1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 話そうとすると涙が出ちゃう…その理由と克服法【臨床心理士・南舞さんのあるある! 心の相談室】

話そうとすると涙が出ちゃう…その理由と克服法【臨床心理士・南舞さんのあるある! 心の相談室】

  • 2024.7.19

「感情を言語化すること」に、少しずつ慣れていこう。

FilippoBacci

自分の意見を話そうとすると、涙が出てくる…

相談者Nさん:『自分の意見を話そうとすると、涙が出てくる…』

どんなに言いたいことがあっても、自分の意見を言おうとすると泣きそうになってしまい(実際に涙が出る時があります)、すると言葉が詰まって出てこなくなってしまいます。昔からそうで、これまでもなんとか克服しようと、事前に言いたいことを紙にまとめてみたり、一度自分の中で練習してみたりするのですが、いざ人を目の前にするとダメで......どうしたら自分の意見を言えるようになりますか?

臨床心理士・南さん:『少しずつ慣れていきましょう』

Nさん、お悩みありがとうございます。自分の意見や本音を求められる機会って公私共にありますし、そんな時に、自分の意見を言おうとすると泣きそうになる、それが毎回なのだとすると、Nさんにとってはかなりしんどいだろうなと思ってしまいました。また、それを克服しようと自分なりに色々と試されていると言うお話しも聞き、なんとか力になれないものだろうかと感じています。まずひとつ、お伝えしたいのが、泣くことは決して悪いことではないと言うことです。泣くことは緊張や葛藤場面の中で起きる自然な反応なので、どうか必要以上に自分のことを責めないでもらいたいと思います。さて、Nさんのお悩みを伺いながら、そこにどんな背景があるのか、またどんな手立てがあるかについて考えてみましたので、何か参考になれば幸いです。

Maskot

言葉にしようとすると涙が出るのはなぜ?

まず、泣くことについてですが、泣くという行為は、副交感神経の働きによって興奮状態を抑え、リラックスさせようとすることによって起きると言われます。泣いている状態の時は、ストレスの負荷がかかっている状態であり、Nさんが自分の意見を言う時に泣いてしまうのは、意見を言うという行為に対してストレスを感じた時に現れる反応なのだと思います。では、自分の意見を言うことがストレスになってしまう理由として、どんなことが考えられるのでしょうか。心理学的に捉えたときに、以下のようなことが考えられるのではないかと思います。

(1)感情を抑えるのが長年のクセになっている

自分の中に起きる、怒り・悲しみ・不安・緊張など、自分の感情を表に出さずに自分の中に溜め込んでしまうことが当たり前になっていないでしょうか? 溜めた感情が自然に消えて無くなってしまうことはありません。バケツの水と一緒で、容量を超えると溢れてしまいます。特に意見など自分の本音を話そうとする時は、いつもより感情が強くなるため、感情が抑えきれなくなり、涙という形で現れているのでしょう。

(2)自分の考えを肯定できない

自分の意見や想いに対して自信が持てなかったり、自分の意見は『間違っている、価値がない』と思っているということはないでしょうか?そういった考えが働くと、意見や本音を言おうとする場面の時に、強い不安や恐怖を感じ、そのストレスが涙として出ると言うこともあります。

(3)過去の傷つき体験によるもの

『自分の意見や本音を言うことが苦手なのはもともとの性格によるもの』と片付けることもできますが、過去の傷つきによるものという可能性もあります。例えば、過去に自分の意見を伝えた際に、相手に否定された、受け入れてもらえなかったという出来事が傷つき体験となり、同じような状況になった時に、反応として涙や言葉の詰まりを引き起こすことがあります。

Oksana Nazarchuk M

自分の気持ちを言葉にしていくために

(1) まずは一呼吸

自分の気持ちや本音を伝える際には、いきなり話し始めるのではなく、一呼吸おくようにしてみましょう。一呼吸おくと、感情の昂りをわずかでも鎮めることができます。

(2)自分の考えや本音を出す練習をする

いきなり自分の本音や考えを相手に伝えるのはハードルが高いので、まずは相手を通さず、自分の中で完結するような形で、自分の考えや本音をアウトプットすることに慣れていきましょう。Nさんは、事前に自分の思うことを紙に書いてみたり、自分の中で練習しているとお話しされていましたが、ぜひそれを続けてみてほしいのです。紙に書く以外だと鍵付きのS N Sで書いてみるのもいいと思いますし、書いたり記入したことを実際に声に出して話してみるのもおすすめです。慣れてきたらS N Sなどで『こんなことが嬉しかった』『こんなことに感動して泣けた』というような感じで、周囲の人にシェアする、そして共感してもらうという形で少しずつ慣れていくと良いでしょう。

(3)感情を言葉にする習慣を身につけていく

自分の中に起きた感情を言葉にすることに慣れていきましょう。感情を言葉にすることで、自分の内側で絡まっている複数の感情の存在を明らかにして整理したり、相手に自分の気持ちが伝わりやすくなって円滑なコミュニケーションをするのに役立ちます。感情の言語化には、さまざまな方法がありますが、ここでは「3コラム法」をご紹介します。3コラム法とは、出来事・感情(嬉しい、寂しい、悲しい、不安など)・思考(考え)の3つの視点から自分の気持ちを書き出して整理するものです。特に大事なのが、『感情』です。感情には自分の本音が表れているからです。最初は難しく感じたり、抵抗感を覚える時もあるかもしれませんが、少しずつ取り組んでみてください。

(4)苦手な場面の特定や、例外を探してみる

Nさんが意見や本音をいう際に、特に苦手な状況・場面はありますか? 例えば目上の人に対してなのか、異性に対してなのか、集団なのかなど。そうやってさまざまな場面を振り返っていくと、『この場面はまだマシかもしれない』とか『この時は涙が出ずに言えた』など、例外が見えてきて、それが解決の糸口になることもあるかもしれません。

Fiordaliso

難しい時には専門家のサポートを受けるのもひとつ

自分の意見や本音、感情を抑えることが長年の習慣になっているのであれば、それが急にできるようになるというのはなかなか難しい話だと思います。しかし、Nさんが今ご自身で行なっていることは決して無駄になることはありません。長い目で見て、続けていってほしいです。しかし、長い目でとはいっても、うまくいかないことが続いたり、苦手なことにチャレンジすると言うのは、精神的にしんどいこともありますよね。そんな時は心理療法やカウンセリングなどを通して、カウンセラーが伴走しながら、感情の整理や言語化、本音を相手に伝えることをお手伝いできると思います。ぜひそんなことも視野に入れてみてくださいね。

 

元記事で読む
の記事をもっとみる