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【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語るタイのサッカー界の成長、タイリーグと日本人選手の相性、今後のキャリア

  • 2024.7.19
【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語るタイのサッカー界の成長、タイリーグと日本人選手の相性、今後のキャリア
【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語るタイのサッカー界の成長、タイリーグと日本人選手の相性、今後のキャリア

Text by 高橋アオ

Jリーグ史上最強のチーム鹿島アントラーズを率いた石井正忠監督は、昨年11月23日にタイ代表指揮官に就任した。

1999年にアカデミーのコーチから指導者キャリアを始め、2017年5月まで常勝軍団鹿島を約19年支え続けた。

Jリーグ、天皇杯、ルヴァン杯を制覇し、2016年に開催されたクラブワールドカップではJリーグクラブ史上最高成績となる準優勝へ導いた。

2021年からタイ1部ブリーラム・ユナイテッドの指揮を執り、2年連続で国内三冠(リーグ、協会オープンカップ、リーグカップ)を達成して前人未到の金字塔を打ち立てた。8月13日にタイ代表のテクニカルディレクター(TD)へと就任するも、9月18日に退任した。

紆余曲折を経てタイ代表に指揮官に就任した石井監督をQolyがインタビューを実施。

最終回はタイのサッカー界の成長、タイリーグと日本人選手の相性、今後のキャリアの抱負ついて語った。

※諸事情により1年前に取材した内容を掲載いたします。

(取材日2023年6月15日)

タイリーグと日本人選手の相性

――一時期日本人監督は増えましたが、日本人選手は一時期よりかなり少なくなりました(タイ1部2013年シーズンは13人、今季は3人)。タイで日本人選手が活躍することは難しいのでしょうか。

いや、僕は比較的簡単だと思っています。でもいまは日本とスケジュールがちょっとズレているじゃないですか。そこが1番の問題かなと思っています。いま少なくなっている要因の1つかなと思っていますね。

タイの外国人選手のトレンド

――一方で同じ人種で文化的にも近い韓国人選手は日本人選手より多くいます(今季タイ1部では8人)。韓国人選手のほうがタイリーグに向いている傾向にあるのでしょうか。

そういうわけではないと思います。僕は日本人選手がほしいくらいなのでいつも勧めているんですけど、それが叶わないというだけです。

あとは、僕もなかなか自分のクラブじゃないけど、(日本人選手を)誘えない理由は(タイの)ビッグクラブじゃないと契約のことで揉めることがあるので…。給料の問題や遅延だとかそういうことがあります。

あとはクラブのオーナーさんが、成績が悪いと次の年に「クラブをどっかに売っちゃおうか」という話にもなっちゃうので。だからそういう面も含めてですね。

【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語るタイのサッカー界の成長、タイリーグと日本人選手の相性、今後のキャリア
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――タイといえば強力なアフリカ人選手のイメージが強いです。例えばブリーラムでタイトル奪取に大きく貢献したコンゴ民主共和国代表FWジョナサン・ボリンギやギニア代表FWロンサナ・ドゥンブヤと決定力のある大型ストライカーが印象的です。彼らのような選手はタイに多いのでしょうか。

昔はアフリカ系の選手が多かったみたいですね。でもなかなかフィットしなかったそうです。やっぱりアフリカの選手は独特なリズムを持っていることや、それこそ組織的じゃない部分があります。

1度タイのリーグのなかでも増えていましたけど、いまは減っちゃったんですよね。今回その選手(ロンサナ・ドゥンブヤ)を獲ったんですけど、彼はベルギーでもやっていたことがあったので、きっちり(規律やチームワークなどを)守るタイプだったからすごく助かりましたね。ずっと活躍してくれていますからね。

秋春制について

――タイのリーグは秋春制に移行しました。日本でも議論されていますけど、石井監督から見て秋春制はいかがでしたか。

まずは欧州とのスケジュールが合うようになりました。日本人よりヨーロッパの選手が来やすくなったんじゃないかなということが1つありますね。

あとタイは気候がそんなに変わらなくて、雨季はあるけど、年がら年中暑いじゃないですか。だからそこの部分では秋春制になっても、そんなに影響は出てないんじゃないかと思っていますね。

――日本だと簡単にはいきませんよね。

いま問題になっているのは、気候の部分ですね。

【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語るタイのサッカー界の成長、タイリーグと日本人選手の相性、今後のキャリア
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――寒い状況で選手を動かすことは、監督経験上難しい部分はありましたか。

日本でもそういう時期から普通にトレーニングをするわけじゃないですか。だから慣れちゃえばね。そこも極端な話で始めてしまって慣れてしまえばできるのかなと、簡単に思っているんですけど。

でも当然雪国のチームからしたら「そこでは絶対できないよ」という話に多分なると思います。そこはうまくなにかの方法で(課題が)クリアになるのであれば、ヨーロッパのスケジュールである秋春制になったほうが、ウィンドウの関係で選手の行き来はもっと盛んになるかなと思います。

タイサッカーの成長

――タイのサッカーは目まぐるしい成長を遂げているとお聞きします。石井監督から見てタイのサッカーについて成長を感じていることはありますか。

成長は感じているんですけど、実は他の東南アジアの国もかなり力を入れていると感じているんですよ。だから、他の国との差が縮まってきた感じがしていて、いまはタイが追い付かれている感じがするんですよ。

日本とタイの差は、ちょっと離れている気がしています(苦笑)。だから僕はこのタイのサッカーをもっと、もっと日本に近づけるぐらいまでレベルアップしないと、次のワールドカップ出場枠が増えているにもかかわらず、タイのワールドカップ初出場は狙えないんじゃないかとすごく心配しています。

――ベトナム代表も元日本代表監督のフィリップ・トルシエさんが就任しましたね。

カンボジアにも本田圭佑がいましたね。インドネシアもいま景気が良くなってプロリーグに力を入れようという噂も聞いています。なのでそこはかなり心配です。

【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語るタイのサッカー界の成長、タイリーグと日本人選手の相性、今後のキャリア
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――東南アジア最強を決めるAFF三菱電機カップ(旧AFFスズキカップ)は見られたと思いますが、試合を見ていかがでしたか。

(タイ代表は)ブリーラムの選手を中心にうまくやっているのかなと思います。なので、いまブラジル人監督がやっているんですけど、そこを協会も含めてもっと本気でタイのサッカーを強くする形を考えなきゃいけないかなと思っています。

あの(三菱電機)カップでは他を圧倒して、タイが安定的に優勝するぐらいまでのところまでいかないといけないのかなと思いますね。すごく苦しんでいたと思いますので。

――タイ代表含めてタイのサッカーはまだ発展途上でしょうか。

はい。本当にもったいないと思いますね。だから2026年はタイ代表が(ワールドカップに)初出場を絶対に果たさなきゃいけないと思います。

――ブリーラムの監督としてその一助になりたいですか。

そうですね。そうなりたいと思っています。

今後のキャリアについて

――最後の質問になります。今後のキャリアについての抱負を教えてください(タイ代表監督就任前時)。

こうやってタイに3年間これだけお世話になっていて、ブリーラムでも2年半の契約をいただきました。(契約は)もう1年あるので。

その間に僕がタイに来る1番の目標であったアジアチャンピオンズリーグで日本に帰って、「日本のチームを負かす」というところは今シーズンの個人的な目標としてやっています。

最後は日本に戻って、もう1度監督をやりたい気持ちがあります。それはもうどのカテゴリーでも、男子も女子も関係なく、最後は1回戻ってやりたい気持ちもあります。

そこに向かって、いままでもコツコツやってきたんですけど、これからも同じように。なかなか大きい変化はできないと思うんですけど、ちょっとずつ、ちょっとずつスキルアップをして、また最後に日本に帰って、率いるチームを優勝させるために働きたいと思っています。

【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語るタイのサッカー界の成長、タイリーグと日本人選手の相性、今後のキャリア
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昨年11月にタイ代表指揮官に就任した石井監督は、タイのサッカーのために奮闘している。タイは東南アジアの強国と評価されているが、過去にアジアカップで1972年大会の3位(タイ史上最高成績)に入った。

それから成績は低迷するも、近年は目まぐるしい成長を遂げて2018年ワールドカップロシア大会では最終予選まで勝ち残り、翌年開催のアジアカップUAE大会ではベスト16に進出した。

だが2022年ワールドカップカタール大会では2次予選敗退と3次(最終)予選まで進出できなかったが、石井監督が指揮官に就任してからはアジア杯16強進出と地力をつけ始めている。

2026年W杯アジア2次予選では韓国、中国、シンガポールと死の組に入った。中国と勝点8で並ぶ接戦を見せたが、得失点差で惜しくも大会敗退が決まった。それでも石井監督がブリーラムで築いた偉業やアジア杯GL突破などの実績をタイサッカー協会は評価しており、今後も石井監督が指揮を執る代表チームは順調に成長を遂げている。

新たな歴史を築こうとタイで奮闘する石井監督の活躍から目が離せない。

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