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【若者の孤独死】ゼロ年代生まれの若者は「独り」の方が満足度が高い

  • 2024.7.22
現在の若者は数十年前の若者に比べて「独り身」でいることに幸福を感じている
現在の若者は数十年前の若者に比べて「独り身」でいることに幸福を感じている / Credit: canva

現在の若者たちにとっては、もはや「独り身」でいる方が幸せなのかもしれません。

独ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ校(JGUM)の最新研究で、現在14〜20歳前後の若者は一昔前の同年齢の若者たちに比べて、交際や結婚を含め、独りでいることの割合や満足度が高いことが判明しました。

急速に変化する社会の中で、独身に対する若者の印象も大きく変わっているようです。

これは昨今の若者の孤独死の上昇と関連するかもしれません。

研究の詳細は2024年6月10日付で心理学雑誌『Personality and Social Psychology Bulletin』に掲載されています。

目次

  • 現代の若者は「独身」に満足しているのか?
  • 性別や年齢によって「独身の満足度」も変わる?

現代の若者は「独身」に満足しているのか?

現代の若者は「独身」に満足しているのか?
現代の若者は「独身」に満足しているのか? / Credit: canva

今回の研究を始めるきっかけは、結婚率の低下、離婚率の上昇、単身世帯の増加といった現代社会の顕著な変化にありました。

これは世界的に見られる傾向であり、現代の若者たちが以前の世代よりも「独り身でいることへの満足度が高くなっている」可能性を提起しています。

研究主任のティタ・ゴンザレス・アビレス(Tita Gonzalez Avilés)氏はこう話します。

「両親や祖父母の世代に比べて、現代人は結婚の頻度が低く、離婚率が高くなっています。それに伴って、未婚や同棲、長期独身といった多様な関係が受け入れられるようになりました。

独身は今や社会的にごく普通のように見えますが、その一方で、実際に独身者が今の生活状況に満足しているかどうかは明らかになっていません

そこでアビレス氏らは今回、独身でいることの満足度が年代ごとにどう変化しているかを調査しました。

ドイツ在住の2900名以上を対象に調査

本調査ではドイツ在住の一般男女2936名(14〜40歳)を対象としました。

参加者は生まれた年代ごとに「1971〜1973年」「1981〜1983年」「1991〜1993年」「2001〜2003年」に分類できます。

調査は2008〜2011年と2018〜2021年の2回に分けて行われました。

調査期間と対象者の年齢をわかりやすくまとめた図の例がこちらです。

ベージュが10代の青年期、グリーンが20代の成人形成期、ブルーが30代の成人確立期になります。

調査期間と参加者の年齢をまとめた図
調査期間と参加者の年齢をまとめた図 / Credit: Tita Gonzalez Avilés et al., Personality and Social Psychology Bulletin(2024)

参加者は、調査当時の「交際状況」「独身生活」および「生活全般」に対する満足度を回答しました。

独身生活の満足度は例えば、「独身である状況にどれくらい満足していますか?」という質問に対し、0(非常に不満)〜10(非常に満足)の11段階で評価してもらっています。

交際状況や生活全般への満足度も同様の仕方で測定しました。

チームはこれに加えて、参加者の年齢、性別、性格特性(特に外向性と神経症的傾向※)などの個人的要因も考慮して、それぞれの満足度に与える影響を調べています。

(※ 外向性とは社会的に活動性が高く、他者とのコミュニケーションも積極的に取る特性で、神経症的傾向は不安やネガティブ感情が高い特性を指します)

では、結果を見てみましょう。

ゼロ年代生まれは「独り身」の満足度が高い

データ分析の結果、1991〜1993年生まれの青年期と2001〜2003年生まれの青年期を比べてみると、2001〜2003年生まれの方が交際・結婚を含めて、独り身でいる割合が高いことがわかりました。

また、2001〜2003年生まれの方が独り身でいることへの満足度も高くなっていました。

その一方で、生活全般への満足度はどちらのグループでも差はありません。

しかしながら、年代ごとの「20代の成人形成期(グリーン)」と「30代の成人確立期(ブルー)」を比べても、独身状況や生活全般への満足度に時代的な変化は認められませんでした。

この結果は、2001〜2003年生まれの若者と、それより一昔前に生まれた世代との間に、独り身であることに対する考え方や満足度に大きな違いがあることを示唆しています。

これはゼロ年代生まれの若者たちが、心が発育する敏感な時期に、スマホやノートPC、SNSの普及といった急速な社会変化にさらされており、対面でない多種多様なコミュニケーションがごく自然なものとなっているためか、独り身であることをすんなり受け入れやすくなっている可能性を示しています。

この他にも、現在の若者はYouTubeやサブスク、ゲーム、漫画といった一人で余暇を過ごす方法が充実しているため、パートナーがいなくても寂しくないのかもしれません。

ゼロ年代生まれは「独り身」の満足度が高い
ゼロ年代生まれは「独り身」の満足度が高い / Credit: canva

しかし、こうした年代ごとの全体的な傾向が見つかった一方で、性別や年齢、性格特性などの個人的要因も有意に関与していることがわかりました。

性別や年齢によって「独身の満足度」も変わる?

例えば、男性では年齢が上がるにつれて、独身でいることに対する満足度も下がっていく傾向が見られました。

これは周囲の同年代の人々が徐々に結婚していったり、家族や親戚から結婚を急かされたりと、社会的圧力が高まるからだと予想できます。

しかし反対に、女性は34〜40歳になると、独身であることの満足度が高くなる傾向にあったのです。

研究者はこれについて、女性の初婚と出産の一般的なピーク(いずれも平均30歳)を過ぎていることから、周囲からの結婚への期待値が下がったり、子供を授かることに関して急かされるような社会的圧力が少なくなる点と関係している可能性が高いと述べています。

女性は年齢が上がるごとに独身の満足度が高まる
女性は年齢が上がるごとに独身の満足度が高まる / Credit: canva

そして外向性が高いと生活全般の満足度も高くなる傾向があり、神経症的傾向が強いと、独身状況および生活全般への満足度も低くなることが示されました。

アビレス氏らは今回の調査について、ドイツ在住の40歳までの男女のみを対象としている点で限界があると指摘します。

そのため、この傾向をはっきりさせていくためには、より幅広い年代と文化圏の男女を含めて、独身でいることへの考えがどう変化しているかを明らかにしていく必要があるでしょう。

ただ最近は、日本でも若者の孤独死の件数が増えているという報告があります。

孤独死とは、誰にも看取られずに死ぬことで、死の事実を周囲に認知されず、死亡後の発見が遅れる状況を指します。

独身でいることの満足感が上昇するというのは、一見ポジティブな話題にも見えます。しかし、独りでいることが常態化すると、いざ辛いときに助けを求めづらい状況になり、死んだとしても誰にも気づかれないという状況も発生しやすくなります。

若者の孤独死が増えているという問題は、今回の研究で示されたような独り見でいる方が幸福と感じる人が2000年代以降の世代に多いことと関連しているかもしれません。

若い人たちが自然死することは稀なため、孤独死の問題は、この世代の年齢が上がっていくとより顕著になっていく可能性があります。

結婚や交際を積極的にする人が減っている現代、それ以外の方法で毎日会話する相手を作る仕組みが社会に必要なのかもしれません。

参考文献

Young people happier with singlehood than a decade ago, study finds
https://www.psypost.org/young-people-happier-with-singlehood-than-a-decade-ago-study-finds/

元論文

Today’s Adolescents Are More Satisfied With Being Single: Findings From a German Cohort-Sequential Study Among 14- to 40-Year-Olds
https://doi.org/10.1177/01461672241257139

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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