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【実話映画】『ロイヤルホテル』旅先のワーホリ、生々しいハラスメントにあったらどうする? 7/26公開!【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

  • 2024.7.24

映画パーソナリティ・映画評論家の伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は、7月26日公開の映画『ロイヤルホテル』。フィンランドの女性旅行客が、旅先のオーストラリアでお金が無くなりパブで働く。しかしそのパブでは男性から、女性からハラスメントを受け、友情が壊れていく。ドキュメンタリー映画をもとに、映画界のハラスメントを描いた『アシスタント』の監督、キティ・グリーンと、主演のジュリア・ガーナ―が再びタッグを組む。


男女平等に大切なのは、女性は意志を持つ人間であること

オーストラリアの鉱山地区という男性コミュニティが根付いている地域で、女性が仕事をすることになったら何が起こるか? キティ・グリーン監督が実在する店のドキュメンタリーを観て実写映画を作ろうと決断したそう。 映画は、力仕事をする男性たちが疲れを取りに集まるパブが舞台。若い女性二人がバーテンダーとなればご想像通りの展開へ。最初はオーストラリアでの旅を楽しむためのワーキングホリデイが、ここでアルバイトを始めた途端、一気にサスペンスへと色合いが変わるのです。

ただし、監督の狙いは、そのハラスメント的状況を嫌悪する女性だけではなく、楽しんでしまう女性もいることも描いている点。確かに人は誰かに自分の存在を喜ばれることに存在意義を感じる生き物。特に異性との関わりでは、自分の性を意識することにもなり、映画では男性社会に放り込まれた女性2人の考え方の違いや、彼女たちに対する周囲の反応も詳細に見せていきます。このように女性にも様々なタイプが居ることを描くことで、「女性」をひとくくりにしてはいけないと伝えているんです。

それを分かりやすくする為に、ジュリア・ガーナー(『アシスタント』2019)演じるハンナは自分が選んだ男性であれば自ら距離を縮めるものの、身体の関係を持つタイミングは自分で決めようという心理が行動から見えてきます。一方のジェシカ・ヘンウィック演じるリブは、その場を楽しむタイプであり、地元から逃げて行き場を失っているよう。しかも男性に対する警戒心も低い。 だからこそ、警戒心を持つ女性と、無防備な女性というコンビが、男性たちとトラブルを巻き起こし、ぶつかってしまうのですが、映画に登場する多くの男性が「女性」を、「メス犬」と喩えていることで、映画のテーマがしっかりと浮き上がって来ます。

実は日本映画でも似たアプローチで、“女性はモノではなく人間である”と伝える作品が近年公開されました。それは女優である松林麗監督による性暴力に声を上げる映画『ブルーイマジン』(2024)です。インタビューで松林監督は自身の作品のラストを暴力的にしようと悩み、結果的に違う選択をしたそうですが、もしそうしていたら本作『ロイヤルホテル』と同じ展開だったのかもしれません。そう考えると余計ラストの解釈が人により違うことに納得しかないのです。

それにしてもカナダから来た女性と親しくなろうと、地元の男性がオーストラリアのアーティスト、カイリー・ミノーグの「ロコ・モーション」(1987)を流して交流を図るシーンは秀逸。この映画、男性が女性を落とす為に頑張る姿も滑稽だよね、と言っているようでした。
——伊藤さとり

☑7月26日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開! 『ロイヤルホテル』

【あらすじ】ハンナ(ジュリア・ガーナー)とリブ(ジェシカ・ヘンウィック)の親友2人。旅行で訪れたオーストラリアでお金に困り、荒れ果てた田舎にある古いパブ「ロイヤルホテル」に滞在し、バーテンダーとしてワーキング・ホリデーをすることに。
単なる接客バイトかと思いきや、彼女たちを待ち受けていたのは、飲んだくれの店長や荒々しい客たちが起こすパワハラやセクハラ、女性差別の連続だった。
楽観的なリブは次第に店に溶け込んでいくが、真面目なハンナは孤立し精神的に追い込まれ、2人の友情は徐々に崩壊していく……。 2023/オーストラリア/91分
監督・脚本:キティ・グリーン『アシスタント』
脚本:オスカー・レディング
撮影:マイケル・レイサム『アシスタント』
出演:ジュリア・ガーナ―『アシスタント』、ジェシカ・へンウィック『マトリックス レザレクションズ』、ヒューゴ・ウィービング『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、トビー・ウォレス『ベイビーティ―ス』 、ハーバート・ノードラム『わたしは最悪。』
配給:アンプラグド
© 2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW

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