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まひろの不倫・懐妊は『源氏物語』の伏線なのか?【光る君へ】

  • 2024.7.17

平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。7月14日放送の第27回「宿縁の命」では、まひろと道長が石山寺で再会したことが思わぬ事態に発展。しかしそれは、後年『源氏物語』の重要な糧になることを、予感させるものだった(以下、ネタバレあり)。

『光る君へ』第27回より、道長との子を出産したまひろ(吉高由里子)(C)NHK

■ すべてを悟っていた宣孝は…第27回のあらすじ

石山寺で藤原道長(柄本佑)と再会したまひろは、近況などを語り合うちに思いが募り、一夜を過ごしてしまう。そこからほどなくして、夫・藤原宣孝(佐々木蔵之介)が久々にまひろの元を訪れ、以前のように楽しく会話を交わせたことで復縁。やがてまひろの懐妊が明らかになるが、宣孝の足が遠のいて、石山寺に行った頃にできた子どもであることがわかり、まひろは宣孝に別れを告げる。

『光る君へ』第27回より、宣孝(佐々木蔵之介)に妊娠していることを明かすまひろ(吉高由里子)(C)NHK

しかし、てっきり自分の子どもと思って喜んだと思われた宣孝は「そなたの産む子は、誰の子でもわしの子だ。一緒に育てよう」と、自分の子ではないと知っていたことを告げる。さらに、相手が道長であることにもうすうす気づき、まひろが「不実な女」であることを承知で結婚したのは、そういうことだとも明かした。宣孝のはからいを受け入れたまひろは、その年の暮れに無事に娘を出産したのだった。

■ どん底の評価を一転させた宣孝だが…健康が心配すぎる

とりあえずこの27回を観終わったあとは「大丈夫? みんな息してる?」という心境になった人が多かっただろう。まひろと道長の突然の再会にはじまり、久々に肌を重ねたかと思うと、まさか道長の子どもまで身ごもってしまうとは・・・たしかにSNSをリアルタイムで追っていると「あああああ」とか「え? え?」とか、あまりのショックに語彙力が完全に破壊されたようなコメントが相次いでいた。

『光る君へ』第27回より、まひろ(吉高由里子)に「そなたの産む子は、誰の子でもわしの子だ」と告げる宣孝(佐々木蔵之介)(C)NHK

さらにその衝撃に衝撃を重ねたのが、これまでスパダリ扱いされたのに、前回でその株をどん底まで下げてしまった藤原宣孝の、はかりしれない懐の深さだった。妻を他人に寝取られたうえに子どもまでできるとか、自分の方から離縁してもまったくおかしくない状況なのにも関わらず「一緒に育てよう」と宣言。

もしかしたら宣孝は、まひろの「忘れえぬ人」が最高権力者・道長というのがわかった時点で、もしものときは自分が守る(そしてちゃっかり出世に利用する)覚悟で、まひろと結婚したのかもしれない。だとしたら、あまりにも男前が過ぎるではないか。

実際にSNSを見ても「なんかもう、すごいぞ宣孝殿」「うぜぇって言って、ごめんね?」「デリカシーないけど、心はめっちゃ広い」などの褒め言葉と、前回ディスったことを詫びる声が交錯した。

『光る君へ』第27回より、まひろ(吉高由里子)の隣で眠る宣孝(佐々木蔵之介)(C)NHK

このまままひろと末永く子育てをしてもらいたいけど、一つ気になるのが、明らかに「睡眠時無呼吸症候群」と思われる症状が出ていたこと。一刻も早く診察を・・・と言いたいけど、多分平安時代じゃあ直しようがない病気。最悪のときが来るのが、少しでも遅くなりますようにと祈るしかない。

■ 次々に仕掛けられていた『源氏物語』に至る伏線

さてそんな風に、我々現代人に「平安時代の恋愛倫理観パねえ」とため息をつかせるような展開が相次いだ27回だったけど、『源氏物語』に至る大きな伏線が次々に仕掛けられていった回でもあった。まず最初に、まひろが石山寺で道長と再会したときに、「なにか宋の言葉をしゃべって」と道長に言われ、まひろが「越前には美しい紙があり、あの紙に歌や物語を書いてみたい」と応えたことだ。

『光る君へ』第27回より、道長(柄本佑)と話すまひろ(吉高由里子)(C)NHK

当時越前和紙は非常に高価で、長編の物語を書き記そうとしたら、それだけで莫大な出費となる。紫式部が『源氏物語』を連載しつづけることができたのは、彼女自身の才能や情熱もあるが、なによりも藤原道長がスポンサーとなって、紙を送っていたのが大きいのだ。

清少納言(ファーストサマーウイカ)の『枕草子』執筆もまた、主人の藤原定子(高畑充希)から紙をたまわったのがきっかけだったように、本当に紙は大事。ここでまひろが何気なく話したことが、道長のスポンサー就任フラグになるとは、なんとも周到だ。

石山寺でまひろ(吉高由里子)と再会した藤原道長(柄本佑)(C)NHK

そしてまひろが道長の、道ならぬ子を宿すのは、間違いなく『源氏物語』の光源氏と藤壺のエピソードにつながるはず。これは『源氏物語』を一回でも読んだことがある人なら、すぐピンと来ただろう。しかしそこで藤原宣孝が、光源氏の父・桐壷帝や、光源氏自身のように、自分の妻が不実の子を産んでも、そのまま素知らぬふりをして育てていく役割を負うことになるとは、思ってもいなかった。

紫式部と藤原宣孝の関係は、さほど仲睦まじいものではなかったという説が、わりと有力視されている。しかし『光る君へ』の宣孝は、もしこの推測が正しいのであれば、『源氏物語』にその面影を記されることになる。まひろにとって本当に大切な存在となった宣孝だが、幸せの光が強ければ強いほど、叩き落とす闇も深いのが脚本・大石静の得意技なわけで・・・そのXデーが非常に恐ろしくもあり、楽しみでもある。

『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。7月21日放送の第28回『一帝二后』では、道長との子どもを産んだまひろの子育てと、道長が長女・彰子(見上愛)を中宮にして「一帝二后」体制を実現しようとする姿が描かれる。

文/吉永美和子

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