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音楽も笑いも、グルーヴが必要だ。ランジャタイとgroup_inou、アバンギャルドに突き進む2組の初対談

  • 2024.7.13
ランジャタイとgroup_inou

ポップかつ破壊的な楽曲を生み出すgroup_inouと、その独創性から「イリュージョン漫才」と称されるランジャタイ。音楽とお笑い、全く異なる領域でひときわ異彩を放つ2組の対談が実現。出会いについてから、ネタ・楽曲の制作やライブで生まれるグルーヴ、共通の影響源に至るまで語り尽くしてもらった。

imai

初めて2人を生で見たのは、2016年の『倉本美津留の太鼓判』ライブで。笑い飯やナイツみたいなガチガチの強い人たちに囲まれて急に知らない人たちが出てきたから、どんなコンビなんだろう?と思ってたんだけど、人生で見たことないぐらいウケてて、本当に腹ちぎれるぐらい笑ったんだよね。劇場で爆発してたのが衝撃的だったし、一発でファンになっちゃった。それから何年も後に、国ちゃんが急にDMをくれて。イノウの曲のスクリーンショットと一緒に「好きです」って送ってくれた。

国崎和也

友達から『HEART』を教えてもらって聴いたら、めっちゃ良くて。良すぎてDMしてしまった!

imai

俺、あのライブ観た後に好きになりすぎてランジャタイを追いまくってたから、つまんないやつだと思われたくなくて、DMの返信の文章を半日ぐらい考えちゃった(笑)。考えに考えて、結局普通に返しちゃったけど……。その後共通の知り合いを通じてご飯に行くようになったよね。

国崎

group_inouの楽曲は、直感ですごくいい!ってなった。なんていうんだろう、僕は昔からゲームが大好きなんだけど、子供のときにやっていたゲームとかを思い出すような……新しさもありつつ、昔の記憶が呼び起こされる感覚もあるんだよね。アートワークも含めて全部いいな!って思う。

伊藤幸司

わかる。曲がとにかくかっこいい。羽が生えて飛んでいくような感じになる!

cp

そんなふうに言ってもらえて嬉しいなぁ。

90年代サブカル漫画が共通のバイブル

ランジャタイとgroup_inou
ランジャタイとgroup_inou
ランジャタイとgroup_inou

imai

ランジャタイのネタを初めて見たときに、ネタの雰囲気から、お互いに好きなものが近いんだろうなって感じたんだよね。国ちゃんが長尾謙一郎さんのTシャツを着ていたのを見て、俺らも長尾さんのファンだから親近感が湧いた!

国崎

僕らも長尾さんの漫画は大好き。2人は長尾さんに会ったことがあるんだもんね?

imai

コメントもらったり、『ORIENTATION』のMV作ってもらったりしたから、仲良くさせてもらってる。

伊藤

羨ましい……。

imai

『おしゃれ手帖』が連載されているときとか、最新話が出る日は朝コンビニで立ち読みして、ヤバい回だったらすぐcpに「今週の話やばいよ!」ってメールしてた(笑)。好きすぎて。

国崎

僕は『ギャラクシー銀座』で知ったんだけど、衝撃だったなぁ。スーパーペガサスっていうおじいちゃんとおばあちゃんの漫才コンビが出てきて、「金閣寺か!」ってツッコミいれたらそのおじいちゃんが本当の金閣寺になったのが超面白くて(笑)。設定がめちゃくちゃすぎる!

imai

わかるなぁ。ちょっと暗い雰囲気で、デヴィッド・リンチ的な雰囲気もいいよね。長尾さんって当時は顔出しもしてないからか、謎めいた存在感があったよね。初めて長尾さんと会った時、下北沢の暗いバーみたいなところに連れて行かれて、「漫画の質問、何も答えないから」ってかまされてビビってた。その後死ぬほど喋ってくれたけど(笑)。

国崎

いい人だね(笑)。

imai

俺らのことを気に入ってくれて、その後何回か飲みに行ったりした。でも、漫画のイメージとかなり違ったし、当時は顔出ししてなかったから「本当にこの人が長尾さんなのか?」ってわからなくなってきて。そんなときに、急に長尾さんから「描こうと思ってる漫画があるんだけど相談していい?」って言われて聞いた内容の漫画が、数週間後に「週刊スピリッツ」に載ってて、やっぱり本人だ!って納得した(笑)。

国崎

すごい体験だなぁ!羨ましい。そういえば、伊藤はサイン会行ってたよね?

伊藤

うん、『クリームソーダシティ』のサイン会に。僕の前に綺麗な女性が並んでて、その方の時はメインキャラの竹ちゃんをめっちゃ丁寧に描いてたのに、僕の番のときはサッとヤシの木みたいなのを描かれたのを覚えてる……。

国崎

気持ちの入り方が全然違う(笑)。

cp

長尾さんもそうだけど、僕とimaiは共通で好きな漫画が多くて仲良くなったんだよね。

imai

そうそう。2人で最初に遊んだときは、『殺し屋1』がちょうど連載してて、その話で盛り上がった記憶がある。

国崎

『殺し屋1』、僕も大好き!山本英夫さんの漫画は結構読んでるなぁ。『ホムンクルス』『のぞき屋』もめちゃくちゃ面白い!

imai

わかる。漫☆画太郎さんも好きだなぁ。すぐ打ち切られちゃうから(笑)。『サラリーマン金太郎』を文字った漫画を、『サラリーマン金太郎』が連載している雑誌でやっちゃうのヤバかった!内容がひどすぎて2話ぐらいで打ち切りになってさ。

cp

あれは早かった(笑)。ああいう姿勢、いいよね!駆け抜けていく感じ。

国崎

『つっぱり桃太郎』っていう漫画を連載してたとき、仲間のキジを焼いて食って、打ち切りになったのもヤバかった(笑)。当時高校生だったんだけど、子供ながらにヤバいなこの漫画って思ったのを覚えてる。

imai

リアルタイムで『珍遊記』を読んでたけど、衝撃的だった。「週刊少年ジャンプ」でドラゴンボールが連載してるのに、ドラゴンボールのパロディやったりとかさ(笑)。

国崎

漫☆画太郎先生の漫画って、8割ぐらい読んで「金返せ!」ってなる(笑)。毎回階段を転がり落ちて、トラックにはねられて、爆発して終わり。展開が全部同じ!ウンザリする(笑)。でも、それが最高なんだよね。

伊藤

絵も描いてもらってますもんね?

国崎

そうなんです。宮﨑駿さんが僕の首を絞めてるっていう絵を(笑)。

cp

すごいなそれ(笑)。

国崎

僕が昔描いた本に絵を描いてもらったんだけど、そのときにくれたんだよね。昔、漫☆画太郎先生がジブリを受けたら落とされて、恨みを持っているという噂があって(笑)。前に画集を出されているんですけど、宮﨑駿さんと画太郎先生が戦ってて、ずっと宮﨑駿さんがプロレス技かけられてボコボコにされてるっていう絵があった(笑)。

imai

前に展示でもそういう絵があったよね!?あれってそういうことだったんだ!

ランジャタイとgroup_inou

cp

好きな漫画家がこんなに共通しているのも面白いね。お互い、漫画からの影響はかなり受けてそうな気がする。

国崎

そうだね。漫☆画太郎先生の同じことを繰り返すスタイルは、結構影響受けてるかなと!

imai

たしかにランジャタイのネタからも、影響を感じるかも!俺らも、長尾さんの漫画の影響はかなりデカいと思う。長尾さんって、タナカカツキさんや天久聖一さん、しりあがり寿さんみたいな90年代の偉大なギャク漫画家の人たちを全員超えてやろうっていう気持ちで『おしゃれ手帖』を描いたらしくて。俺とcpは、マジで気合をいれたいときは必ず『おしゃれ手帖』を全巻読み返してた。「これぐらいやらなきゃダメだよな!」って、背筋が伸びる。そのくらい、うちらのバイブルだよね。

cp

そうだね。全部塗り替えてやろう!みたいな気合があるのってかっこいいよなぁ。

imai

憧れるよね。俺らは逆にそういう感じはないのかもしれない。新しいものをつくりたい!とかはあんまり考えてなくて、結果的にこのスタイルになっているというか。自分たちでいい曲だと思えたらそれで満足っていう感じかも。オリジナリティのこととか、あんまり考えたことないしなぁ……。

国崎

確かに僕らも同じようなスタンスかも。自分たちが面白いと思えたらそれでいいというか。こないだ、昔のネタをやるライブがあって、オープニングで2015年ぐらいの僕らのネタが流れたんだけど、何にも変わってなくて(笑)。びっくりしちゃった!

imai

漫☆画太郎先生みたいな展開だ(笑)。最高じゃん!

伊藤

本当に何も変わってなかった(笑)。デカい声で、ずっとはしゃいでるっていう。

国崎

最近、お客さんにタモリさんの拍手締めの流れで5分くらい拍手させるっていうのをやって、めっちゃ楽しくて。クオリティだけでいうとめちゃくちゃ下がってる(笑)。

伊藤

お客さんもウンザリしてる。

予測不能へ突っ込め!

ランジャタイとgroup_inou

imai

ランジャタイって、音楽でいうと音源よりライブが凄いバンドみたいな感じがする。ライブでこそ輝くというか。『弓矢』のネタをテレビで観て、劇場で観たときほどウケてないかも?って思ったことがあって。お笑いは配信でもある程度楽しめる感覚があるけど、音楽はいいスピーカーでデカい音を聴くという体験が大事だから、なかなか難しい。ランジャタイも音楽の方に近いのかなと思った。

国崎

その答えはもう出ていて、実は僕たちのネタって顔芸なんですよ(笑)。顔をどアップで抜いてもらわないといけないかも。あとはテレビだと映ってない所作とかもあるからかな。ライブ感の話でいうと、以前テレビで『弓矢』のネタをやったら、信じられないほどスベリ散らかして(笑)。そのとき、普通ならあり得ないんですけど「何やってるんだよ!」「つまんねぇぞ!」って芸人からガヤが飛んできてさ。ネタ中にだよ?(笑)。ありえないよね。そこからどんどんガヤがすごいことになってさ。そのグルーヴ感がめちゃくちゃ面白かったなぁ。その場の空気と、誰かの協力があって完成する感じ。

imai

お笑いのライブって、爆笑が近くで発生していると一気に転がっていく感じが面白いよね。現場のグルーヴでどんどん増幅していく。それでいうと、group_inouは2人で話したときの盛り上がるノリがそのまま音楽になってる感覚なんだよね。

cp

活動を再開したのも、昨年結成20周年だったことに気づいて、せっかくだから何か音源を出そうってなって作り始めて、リリースしたらおのずとライブもやろうかとなって。

imai

全然意図的ではなくて。8年ぐらい経って、なぜか自然な流れで再開した(笑)。そんな感じだから、2人のテンポがハマったときはめちゃくちゃ速い。『HAPPENING』はトラックが1日でできて、「俺、すげえな!」って思いながら得意げにcpに送ったら半日で帰ってきた(笑)。実質2日くらいで作ったんだよね。

cp

活動というよりかは、遊びの延長って感じはあるかも。僕たち、ツアー中の移動の車内でずっとしゃべってて。そうすると、運転手の人が長時間の運転で脳がバグって、ぽろっと面白い言葉を言ったりする(笑)。僕らの周りにいるスタッフの人って、みんながハマるワードを言ってくれる人が多くて、そういう会話の中で生まれた言葉をメモして歌詞に生かすことは多いかな。

国崎

凄いなぁ。僕らはネタを作るときは基本動きから入るから、メモとかはあんまりしないかも。

imai

俺は、お客さんが目の前でワーッて沸いているのをイメージして作ってる。お客さんのリアクションが音楽を作る原動力になってるかな。

国崎

僕らは真逆で、とにかく台なしになるのが大好き。昔、地元の営業で母親が親戚をたくさん呼んでくれたとき、バキバキに尖ったネタをやり続けて、とびきりスベッたんだよね(笑)。母親は「もう二度と行かない」って言ってた。そういうのが好き。

imai

それは誰も共感できないよ(笑)。

cp

でも、ちょっとわかる。予測できないことに突っ込んでいくのがいい(笑)。それをやり続けて、どんどん厚みが増していく感じは強いなと思う。

国崎

同じネタでもめっちゃウケたりめっちゃスベッたりするから、いまだに全く読めないのがお笑いの面白いところだなと!

imai

ランジャタイは浜ちゃんみたいな先輩をネタに入れるのがすごいよね。売れてからテレビに出るようになると「これはしちゃいけないだろう」みたいなのが徐々にわかるようになってきて、周りの顔色見てやらなくなっちゃうってよくあると思うんだけど、それをケラケラ笑いながら平気でやっちゃうところがかっこいい!固有名詞とか出てくるのも、めちゃくちゃワクワクするんだよね。タブーを軽々乗り越えちゃう感じ、刺激される。

国崎

ついつい言葉が出ちゃうんだよね……。オフィス北野の最後の事務所ライブで、取材陣に「武さんの名前は絶対に出すな」「T.Nゴンについては絶対に触れるな」って言われて。「わかりました!」って言ったんだけど。本番で『T.Nゴン Nの秘密』っていう漫才をやったら、大爆笑だった(笑)。

imai

忠告ガン無視するの、ヤバいよ(笑)。

伊藤

リハでは違う漫才して誤魔化して。

国崎

ギター漫談をするグレート義太夫さんが最後に歌うはずだった『浅草キッド』を、僕らが先に漫才中に歌ったんですよ。そしたら義太夫さんが急遽ネタ変えて『ラヴ・イズ・オーヴァー』歌ってて(笑)。あれは可哀想なことしたなぁ。

cp

肝が据わりすぎている(笑)。

imai

バラエティを見てても、国ちゃんが怖いものナシって感じだよね!伊藤ちゃんは隣で国ちゃんがあれをやってるとき、どういう気持ちなの?(笑)。

伊藤

やっちゃえやっちゃえ!って感じ。特に焦ったりとかはないです。

cp

すごい(笑)。

国崎

芸人の強みは、「芸人だから」って言えば何でも許してもらえること。だから芸人をやってる。

imai

いいなぁ。ミュージシャンのそういう特権、あんまり思いつかないなぁ……。

国崎

音楽はやっぱり国境を越えるんじゃない?それが凄いよね、羨ましい。

imai

めちゃくちゃいいこと言ったね!俺が言ったことにしておいてください(笑)。

ランジャタイとgroup_inou

profile

group_inou

ぐるーぷ・いのう/自身のレーベルを軸に活動する音楽ユニット。imaiの軽快なエレクトロニックサウンドとcpの独創的なワードセンスのラップで唯一無二の音楽性を持つ。2023年11月に唐突新曲を発表、2024年の元日に唐突ミニアルバム『HAPPY』をリリースした。

profile

ランジャタイ

国崎和也と伊藤幸司によるお笑いコンビ。グレープカンパニー所属。漫才やコントのみならず平場でも、とにかく何をしでかすかわからない危なっかしいスタイルや、様々な奇行で知られる。「M-1グランプリ」に結成時から毎年欠かさず出場し、2021年に決勝戦初進出を果たす。

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