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【女子旅 台湾】 台北の下町さんぽと、現地のおうち訪問:エッセイスト柳沢小実さんの台湾旅行記 第6話

  • 2024.7.23

台湾の旅について綴ってくれるのは…

柳沢小実さん

エッセイスト。リンネルの創刊当時より、インテリア、丁寧な暮らし方、旅について、多数取材。暮らしや旅についての著書は30冊以上。最新刊『わたしのごほうび時間 大人のゆったり旅』(大和書房)が発売中。

旅先の龍山寺で友人二人と待ち合わせ

ピーター(黃比德)さん
34歳 ブランディングデザイナー
トップ:thecompletesystem
ボトム:FAITH The W & Anchor Bros
バッグ:Kazumi Takigawa
シューズ:BIRKENSTOCK

ロージー(張偉蓉)さん
38歳 イラストレーター
トップ:Slim Fingers / 細細指。 + 許許兒 XUXUWEAR
ボトム:許許兒 XUXUWEAR
バッグ:ミナ ペルホネン
シューズ:NIKE

台北市萬華区とは

台北市萬華区。台北駅の南西に位置するこの地域は、西側には台北市と新北市を隔てる淡水川が流れ、かつては海運による商業で台南や台中・鹿港とともに早くから栄えました。けれどもその後、政治や経済の中心が台北市の東側へ移ったために、萬華区は時代の変化から取り残されて、時が止まったような下町の風景が残されています。

クリエイターのご夫婦、ロージーとピーターが住んでいるMRT龍山寺駅周辺は、地に足の着いた下町の雰囲気。旧跡や廟が多く、生活市場もあり、さらには歓楽街だった残り香も感じられる。均質化の一途をたどるアジアの都市部においてはとても貴重な、コントラストのある地域ではないでしょうか。

その中心に位置する台北市内最古のお寺「艋舺龍山寺」は、仏教・道教・儒教、三大宗教の百余りの神様を祀る二級古跡で、学問や商売などのご利益があると毎日多くの人が参拝に訪れています。美しい装飾も特筆ものです。

「阿源小吃」でお昼を

二人はよく家族で外出していて、美味しいお店にもとても詳しい。今回は、MRT龍山寺駅から台湾鉄道・萬華駅方面へ向かって数分歩いた、「阿源小吃」という麺のお店に案内してくれました。かわいい暖簾が目印のこちらは、特別目立つわけではないので見逃してしまいそうですが、Googleマップの評価はなんと4.7。これは期待できそう。

麺類はお店によってはゆですぎで残念なこともありますが、こちらのお店のゆで加減と味つけは完璧でした。特にスープなしの乾麺はぜひ食べてみてほしい。スタッフのみなさんも優しくて、“厨房と店内が清潔な店に外れなし”です。

小菜(サイドメニューのおかず)も何品か頼んでバランスよく。たとえ一人のときでも炭水化物だけにせず、小菜やスープを足して野菜を摂るようにしています。

親子三人で住む家へ

食後に二人のご自宅へ。以前の家と現在の家にお邪魔したことがあって、その変化の様子も見てきました。現在の家は賃貸物件で台所と床をリノベーションして、この秋で5年。3年半前に伺ったときは家具をひとつずつ揃えている段階でしたが、すっかりインテリアも完成して、前よりも小物が増えた印象です(それでもスッキリしてる!)。

「インテリアのテーマは……フリースタイルでしょうか。台湾芸術大学の学生だった頃に北欧デザインを好きになって、家具類はヴィンテージを扱うインテリアショップで購入しました。日本を訪れて集めた古本や小物、友人からもらったものや捨てられていたものも、自分たちがよいと思ったら手入れをして部屋に取り入れています。自分たちが好きなものと、それを楽しめるすごし方を大切にしています。

正面の壁の看板は古い食堂のメニュー表で、ピーターの実家の近くに捨てられていたのを持ち帰って飾りました。遊びに来た友人はみな、このメニュー表を見て笑います。『この頃の値段は安い!』『お腹すいたー!』と、食べたいものをオーダーされたりするんです」

使用頻度の高いものは、オープン棚に置いて使いやすく

台湾で共働きをしている若い人は、ほとんど料理をしない人も多いですが、ピーターも積極的にキッチンに立つので、調理道具と食器が充実しています。二人は初めて会った頃からとびきり仲がよくて自然体で、それはお子さんが生まれても変わらず、協力し合って家事などに取り組んでいます。

「料理はだいたい週に4・5回くらい、主にピーターが担当します。私は朝食やおやつを作ったり、果物や飲み物を用意します。家事分担は平等に半分で、3歳の息子の面倒も二人で見ていますが、だいたい息子が元気すぎて困っています(笑)」

オープンシェルフをクローゼットに。二人ともナチュラルな服を好んでいて、色のトーンも合っていて乱雑さはゼロ。見せる収納にすると、無意識に整えるので散らかりにくい、という利点もありますね。お手本のようなクローゼットです。

ピーターが台南の「Hiplease Antique」という古道具屋で購入したぬいぐるみ。キャラクター名は不明とのこと。

ファービーもいる!

キャラクターも色や素材、置き方を工夫すると部屋に馴染むという好例です。在宅勤務のロージーは、家の中の好きなコーナーでヨガをしたり、家族で日本のドラマを見たり、読書をしてストレスを解消しています。ちなみに、日本のカルチャーに詳しい二人は、最近は「おいハンサム!!」 がお気に入りだそう。

「20代の頃は、夢や人間関係や将来のことなどに不安を強く感じていました。30代後半の今は、自分を認めるのはありのままの自分を受け入れることだと気づいて、物事の自然の成り行きに委ねるようになりました。行雲流水ですね。強く物事に執着しなければ、思いがけず最適なタイミングが来るかもしれません。ちなみに、家は治安や予算面でいい物件になかなか巡り会えず、約1年半かけて現在の部屋に決めました。
子どもを育てる日常は今しかないので、それに集中すれば幸福になれると思います。そして、時々美味しいお酒が必要!」

老舗のかき氷店「龍都冰果専業家」でまったり

たっぷりお喋りしておいとまし、帰りに龍山寺駅近くの老舗のかき氷店「龍都冰果専業家」に立ち寄って、八寶冰(バーバオビン)を食べました。滋味深い八種類のトッピングは、何度食べても感動。ちなみに、この周辺は夜は少々治安が心配なので、私はいつも昼間に訪れています。龍山寺参拝の際には、ぜひともこちらも食べてみてくださいね。

偶然にも、今回巡った大渓・新荘・萬華には、かつて海運による商業で栄えた地域という共通点がありました。落ち着きのある街で、のんびりすごすのが心地よく感じるこのごろ。今後も台湾各地のちいさな街歩きは、ライフワークとして続けていくつもりです。

text & photo : Konomi Yanagisawa
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