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史上初のGSナイター開催の日本クラブユース選手権U-18。落雷中止も指導者たちから支持の声

  • 2024.7.23
史上初のGSナイター開催の日本クラブユース選手権U-18。落雷中止も指導者たちから支持の声
史上初のGSナイター開催の日本クラブユース選手権U-18。落雷中止も指導者たちから支持の声

Text by 高橋アオ

高校生年代のクラブユースチーム日本一を決める第48回日本クラブユース選手権U-18が22日に開幕。熱中症対策のため、同選手権史上初となるグループステージ(GS)の夜間ナイター開催が行われた。

昨年7月27日午前8時46分から開催された同選手権ラウンド16の横浜F・マリノスユース対横浜FCユース戦(会場は群馬県・伊勢崎市華蔵寺公園陸上競技場)では、気温44度を記録する中で試合が行われ、ハーフタイム時は日本サッカー協会(JFA)の熱中症ガイドラインの基準を超えている状況にも関わらず試合が続行された。また、この日群馬県内で気温40度以上を計測した試合は前述した1試合を含めて計6試合あった。この状況を昨年Qolyは批判記事を掲載し、社会的にも当事は問題視された。

今年の同選手権は熱中症対策の観点から群馬、大坂、山口、宮崎と会場を分散し、午後5時に第1試合、午後7時に第2試合とナイター開催を実施。

大会関係者は「去年の大会で気温が朝8時45分キックオフで気温が44度と、とてつもない高温で試合が開催されたことで社会的にも問題になりました。『その中で試合をやることはどうか』が問題に上がりました。

試合をやるとしたら涼しいところ(試合会場)という意見もありましたが、場所がなかなかなかったので、分散開催という方式を取りました。涼しくなる午後5時以降のキックオフをJFAの方も暑熱対策に沿った開催方法をとりました。

準決勝、決勝は昔から(神奈川)三ツ沢球技場や群馬でも夜の開催はありましたけど、予選リーグから夕方開催は初めての試みとなります」とアスリートファーストの視点に立ったナイター開催の経緯をていねいに説明した。

史上初のGSナイター開催の日本クラブユース選手権U-18。落雷中止も指導者たちから支持の声
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昨年7月2日に40歳以上の選手が参加する埼玉県玉県シニアサッカーリーグO-40の公式戦終了後に炎天下の中で42歳男性がサッカー場で倒れ、息を引き取った。JFAはこの事態を重く受け止めて、熱中症対策の周知徹底をより強化している。死者が出る前に徹底的な対策を講じなかったJFAの姿勢に疑問符がつくが、熱中症対策の強化によって各地域連盟などの熱中症対策が進展している。

この日群馬県前橋市・ロード宮城総合運動場で開催された2試合は落雷の影響で、第1試合の大宮アルディージャU18対ファジアーノ岡山U-18戦は前半35分のみの開催とった。第2試合のヴィッセル神戸U-18対川崎フロンターレU-18戦は中止となったが、23日に翌24日午後6時に再試合が行われることが急きょ発表された。

指導者の声、選手の声

GSロード宮城会場第1試合の大宮U18対岡山U-18戦は激しいゲリラ豪雨と落雷のため試合時間を遅らせて午後6時15分、気温25度の中で前半35分のみの開催となった。結果は両者激しい攻防を見せるも0-0のスコアレスドロー決着となった。

史上初のGSナイター開催の日本クラブユース選手権U-18。落雷中止も指導者たちから支持の声
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この日先発したMF菊浪涼生は「比較的に午後は涼しくなってきているので、(例年より)やりやすくなっていますね」と今大会初のGSナイター開催を振り返った。

群馬は夏にゲリラ豪雨が頻発する地域であり、夕方開催は落雷といった新たなリスクによって試合に水を差されてしまった。「高校最後の(クラブユース選手権)大会なので結果を付けたかったんですけど、こういう天気だから仕方がない部分がありますね」と背番号10は悔しそうな表情を浮かべた。

落雷による事故により大きな被害を受けた事故がある。1996年8月に大阪・高槻市内で行われた「高槻ユース・サッカー・サマー・フェスティバル」の試合中に高知・土佐高のサッカー部員が頭部を落雷に打たれて、視力障害や両下肢機能の全廃などの重篤な後遺障害を負った。さらに今年4月3日には宮崎・宮崎市内で開催された試合に訪れていた熊本県立鹿本高サッカー部員18人が落雷により救急搬送される事故が発生した。

史上初のGSナイター開催の日本クラブユース選手権U-18。落雷中止も指導者たちから支持の声
史上初のGSナイター開催の日本クラブユース選手権U-18。落雷中止も指導者たちから支持の声

大宮U18の丹野友輔監督は「暑さは懸念材料だったので、選手が安全に安心してプレーできる環境は夕方になればなるほどいいです。ただ群馬は夏になると、こういう(落雷やゲリラ豪雨の)状況が起こり得ることは想定されていることだと思うので、雷というところも選手の安全を確保しなくてはいけない。選手の安全が第1なのでこういう状況で中断になってしまうのも仕方ないです」と話した。

この時期の前橋市内開催は暑さ対策以外にも落雷の対策も必要不可欠となるが、人命を最優先した同選手権運営の判断は英断だったという声もあった。

気温は下がったが、運営は難しい判断を求められる

GSロード宮城会場第2試合は雷光、雷鳴が激しくなり、試合は中止となった(23日に翌24日午後6時に再試合決定を発表)。大会規定上神戸U-18対川崎U-18は0-0で勝点1を分け合う形となった。気象庁によると試合開催予定だった午後7時の前橋市内の気温は27.2度と試合を開催しやすい温度に落ち着いていた。

川崎U-18の長橋康弘監督は「以前はWBGT(湿球黒球温度、暑さ指数)を見ながらこれ以上(温度が)上がったら休憩を入れるとか、いろんな工夫はしていたんですよ。ただそれを(対策を)上回る暑さだったので、少しでもリスクが高いことは避けていくような形で進めた方がいいです。最近の暑さは対策も取りづらい状況だと思います。できる範囲で対策をしてきたものの、対策も難しい状況になってきたのかなと思いますね。選手は将来ある子たちなので、(ナイター開催は)絶対にいいことだと思います」とナイター開催を評価した。

史上初のGSナイター開催の日本クラブユース選手権U-18。落雷中止も指導者たちから支持の声
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ただこれまで暑さ対策のために早朝開催など同選手権運営は工夫を重ねてきたが、選手の命を預かる指導現場からはナイター開催の実施を求める声も少なくなかった。そのため同選手権運営の暑さ対策に対して懐疑的な視線を送る指導者も少なくなかった。

神戸U-18の安部雄大監督は

「(以前は)朝早い時間とはいえ、気温がかなり高い状況になっていましたから、暑さ対策というところだけ見れば夕方夜の開催が望ましいと思います。

大会を運営されている方々のいろいろな御尽力もあるし、変更できなかった理由もあったと思うので一概には言えないんですけど、やはり選手の安心、安全を考えると、夕方夜の開催が1番望ましい。ただきょうは夕方になると夕立というか、雷雨が心配されるので何を優先するかは難しい判断だと思います。

まだ(大会は)終わっていないため結果なども出ていない部分もあって全部を振り返ることは難しいと思うんですけど、この(大宮U18対岡山U-18の前半)1本(開催)というのも少しどうかなと個人的に思います。

選手ファーストはもちろん選手の命が1番なんですけど、試合会場の使用時間の問題で(試合を)後に(ずらすことが)できないというレベルであれば、もう少し方法を探ってもいいのかなと思いますね」と厳しい視点で大会運営を見ていた。

史上初のGSナイター開催の日本クラブユース選手権U-18。落雷中止も指導者たちから支持の声
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神戸アカデミーの現場をサポートする後藤雄治ヘッドオブコーチングは

「(現職就任前は)U-18のコーチをやっていて、群馬で長いことお世話になっていました。試合が終わってから体調を崩す選手や明らかに疲労を訴える選手たちもいました。その大変さを感じながらやっていましたね。

(大会運営は)いろいろな御苦労されてきた中で、我々のために大会を運営してくださっていたと思うんですけど、今回分散開催になって、試合時間も夕方になったことで子供たちのコンディションを優先していただいたことは本当にありがたいことだと思っています」と大会運営の方針に感謝していた。


これまで暑熱対策が叫ばれていた同選手権はナイター開催の実施によってアスリートの健康、人命をより優先する方針に舵を切ったが、落雷などのアクシデントに苦慮する場面もあった。

それでも同選手権運営の試合会場の分散開催や試合開催時間変更はアスリートファーストの観点でいえば英断だったと思える。今後も2種世代の選手たちが安心、安全の試合環境を運営する同選手権運営の働きを注視していきたい。

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