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【ユネスコ無形文化遺産】3つの美意識から見る「日本の食文化」とは|連載・日本人の美意識<5>

  • 2024.7.25

連載「日本人の美意識」では、さまざまな角度から改めて日本について知り、考えるきっかけをお届けします。最終回となる第五回は、日本の伝統的な感性から見る「日本の食文化」を深掘り。内閣府の調査による「日本の伝統的な感性(美意識)ランキング」を見ると、上位から「他者を尊重し思いやりの気持ちを持つ」「伝統的な文化や風習を尊重し、次世代に引き継いでいく」「家族やコミュニティの絆を大切にし、調和と協調を重視する」と続いています。これらを日本の食文化の面から見てみましょう。

 

 

 

思いやりが表れた「食事のマナー」

第1位の「他者を尊重し思いやりの気持ちを持つ」は、食事のマナーにも表れています。

たとえば「いただきます」のあいさつ。物心がついた頃から何度繰り返したか分からない言葉です。これからいただく命や、それらを育てた農家の人、調理に携わった人など、食事にたどり着くまでの全てを尊重し、感謝する意味を持つと言われています。

また、音を立てない、肘をつかない、脚を組まない、食べ物を残さない、お寿司屋さんに行く時は香水をつけないなど、まわりの人に不快感を与えないための食のマナーもたくさんありますね。

2015年の国の調査によると、食事のマナーや作法について少しでも気をつけている人が87.7%、また、気をつけることが少しでも重要だと思う人が94.9%にも及びました。

ユネスコ無形文化遺産にも登録された「伝統的な食文化」

第2位の「伝統的な文化や風習を尊重し、次世代に引き継いでいく」は、日本の食文化においても同じことが言えます。

2011年の国の調査によると、「日本食文化は世界に誇れるものだと思う」と回答した人は99.2%、「日本食文化を保護し、価値を高め、子どもや孫の世代にも伝えることは重要だと思う」とする人は98.4%という結果が出ています。

実際に日本では、地域ごとに特色のある伝統的な数々の料理が受け継がれていますよね。たとえば、沖縄のゴーヤーチャンプルー、広島の牡蠣めし、京都の漬物、山梨のほうとう、北海道の三平汁など、多種多様な料理が地域を越えて「ご当地グルメ」として広く知れ渡り、愛されています。南北に長く、地域ごとに収穫できる食材が異なることが、多彩な食文化を生み出しました。

伝統食は、家庭で親から子へ伝えられるだけではありません。地域の行事や学校給食には土地の食文化が色濃く出ており、郷土料理の文化を残すのに役立っているものだと考えられます。

「和食」のユネスコ無形文化遺産登録(2013年)は、このように世代を超えて国民が積極的に食文化を保護してきたことが評価され、登録に至る理由となったようです。

絆を生み出す「コミュニティでの食事」

第3位は「家族やコミュニティの絆を大切にし、調和と協調を重視する」です。日本では、季節の行事を通じて家族やコミュニティで食卓を囲むシーンがたくさんあります。

たとえば、お正月のおせち料理、ひな祭りのちらし寿司、こどもの日のかしわ餅、土用の丑の日のうなぎ、十五夜のだんご、大みそかの年越しそばなどは、現在でも時期が来ればスーパーマーケットに食材が並び、生活に取り入れている人も多いのではないでしょうか。今も昔もこれらの食のイベントは、家族や地域住民の絆を深められる大切な機会のひとつとして受け継がれています。

 

【参考①】

農林水産省

・にっぽん伝統食図鑑

・子どもの食育 日本各地の郷土料理

・aff(あふ)2014年2月号 大切に伝えたい。わたしたちの「和食」

【参考②】

総務省行政評価局「食育の推進に関するアンケート調査」結果報告書(国民編)

調査対象:全国の20 歳以上の国民を住民基本台帳から無作為に抽出した4,000人

回収数及び回収率:2,191 人(54.8%)

調査期間:平成26年12月2日~12月25日

【参考③】

文化庁 令和2年度「日本の食文化等実態調査」報告書

【参考④】

国土交通省 国土交通白書2019

 

 

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