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【森山未來さんインタビュー】藤竜也さんと魅せる“居合”の演技

  • 2024.7.25

Moriyama Mirai

森山 未來

出典:シティリビングWeb

認知症の父役・藤竜也さんとの共演を、古武道の“居合(いあい)”に例え、互いに構えるだけで対峙できたと振り返る森山未來さん。「いい映画の現場には、居合のような空気感があるんです。リハーサルで作り込まず、その瞬間に火花を散らす…藤さんとの共演はまさにそれだった気がします。藤さんとは、疎遠という役柄もあって、必要以上にコミュニケーションを図ることはなかったけれど、撮影が始まると、スッと対峙できました」

はじめて脚本を読んだとき、森山さん演じる卓の心情がつかみにくかったとか。

「卓は俳優業です。仕事や結婚で生活も確立していた中、何十年も会っていなかった認知症の父の面倒を見ることになる…。特殊な展開をどう演じるか悩みました。まずは父の状況を把握しなければという状況下でも、困惑せず淡々とこなしている卓を、最初は理解しにくかったですね」と話す。

そこで役作りの手がかりが。この展開が近浦啓監督自身の体験だったと知ったそう。

「近浦さんと対話を繰り返す中で、実体験がかなり入っていることが分かったんです。近浦さんがどういう環境や心境で今を生きているのかを知ることこそが、卓の人格を知るサポートになりました」

このように同作は脚本・編集も監督がすべて手掛けるなど、インディペンデント色が強い作品。出演オファーを受けたのは、監督の映画作りの姿勢にもあった。

「脚本はもちろんですが、インディペンデント映画でありながらも、収益やビジネスの側面はしっかり成立させる“本当の意味でのインディペンデント映画を目指す”という監督の姿勢に共感しました」と話す。

「あとは全編35ミリフィルムで撮っているのですが、デジタルのように何度も撮り直しができないので、スタッフ全員が“一コマも逃さない”という現場の緊張感がありましたね。心地いい緊張感に包まれていると、さっきの“居合”につながる。張りのある現場には、張りのある作品が生まれると思っていて。面白い作品になっていると思います」

森山未來さんの“働く”インフラ

キャリアを重ねた今、仕事で意識していることは?

この10年で自分でも作品を作るようになり、演じる側からオーガナイズする側に回ったことで、いい作品や企画を生み出すために、周囲とのコミュニケーションは大切にしています。プロジェクトが大きくなると、その分コミュニケーションも煩雑になってくるので、みんなが本当の意味で平等なコレクティブ(集団的な)とは?合議制とは?ということを常に模索しています。

また一緒に仕事をしたいと思う素敵な人って?

本作「大いなる不在」でご一緒した近浦啓監督もその一人です。映画の構造、知識、経験を持ちながら、ハングリー精神や熱量をもって仕事をしている人です。でも、仕事は一人で抱え込まないほうがいいですね。彼も僕もいつも抱え込みがちなんです(笑)。

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映画「大いなる不在」

出典:シティリビングWeb

現在全国公開中

(C)20242023クレイテプス

幼いころに自分と母を捨てた父が警察に捕まった。連絡を受けた卓(森山未來)が、妻の夕希(真木よう子)と久々に九州の父(藤竜也)を訪ねると、父は認知症でまるで別人に…さらに父が再婚した義母は行方不明。父と義母の生活を調べ始めるがー。俳優陣の圧倒的演技が際立つサスペンス・ヒューマン・ドラマ。

PROFILE

1984年生まれ、兵庫県出身。5歳からさまざまなダンスを学び、15歳で舞台「BOYS TIME」で本格的に舞台デビュー。主な出演作に映画「モテキ」「アンダードッグ」、舞台「テ ヅカ TeZukA」など。俳優、ダンサーのほか、監督作としてショートフィルムを手掛けるなど多岐にわたり活躍。2022年から神戸市にあるアーティストのための施設「Artist in Residence KOBE」の運営メンバーでもある

取材・文/岡田尚子(シティリビング編集部)、撮影/渡邉真一、ヘアメイク/須賀元子、スタイリスト/杉山まゆみ

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