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【初夏を告げる川魚】鮎(アユ)の栄養ポイントは?天然と養殖で違いはある?栄養士ライターが解説

  • 2024.7.13

アユは天然もの・養殖もので栄養に違いがある?

アユのイメージ
アユのイメージ

清らかな川の水を好み、姿・味・香りが良いことから「清流の女王」とも称される鮎(アユ)。6月ごろから各地で天然の鮎釣りが解禁となり、本格的な旬を迎えます。実は、天然もの・養殖もので栄養に違いがあることをご存じでしょうか。

食べているエサや環境の違いが影響

▲生息する川の環境で味わいが異なる鮎(アユ)
▲生息する川の環境で味わいが異なる鮎(アユ)

天然のアユは川底や岩についた藻(も)やプランクトンを食べて育ちます。水質の良い河川に生息する鮎はスイカのような香りがすることから、別名「香魚(こうぎょ)」とも呼ばれています。一方で河川に由来する寄生虫がいる可能性も。養殖のアユは水質コントロールした環境で配合飼料などで育てることが多く、寄生虫の心配が少ない反面、天然の鮎と比べると香りが乏しいと言われています。こうした環境やエサの違いが栄養にも少なからず影響しています。

天然アユは脂質が控えめでビタミンB12が多い

天然アユは運動量が多く、脂質が控えめ。たんぱく質、カルシウム、鉄は養殖アユよりも多い特徴があります。特に多いのがビタミンB12。葉酸と協働して赤血球をつくり貧血を予防することから別名「造血ビタミン」「赤いビタミン」と呼ばれ、不足すると悪性貧血を招くことも。傷ついた神経細胞を修復する働きもあります。ビタミンB12は野菜などの植物性食品にはほぼ含まれていないため、意識して摂ることが大切。アユ1尾で、12歳以上の男女が1日に必要な推奨量(2.4μg)を十分に補うことができます(※1)。さらに、天然アユには内臓にもビタミンB12をはじめ、鉄・銅・亜鉛・マンガンなどのミネラルが多く含まれています。(※1)厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020年版)』より、アユ1尾の正味重量40gとした場合(参考:奥嶋佐知子監修『食品の栄養とカロリー事典 第3版』女子栄養出版部)

養殖アユは質の良い脂肪酸とビタミンA・D・Eが豊富

▲養殖アユ。お腹がぽってりとし、頭の後ろが盛り上がっていることが多いです。鮮度のいいものは体色が美しく、エラが鮮やかな紅色をしています。
▲養殖アユ。お腹がぽってりとし、頭の後ろが盛り上がっていることが多いです。鮮度のいいものは体色が美しく、エラが鮮やかな紅色をしています。

養殖アユは、脂のノリが特徴。天然アユと比較すると脂質が多く、エネルギーとコレステロールは高め。ですが、良質な脂肪酸が含まれています。私たちの体内で重要なホルモンの材料となるオメガ3系(DHA、EPA、α-リノレン酸など)、血糖値やコレステロール値を下げる働きが期待されているオメガ6系(リノール酸など)です。この中で、α-リノレン酸とリノール酸は体内で合成できないため食べ物から摂取する必要がある必須脂肪酸です(リノール酸からつくられるEPAやDHAは体内で合成できますが広義の必須脂肪酸に含めることがあります)。養殖アユは貴重な必須脂肪酸の栄養源と言えそうです。

▲丸ごと食べられる稚鮎。天ぷら、から揚げ、南蛮漬けにすると、おいしいです!
▲丸ごと食べられる稚鮎。天ぷら、から揚げ、南蛮漬けにすると、おいしいです!

また、生活習慣病を引き起こす原因とされる活性酸素を除去し、皮膚や目の健康を保つビタミンA(レチノール)、細胞の老化を予防するビタミンE、カルシウムの吸収を促して骨や筋肉を守るビタミンDは、養殖アユに多い栄養素です。特に、養殖アユの内臓にはウナギの肝に匹敵するビタミンA(レチノール)が含まれています(※2)。(※2)『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年版』に記載の「あゆ 養殖 内臓(生)」「うなぎ きも(生)」のレチノール活性当量を比較

まとめ

▲夏の風物詩でもあるアユの塩焼き。
▲夏の風物詩でもあるアユの塩焼き。

以上のことから、アユの塩焼きや天ぷらを食べる機会に恵まれたら天然アユ・養殖アユを問わず、内臓ごといただくことをおすすめします(ただし、よく火が通ったものに限ります)。出始めの頃に見かける稚鮎(アユの幼魚)は、から揚げや南蛮漬けにすると内臓も骨も食べられ、アユの栄養を余すことなくいただけておすすめです。スーパーなどの店頭で見かける鮎のほとんどは養殖もので天然の鮎を見かけることは滅多にありませんが、週末や夏休みなどに清流が近いスポットへお出かけする機会があれば、ぜひ天然の鮎も味わってみてください。

※参考文献:杉田浩一ほか監修『新版 日本食品大事典』医歯薬出版株式会社,2017、久保田紀久枝・森光康次郎編『食品学-食品成分と機能性-』東京化学同人,2017、藤原昌高著『からだにおいしい 魚の便利帳』高橋書店,2010、上西一弘ほか監修『健やかな毎日のための栄養大全』NHK出版,2022、レジア編『日本の食材図鑑』新星出版社,2018

(LASISA編集部)

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