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「お金じゃない」と言われて、信じてしまったーーアプリで声をかけられ始まったアリ地獄

  • 2024.7.21
「お金じゃない」と言われて、信じてしまったーーアプリで声をかけられ始まったアリ地獄の画像1
写真AC

シェアハウスで暮らす20代女性の、ここに至るまでの想像を超えた物語を聞きます。

目次

・アプリで知り合ったおじさんに暴力を振るわれた
・位置情報のわかるアプリで声をかけてきたホスト
・つい連絡を取ってしまったのがはじまりだった

アプリで知り合ったおじさんに暴力を振るわれた

古賀凛さん(仮名・29)は、シェアハウスに住んでいる。このシェアハウスは、地元の居住支援団体から紹介されたもので、それまではこの団体が運営するシェルターに入っていた。

というのも、それまで「知り合いのおじさん」の家に居候させてもらっていたのだが、そのおじさんから暴力を振るわれたのだ。ちなみに、「知り合いのおじさん」というのは親戚ではなく、アプリで知り合った人だという。

凛さんの話を聞きはじめたものの、冒頭から頭が追い付かなくなった。なぜ「知り合いのおじさん」の家に?

凛さんは淡々と話すが、少しずつ時間をさかのぼっていくと、想像を超えた物語が明らかになっていった。

位置情報のわかるアプリで声をかけてきたホスト

凛さんは、6年前にリョウと名乗るホストと知り合った。ホストクラブに行ったわけではない。位置情報のわかるアプリがあって、そこで凛さんの近くにいるというリョウから声をかけられたのだという。

凛さんは当時一人暮らし。精神疾患があり障害年金をもらっていたが、それだけでは足りず、アルバイトしながら生活していた。凛さんは決して派手なタイプではない。200万円ほどの貯金もあったというから、堅実と言っていいだろう。

そんな凛さんが、アプリでリョウと話がはずみ「店においでよ」と誘われて、つい足を運んでしまった。店は都内ではない。近隣の地方都市なので、リョウを指名しても5,000円もあれば入店できるのだという。

そんな気軽さがあだになった。誘われるたびに店に通ううち、あっという間に200万円あった貯金が底をついた。

「リョウに甘い言葉をかけられ、何度も『来て』と言われると、『行かなきゃ』と思ってしまう。そして、店に行くとバカスカお酒を飲んで、1回の会計が8万円とかになるんです」

このままではダメになる。リョウから逃げようと思い、関西の知り合いを頼った。ところが関西での生活環境が合わず体調を壊してしまう。

再び関東に戻ったがお金も仕事もなく、生活保護を受けて、ずっとアパートの部屋で過ごしていたという。

リョウとは連絡を絶っていたが、リョウの店の従業員から連絡が来た。リョウが心配しているという。アパートで孤独だったこともあり、リョウに連絡をしてしまった。

リョウから「急にいなくならないでよ」と甘い声で言われると怖くなってブロックする――そんなことを繰り返していた。

つい連絡を取ってしまったのが、アリ地獄のはじまりだった

そのころ凛さんには交際している男性がいた。が、彼にイライラすることが増えて、彼と別れて地元に戻る。そこで、リョウが名前を変えて、別の店でナンバーワンになっていると知り、懐かしくなってつい連絡を取ってしまった。

思えばこれがアリ地獄のはじまりだった。

リョウは喜んでくれた。「安くするから」と言われ、また店に行ってしまった。

リョウは凛さんのことを「好きだ」と繰り返す。営業トークだとはわかっているし、そもそも店に行くお金がない。だから「もう会わない」と言ったが、「お金じゃない。凛が自分には必要なんだ。凛と結婚したい」と言ってくれた。

「お金じゃない」と言われて、信じてしまった。信じたかったのかもしれない。

「お金じゃない」はずなのに、結局リョウと会うのは店だ。凛さんは“パパ活”をしたり、ついには風俗嬢になって体を売ったりして、店に行く費用を捻出するようになった。

2年ほど前のことだ。そうすると瞬く間に、リョウにつぎ込むお金がピークになった。もちろん、そのために凛さんが体を売って稼ぐお金も。

――続きは8月4日公開です

坂口鈴香(ライター)
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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