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モビリティ業界の「今」と「これから」を考える、6つのトピックス

  • 2024.7.19
モビリティ業界の「今」と「これから」を考える、トピックス:蓄電給電

蓄電給電

給電機能は家庭用蓄電池を圧倒! +V2Hで家庭の電気にも有効活用

プリウスやアウトランダーのPHEVモデル、そしてBEV(バッテリーEV)のサクラの3台には純粋なガソリン車と比較して優れたメリットがあるのをご存じの方も多いはず。まず、それぞれ給電ができるということ。さらにV2Hと呼ばれる、クルマ(BEVやPHEV)から自宅へ電力を供給する機器を導入することで家庭で電気を有効活用できる。

一般的な家庭用蓄電池の容量は約2~17kWh。対してBEVやPHEVに搭載される電池の容量は約10~71.4kWhと大容量。もちろん災害時には頼もしいバックアップ電源として使えるのもポイント。さらに新車の場合、国や各地方自治体から補助金を受けられる点も魅力。

三菱 アウトランダー PHEVPHEV
コンポーネントを一新! 前後モーター出力と駆動用バッテリーの容量増加で、加速時を含めEV走行時間が延長。独自のS−A WCも進化。現在、国からの補助金は55万円。4,995,100円~(三菱自動車TEL:0120-324-860 www.mitsubishi-motors.co.jp)。
トヨタ プリウス PHEV
充電機能を備えないプリウス(ハイブリッド)Zの2WDが370万円。その差は約90万円だが補助金などを活用すればPHEVは約399万円に。給電機能に加えてリセールの面でもPHEVモデルは魅力的。4,600,000円~(トヨタ自動車 TEL:0800-700-7700 www.toyota.jp)。
日産 SAKURA
純粋なBEVとして登場し、今や日産を代表する軽自動車の一つ。国内のEV販売台数の4割を占めた人気のモデル。現在、四季の彩りに包まれるシーズンカラーを含め全15色をラインナップ。2,548,700円~(日産自動車 TEL:0120-315-232 www.nissan.co.jp/)。

電池交換

日本初!電池交換式バッテリーシェアリング

世界的な電動化社会に向けて、ENEOSグループが新たに始めた電動バイク用のバッテリーシェアリングサービスがGachaco(ガチャコ)。日本初の従量課金制の電池交換サービスは注目され、現在、東京と大阪など計52基を展開中だ。将来的には全国に広がる可能性も十分あり、ENEOSの約13,300ヵ所のサービスステーションをはじめ、特約店等での設置も期待できる。ユーザーは高価なバッテリーを買うことなく、電池の劣化も気にせずに低コストで利用できる点は大きなメリットだろう。

Gachaco
Gachacoが使用するモバイルパワーパックはホンダ製の1.3kWhのリチウムイオンバッテリー。電動バイクのほか、将来的には自動走行ロボット等にも利用を想定。月額利用料は1,078円。
Gachaco

自動運転

劇的進化!自動運転に迫るスバルの予防安全技術

電動化のほか、各社が力を入れている分野が自動運転技術。現在、国内ではレベル3までが市販化。スバルでは“自動運転”とは公言していないものの、同社のアイサイトXは限りなくそれに近いレベルに達している。

もともと“ぶつからない”と定評のある同社のシステムは新世代アイサイトとして全面的に進化。GPSや準天頂衛星などの情報と3D高精度地図データを組み合わせることで自車位置を正確に把握。高速道路上でシステムが渋滞と認識した際は、ハンズオフも可能だ。もちろん、その間は両足も自由になる。

渋滞時に停車状態から自動で発進し安全に追従。カーブでの速度制御、レーンチェンジアシストに料金所前速度制御、加えてドライバーの異常時も検知し対応する。限定的ではあるものの、ほぼ自動運転なのでは?と感じるはず。

スバルの新世代アイサイトの進化は止まらない
スバルの新世代アイサイトの進化は止まらない。カメラや各種センサーをはじめ、準天頂衛星「みちびき」などの情報に加え、3D高精度地図データやGPSで自車位置を把握。まさに全方位でドライバーをフォロー。
スバル レヴォーグレイバック Limited
スバル レヴォーグレイバック Limited スバル伝統の水平対向エンジンに駆動方式はAWD(4WD)を採用。高度運転支援システム「アイサイトX」を全車標準装備。3,993,000円~(スバル TEL:0120-052215 www.subaru.jp)。

移動の自由

トヨタ生産方式が生んだ「KAYOIBAKO」

「通い箱」。企業や工場などの拠点間を行き来しながら部品や製品を効率的に運ぶ箱のこと。トヨタは、生産で用いるこの「通い箱」の考え方をBEVコンセプトカーの「KAYOIBAKO」(カヨイバコ)として、ジャパンモビリティショー2023で発表。ビジネスからプライベートまで自由にアレンジして使える移動空間を提案した。車椅子を利用するユーザーにもしっかりと対応しており、乗り込みやすく運転席へのアクセスを容易にした設計は誰もが区別なく移動の自由を獲得できるといえる。

トヨタ KAYOIBAKO
業界1位のトヨタが提案するBEVの新型ミニバンコンセプト。詳細は未発表(トヨタ自動車)。
トヨタ KAYOIBAKO
トヨタも加盟する車椅子簡易固定標準化コンソーシアムよって規格化されたアダプター。ワンタッチで車椅子が脱着でき、しっかり固定される。また、運転席へのアクセスも容易だ。
トヨタ KAYOIBAKO
好きな場所でマイルームさながらの空間でチルアウトも可能。

EVで復活

旧車の復活、エンジンのリバイバル、名車復刻……EVが果たす大きな役割

技術の進化は新しいプロダクトを生み出すだけではない。過去の逸品を復刻・復活させることもできるから偉大だ。ここでは、EVの技術があったからこそ蘇ったクルマやテクノロジーを紹介。新しい技術の登場によって、触れることができるようになった古き良きカルチャーとは。

ヴィンテージカーをEVにコンバート!
エンジニアリング・カンパニーである〈OZ Motors〉はコンバートEVを手がけることでも知られる。写真は、EVとして蘇ったメッサーシュミット。例えば、これまでにも、フォルクスワーゲン・タイプ1を「e−BUG(イーバグ)」として復活させるなど、さまざまな車種のEV化を手がけている。www.o-z.co.jp/
伝統のロータリーエンジンが復活。
マツダといえば「ロータリーエンジン」と言えるほど代表的な存在だったが、RX−8以来使われなくなってしまった。今回、およそ11年の歳月を経てモーターを回すための発電機として伝統のロータリーエンジンが復活。MX−30に搭載されることに。「MX−30 Rotary−EV」4,235,000円〜(マツダ TEL:0120-386-919)。
絶大な支持を得る名車が蘇る。
1972年に登場したルノー「サンク」。そのデザイン性の高さから老若男女を問わずに愛されてきた名車の一つ。その一台が、ルノー「サンク E−Techエレクトリック」として復活。2021年のコンセプトカーとしての登場から、実用化され販売が決定したことが正式に発表された。現時点では、発売時期は未定。

エンタメ

PS5コントローラーでクルマが動く!

ついに実現したソニーとホンダによる協業プロジェクト。その第1弾として登場したのがBEVコンセプトのアフィーラだ。先頃米・ラスヴェガスで開催された見本市『CES』では、家庭用ゲーム機PS5のコントローラーで実車をステージ上で操作してみせた。快適な移動空間というだけでなく、クルマが持つ未来とその可能性。例えば映画や音楽、ゲームとの親和性など、AI活用と創造的なエンタメ空間としての新モビリティを提案。

『フォートナイト』
『フォートナイト』は総ユーザー数5億人!月間アクティブユーザー数は7,5 00万人以上ともいわれるメガプラットフォーム。そして同タイトルはソニー・ホンダモビリティ最初のゲームパートナーシップとしても期待されている。
ソニー・ホンダモビリティ
CES 2023(世界最大のテクノロジー見本市)で披露されたプロトタイプでは、将来的にインフォテインメントがPS5プラットフォームに割り当てられる可能性を示唆。ソニー・ホンダモビリティ www.shm-afeel a.com

リアルもバーチャルも両方楽しめる⁉

日産がジャパンモビリティショー2023で発表したBEVコンセプトカーがニッサン ハイパーフォース。将来のGT−R?を連想させるスタイリング、搭載される全固体電池と高出力モーターは最大出力1,000kW(約1,359馬力)を発生。まさにモンスターマシンだが、AR(拡張現実)とVR(仮想現実)を体験できる専用ヘルメットの装着で停車中はレースシミュレーターに。このメリットは大きく、実車を傷めることなく何度でも限界に挑戦できる。

BEVコンセプトカーがニッサン ハイパーフォース
ジャパンモビリティショー2023では日産の目玉として発表。直線基調のスタイリングに、GT−Rではお約束の丸形テールライトを採用。決してGT−Rとは紹介されていないものの、ちりばめられたパーツやエンブレムロゴはそれを連想させる。
BEVコンセプトカーがニッサン ハイパーフォース
車内もエクステリア同様、未来のクルマそのもの。昨今流行りのヨーク型ハンドルを採用し、さまざまなスイッチをレイアウト。また、イルミネーションは赤から青にも変化する。問合せ/日産自動車 TEL:0120-315-232 www.nissan.co.jp

『グランツーリスモ』が世界を変える

年齢や国籍を問わず運転が楽しめる『グランツーリスモ』シリーズ。現在では『グランツーリスモ7(PS5/PS4用)』が世界各地のゲーム好きのみならず、その挙動のリアルさゆえに“ドライビング・シミュレーター”としてクルマ好きたちをも熱狂させている。さらには、ゲーマー出身のプロレーサーも生み出しており、今まさに本作品はカーライフを豊かにする重要な要素だ。その制作現場を訪ね、『グランツーリスモ(以下GT)』シリーズクリエイターで〈ポリフォニー・デジタル〉代表取締役プレジデントの山内一典さんに話を聞いた。

「私が24歳の時に最初の作品の制作を始めたのですが、当時はゲーム業界、そして自動車業界で誰も手がけていなかったリアルな物理シミュレーションに基づくドライビング・シミュレーターとしてのアプローチだったわけです。日本各地から15人のクリエイターを集めました。小さなチームで、リリースまでには5年かかりましたね」

そのリアルさは、正確な情報収集、緻密な測量、データの数値化など多岐にわたる地道な作業に基づいている。例えば、リアルなサーキットで事故が起きた場合、補修作業で生じたわずかなギャップからステアリングの挙動が違ってくる場合もある。そこまでをリアルに再現する。

©2024 Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Polyphony Digital Inc. "Gran Turismo" logos are registered trademarks or trademarks of Sony Interactive Entertainment Inc. Manufacturers, cars, names, brands and associated imagery featured in this game in some cases include trademarks and/or copyrighted materials of their respective owners. Any depiction or recreation of real-world locations, entities, businesses, or organizations is not intended to be or imply any sponsorship or endorsement of this game by such party or parties. All rights reserved.

「GTを作るうえで私が最も大事にしているのは“光”です。クルマぐらい艶があって光を反射する物体って、自然界には水面くらいしかないので、クルマの表現はいつでも光の表現の勝負だと思っています」

そのこだわり抜いた表現方法からゲームとリアルの境界線を曖昧にして“カーライフ”の一部として認識できるまでになっているGTシリーズ。さらに特筆すべきは、前作である『グランツーリスモSPORT(PS4用)』を使用しAIに新たな技術革新をもたらしたAIエージェント「グランツーリスモ・ソフィー」の存在だ。その目的とは?

「“スポーツマンシップ”というポイントを改善し続けています。具体的にはGTのトップドライバーのスポーツマンシップを走りながら学び進化し続けています」

ゲームの中では敵車となるクルマがより人間らしく走行する。結果、ドライバーたちのスキルが向上し、モータースポーツのファンが増え、カーライフを豊かにする。GTシリーズが果たす役割は大きい。最後に、山内さんに本シリーズの“使命”について尋ねた。

「過去150年の自動車の歴史をビデオゲームに動体保存するだけではなく、自動車産業や、人とクルマの関係の未来に寄り添っていきたい。クルマがどこへ向かうのか、という課題は、人類全体が決める話だと思うので」

Information

PlayStation 5/PlayStation 4用ソフト 『グランツーリスモ7』

PlayStation 5/PlayStation 4用ソフト『グランツーリスモ7』

シリーズ初となる作品が発表されてから、今年で27年を数え、アップデートをし続けるドライビング・シミュレーター。昨年は一般の観客が来場できる公式世界大会『グランツーリスモ ワールドシリーズ 2023』が開催された。開催地はアムステルダムとバルセロナ。

HP:www.gran-turismo.com/jp/

「グランツーリスモ」制作の現場〈ポリフォニー・デジタル〉を訪ねてみました。

『GT College League』の決勝戦
各コックピットに設えられた機材はもちろん最上位。国内外の大学自動車部などが一堂に会しそのスキルを競う『GT College League』の決勝戦が行われたことも。取材当日は社員がステアリングを握り、その挙動を確認している場面も。横には、大きなスペースがあり、トークイベントなどが開催されている。
ニュルブルクリンクのバー
世界を代表するテストコースとしても知られるニュルブルクリンクにあるバー〈DEVIL'S DINER〉を再現したカウンターを社内に設置。打ち合わせ後、飲みながら話すことも。壁にはワールドシリーズの歴代のチャンピオンの名前を掲げている。お品書きはゲーム内に現れる「メニューブック」と同じデザイン。
ワールドシリーズ優勝者が手にするトロフィー
ワールドシリーズ優勝者が手にするトロフィー。モチーフは、ロンドン〈テート・モダン〉 に展示されるウンベルト・ボッチョーニの「空間における連続性の唯一の形態」。“進化” は素晴らしいが、その成果が危うい未来を招く可能性があることを示唆する。山内さんが本作品をトロフィーのモチーフに採用。
『nature』誌の表紙を飾ったグランツーリスモ
スポーツマンシップをAIに学ばせるという「グランツーリスモ・ソフィー」の試みが英科学誌『nature』に取り上げられた時の表紙をロビーに額装して展示(写真のポスター・左)。また、『グランツーリスモ』シリーズから生まれたストーリーを昨年映画化した時の作品のポスターも並べて飾られている。
リアルを追求した『グランツーリスモ』シリーズ。最初の作品に着手した当初、自動車メーカーもクルマの設計図にCADを使用しておらず、ディテールをデータ化するために模型を作ったり、クルマのパーツを取り寄せたりして制作に役立てた。
グランツーリスモの制作で集められたサンプル
当時の模型や、ボディのカラーサンプルなどをライブラリーに保管。

profile

山内一典

山内一典

やまうち・かずのり/1967年生まれ。日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員を務めたことも。「私にとってクルマとは、美しい工業製品であり、人間の能力を拡張する存在です」

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