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仕事を離れざるを得なくなるケースも…“カスハラ”が社会問題化

  • 2024.7.22

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「カスタマーハラスメント」です。

行きすぎた行為。従業員を守るため法整備を準備中。

カスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題化しています。厚生労働省は従業員を守る対策を企業に義務付けることを検討。労働施策総合推進法にカスハラ防止策を盛り込む準備が進められています。

厚労省は、さまざまなハラスメント対策情報を載せた「あかるい職場応援団」というサイトを運営しており、その中でカスハラについては、顧客などからのクレームや言動のうち、要求の内容の妥当性に照らして、要求実現の手段や態度が「社会通念上不相当なもの」「労働者の就業環境が害されるもの」と明記しました。働くことを妨げるほどのクレーム行動はカスハラと定めるという、度合いを言語化し、共通認識を持てるようになったことは大いに意義があると思います。

カスハラの対策企業事例集の中のヤマト運輸のケースによると、コールセンターでアンケートを行ったところ、オペレーターの約8割がカスハラに遭っていたらしいことが判明。暴言や威嚇、脅迫を受けたり、長時間拘束されたり、個人情報を執拗に聞き出そうとする被害が起きていたそうです。

カスハラの第1の問題は、業務のパフォーマンスの低下ですが、2つ目に大きな問題は、労働者の健康不良と現場対応に恐怖を抱いてしまうことです。顧客から繰り返し否定的なことを言われ続けて自尊心を傷つけられ、真面目に顧客対応をしていた方が「自分は会社に迷惑をかけてしまっている」と心を病み、仕事を離れざるを得なくなるケースが少なからず発生しています。

ヤマト運輸のコールセンターでは、カスハラ対策として、「脅されているようで怖いです」など、一次対応者が自分を主にした気持ちを伝えて相手に冷静になってもらい、それでも改善されない場合は、電話を代わった管理者が、「あなたの行為はカスハラです」と第三者の視点で伝える2段階案内を導入しました。

対応者が仕事を離れなければいけなくなるほどのクレームというのは、想像力を欠いた行為です。自分で業を起こす人が増えれば、顧客対応者の思いに気づくことができ、カスハラ軽減につながっていくのかもしれません。

ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。

※『anan』2024年7月24日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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