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セルフコントロールで心を平和に。乱れがちな感情と上手に付き合う方法

  • 2024.7.19

セルフコントロール能力を磨いて

現代人特有の悩みに対処

現状を打破して高みを目指す人に支持 されるメンタルトレーナー、兼下真由子さんは、現代人が抱える悩みの傾向を大きく3つに分類する。

「一つが将来への不安です。具体的にはお金、健康、人間関係。2つ目は、上昇志向の強いトップアスリートや経営者に多いのですが、努力できる範囲のことを何年もやり続けて現状維持にとどまり成長できていない、このままではいけないと思いながらやり方をどう変えたらいいかわからない、という悩み。3つ目が、すぐにイライラしてしまうという悩み。会社でも家庭でも、平常心を保てず、感情が昂って苛立ってしまう人は少なくありません。これもストレス社会の象徴かもしれません」

Photo_ Fiordaliso/Getty Images
Photo: Fiordaliso/Getty Images

特に、わけもなくイライラする、苛立ちを抑えきれないというのは、メンタルヘルスの危険信号だそう。「大人と子供の大きな違いは、自分の機嫌を自分で取れるかどうか。赤ちゃんは自分の機嫌をコントロールできないので、何かあったらすぐ泣きわめきますよね。でも大人はできるはず。私はあれをやればご機嫌になれる、この荷物を下ろせば楽になれるとわかっているはずなのに、それができなくて不機嫌になる。理由なく不機嫌になる人はいません」

では、セルフコントロール能力を磨く方法とは?

「自分にとって害になっている、悪い影響を与えている要素があるのに、それを取り除けない状況を見過ごさないでほしい。例えば休暇をとって海の見える場所に行き、仕事を忘れてのんびり寝っ転がりながら波の音を聞いていて不機嫌になる人はいないはず。心がご機嫌な状態であると、自然とパフォーマンスが上がるんですよね。パフォーマンスが上がるから、勝手に結果もついてくる。ビジネスマンなら仕事がうまくいったり、アスリートであれば試合に勝てたり。その逆もしかりで、機嫌が悪いとパフォーマンスは下がり、成果も出にくくなります。心→パフォーマンス→結果、という順番で成り立っているのです」

不機嫌さを表に出してしまう=コントロール不能な状態。これは自分が辛いだけではなく、周りに多少なりとも迷惑をかけてしまっている可能性大。傷が深くなる前に、メンタルトレーニングやカウンセリングを受けてみてはいかがだろう。

また、不機嫌や落ち込みの原因が、周りや環境にある場合は、どう対処すべきなのか。

「どの視点から見るかによって何が問題かは変わると思いますが、はっきり言えるのは、コントロールできるのは自分だけ、ということ。他人はコントロールで きないし、会社も社会もコントロールできません。もちろん、親もパートナーも子供も。大前提として、自分以外はコントロールできないという認識を持っていれば心の負担は減らせます。それぞれがセルフコントロールすることで、心に余裕が生まれ、人に少し優しくできたり、思いやれたり、人の話を聞けたり、感情的にならずにスルーできたり。不安も焦りもイライラも、セルフコントロール能力を磨くことが解決策に」

あらためて見直したい

他者やSNSとの距離感

Photo_ Oleg Breslavtsev/Getty Images
Photo: Oleg Breslavtsev/Getty Images

さて、今や娯楽としても情報収集としても欠かせないツール、SNS。だが、それがボディブローのようにメンタルにダメージを与えているケースもある。

「著名人やアスリートに多いのですが、ついエゴサーチしてしまう、というクライアントがいます。ネガティブな投稿に傷つくのにやめられない理由は、自分ではなく他人軸で生きているから。自己能力に対する他者評価を重視しているんです。これはメンタルヘルスを意識する上で改善したいポイント。一日の終わりに自己評価で採点するなど、軸を自分に変えれば、エゴサーチは時間の無駄だと気づくはずです」と兼下さん。

荒木香織さんは、メンタルヘルスの最新研究から、SNSとの付き合い方を教えてくれた。「アスリートにとって、勝てば官軍、負ければ罵詈雑言のSNSをエゴサーチするのはもってのほか。一般

的にも、自分のメンタルヘルスを守るためには他人と比較しないことが大原則なので、隣の芝生が青く見えるSNSと距離を置くことがベターだと考えられてきました」

新たな研究でわかったこともあるそう。「たとえばインスタのストーリーの場合、見るだけの人にはネガティブな要素が多いのに対し、アクティブユーザーには悪い影響が少ない、という事実。SNSに自分自身の考えや経験を積極的に投稿すると、いいね! がきて自己肯定感が高まったり、誰かと繋がりを感じたり、投稿するために自分磨きに投資したり、むしろプラスに作用するかもしれません。これからの時代、スマホもSNSも生活の一部。手放すのが難しいなら活用法を見直したいものです」

何より優先すべきは、自分の心。マイナスに傾いた時は優しく寄り添う。心が回復したら、ゆっくりと体を立て直し、荒波も楽しめるマインドを育てたい。

Dr.KAORI ARAKI

荒木香織。スポーツ心理学者・博士。CORAZONチーフコンサルタント。順天堂 大学スポーツ健康科学部客員教授。米国の大学院でスポーツ運動心理学、女性ジェンダー学を専攻。ラグビー男子日本代表を始め、数々のスポーツチーム、トップアスリート、指導者、企業へのコンサルテーションを提供。

MAYUKO KANESHITA

兼下真由子。メンタルトレーナー。脳神経トレーニングメソッドWINメディテーション創始 者。全米ヨガアライアンスの講師資格取得。メジャーリーガーやサッカーワールドカップ日本代表選手などトップアスリートから経営者、アーティスト、主婦まで、年齢や職業を超えたクライアントに支持される。

Photography and Creative Direction: Luca Meneghel Model: Nabila Lorini Text by Eri Kataoka Editor:Misaki Kawatsu

※『VOGUE JAPAN』2024年8月号「影響し合う、心と体のヘルシー学」転載記事。

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