もされていて、カステル・デル・モンテは1ユーロコインの裏側にも描かれているんです。そういうちょっとぶっ飛んだ、規格外な皇帝を作品にするのは面白いな、と思いました」

フェデリコに反旗を翻す息子・ハインリヒを演じるのはKAT-TUNの上田竜也さん。フェデリコと対立するローマ教皇グレゴリウスを六角精児さんが演じます。

「今は戯曲を磨いたり、そぎ落としたり……といった作業をしているのですが、この方たちならやってくれる、ねじ伏せてくれる、と思えるくらい信頼できる俳優たちだと思っています。中でも、最高の権力を持ったキリスト教のトップが六角さんというのが面白いですよね。六角さんが偉そうにすればするほど、笑えるっていう(笑)」

今は戯曲をブラッシュアップしつつ、稽古に向けて準備を進めたいと佐々木さん。

「現場で考えることは多々あるんですけど、その前にある程度はセリフを入れておきたい。入れるというか、腹に落としていく作業ですね。稽古場は無駄な緊張をなくして、みんなが失敗を恐れずにチャレンジできる場にしたい。僕は率先してNGを出したり、ダメ出しをもらおうと思ってます(笑)。もちろん適度な緊張はあっていいんだけど、ある程度余裕がないと、面白いものは生まれにくいので」

若い人とも、なるべくイーブンに付き合いたい

歴史が題材ではありますが、あくまでも本作は「エンタメ」。構えず気楽に観に来て欲しいと話します。

「十字軍のエルサレム奪還の話ですから、作る側としても現在に繋がっているのを肌で感じます。ただ、難しい内容とは思わないでほしいし、歴史を勉強してくる必要もありません。タイトルに『くたばれ!』とあるのは、作家が『がんばれ!ベアーズ』が好きと話していて、僕も好きなので入れようということになって。これでちょっと柔らかくしているつもりなんです(笑)」

『大人のおしゃれ手帖』読者と同世代でもある佐々木さんですが、キャリアを重ね、ベテランと呼ばれる立場になっても、仕事に対する新鮮さを失わない秘訣はあるのでしょうか。

「僕の場合は、作品ごとに新しい人との出会いがあるので。やっぱり若い人の才能は面白いし、アドバイスを求められることも多いけど、こちらが『教えて』と頼ってもいいと思うんです。世代が違ってもなるべくイーブンで付き合えたらいいですよね」

俳優の仕事は「満点が取れない」ことも、モチベーションを保つ理由に。

「100点は取れないから、自分の仕事に満足はできない。ただ、年を重ねると自然と諦められるようになるんですよね。『ここがあかんかったな』というものがあっても諦めて、次の宿題にする。頑張りすぎると折れてしまうので、無理に全部やろうとしない。どうしたって体力も記憶力も落ちてできなくなってくる。でもそのぶん、経験も技術も積み重ねてきたので、別ルートで表現する。そうやって、折り合いをつけていくしかないと思っています」

PROFILE:
ささき・くらのすけ 1968年生まれ、京都府出身。1990年、大学在学中に劇団「惑星ピスタチオ」の旗揚げに参加し、看板俳優として全作品に出演。2000年、連続テレビ小説「オードリー」で注目を集め、以降、映像から舞台まで幅広く活躍する。近年の出演作にドラマ「マイホームヒーロー」「グレイトギフト」「Destiny」、映画『ゴジラ-1.0』など。現在、大河ドラマ「光る君へ」に出演中。
佐々木蔵之介ファンサイト「TRANSIT」 https://sasaki-kuranosuke.com

佐々木蔵之介さん主演舞台 PARCO PRODUCE 2024『破門フェデリコ~くたばれ!十字軍~』

物語の舞台はキリスト教に支配されていた中世ヨーロッパ。当時の最高権力者のローマ教皇から最大の罪である「破門」を三度言い渡されながら、たったひとりで時代の門を破り、次の時代をこじ開けた皇帝フェデリコの真実とは?

作:阿部修英 演出:東憲司
出演:佐々木蔵之介、上田竜也、那須凜、栗原英雄、田中穂先、石原由宇、六角精児 ほか
日程:2024年8月6日(火)〜9月1日(日)東京・PARCO劇場
9月7日(土)・8日(日)愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
9月11日(水)〜16日(月・祝)大阪・森ノ宮ピロティホール
9月21日(土)・22日(日)福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール
https://stage.parco.jp/program/federico

撮影/白井裕介 スタイリスト/勝見宜人(Koa Hole inc.) ヘアメイク/晋一朗 取材・文/工藤花衣
佐々木さん衣装:ジャケット¥46,200、シャツ¥30,800、パンツ¥36,300/すべてコンフェクト(コンフェクト 表参道店 03-6438-0717)
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この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

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