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【口臭の原因と対策】「歯を磨く」は意味ナシ!?正しい解決法を専門医が解説

  • 2024.7.10
教えてくれたのは……

TOKYO BREATH CLINIC

上田恵子院長

日本口臭学会認定医。2002年に開業した「新浦安デンタルクリニック」では、口臭症治療の分野で2011年より5年連続全国1位の実績を上げ、2017年に銀座に女性のための口臭症専門クリニック「東京ブレスクリニック」を開業。全国各地から訪れる患者一人ひとりと真摯に向き合い、治療実績の高さに定評がある。雑誌やWEBなどでの記事監修も多数。

【勘違い口臭ケア】やりがちだけど効果は薄い4選

上田先生いわく、「日本人は息のマナーレベルが低い」。それって、あまり意味のないお手入れに注力していたり、ケアしているつもりが実は口臭を悪化させていたりすることにも原因があるかもしれません。目からウロコな“あるある”勘違いをご紹介!

<1>口臭が気になったら歯を磨く

上田恵子院長

患者さんなどに『口臭が気になったときに何をしますか?』と質問したとき、『歯を磨く』と答える人がほとんど。そもそも歯磨きの目的は、虫歯や歯周病などの病気予防ですが、口臭の原因が歯にある、だから歯を磨くと思っている人は本当に多いです。でも、歯は実際にはカチンコチンの塊で、歯科医がダイヤモンドを使って削るほど硬い。カチンコチンの塊である歯そのものから、ニオイが出ることはありません。歯の表面は唾液で覆われていて、口臭が出るときは唾液がネバついてニオっている可能性が高い。水でゆすぐか、水を飲むなどして、唾液を薄めるのがいいでしょう。


<2>口臭対策にスッキリ系の歯磨き粉を使う

上田恵子院長

爽快感があってスッキリする、泡立ちのいい歯磨き粉が大好き、という人も多いのではないでしょうか。ただ、舌の表面には『舌乳頭(ぜつにゅうとう)』という突起状のものがたくさん付いていて、泡の成分である合成界面活性剤はそれを剥がしてしまう可能性があります。その結果、舌の表面や口内がガサガサに乾燥することも。口の中が乾くとニオイが悪化しやすくなるので、うるおいを守るという意味でも、泡立たず保湿成分配合の歯磨き粉がおすすめです。花粉症などを患っていて、粘膜系がデリケートな人は特に要注意。成分が刺激になり、口内の粘膜がより剥がれやすくなってしまいます。


先生のクリニックで扱っているのはこれ!

エクセレントブレス ブレスコントロール デンタルペーストBC
エクセレントブレス ブレスコントロール デンタルペーストBC

90g / ¥1650(アルファネット)

口臭、歯周病、虫歯の原因環境となる口腔内のpHを調節する、漢方系成分配合の歯磨き粉。天然ミントのやわらかな風味で、泡立たないタイプ。

<3>「舌磨き」を一生懸命行う

上田恵子院長

舌は粘膜であり、皮膚よりもさらに繊細です。口内は神経分布が少なく痛みを感じにくいため、舌もゴシゴシとこすることができてしまいますが、必死に磨くほど舌を傷つけてしまいます。“舌が白い=すべて汚れ”だと思っていませんか? 健康な人は本来、舌がうっすら白いもの。真っ赤な状態はキレイなのではなく、舌表面の突起物である『舌乳頭』が剥がれ落ちて、ドライマウスを引き起こしている状態です。
通常、舌表面のデコボコのへこみ部分には唾液が溜まっています。舌磨きをやり過ぎると、この唾液を溜めるスポットも取り除いてしまうので、舌表面が乾燥します。そして乾くと防御反応で舌乳頭が毛羽立って、分厚く白くなるという悪循環に。肌と同じで、角化してガサガサになるイメージです。口の中が乾燥するほど、より口臭を発してしまうので、根本から解決しないとキリがない。うるおいを保つためにも、唾液をきちんと分泌できることが重要です。


舌に付着する細菌のかたまり“舌苔(ぜったい)”を頑張って取り除こうとするよりも、まずは口腔内のうるおいを守ること! 唾液がきちんと分泌されていれば口臭対策にもなるので「正しい口臭ケア」をチェックして。

<4>食後すぐに歯を磨く

上田恵子院長

これを正しい習慣ととらえている人も多いと思いますが、歯磨きは起床後と寝る前だけにして、食事直後はフロスや歯間ブラシで食べカスを取って水でゆすぐだけで十分。実は、一日の中で口の中の細菌がもっとも少ないのは食後なんです。食事をすると舌を動かすのでサラサラとした良質な唾液が分泌されやすく、口内がうるおった状態に。口臭が出にくいのは、良質なサラサラ唾液が口内で循環しているとき。なので、これを歯磨きで取り除いてしまうのはもったいないんです。また、歯磨き粉を使ってゴシゴシこすると口内が乾燥しやすくなり、口臭を招く原因にも。ブラッシング後は嫌なニオイのもととなるガスがかえって増えるという、日本口臭学会の報告もあるほどです。


【口臭の基本知識】正しく知れば、最適なケアが可能に!

勘違いケアに陥りやすいのは、口臭がなぜ起こるのか、なんとなくの印象でしか理解できていないから。口臭が起こるメカニズムや対処法を、詳しくレクチャーしていきます!

口臭はなぜ発生する?

上田恵子院長

口臭は、口の中の細菌が、唾液や粘膜・食べカスなどをタンパク源にして、酵素を出しながら分解していく過程で発生します。これが最終的に『揮発性硫化物(きはつせいりゅうかぶつ)』と呼ばれるガスになり、主に口からニオイとなって出てきます。“揮発性”、つまり液体が蒸発して気体に変化している状態。“口の中の液体=唾液や少量の粘液”がニオイのもとになっているということです。
口臭源である唾液が濁っていると嫌なニオイが出るし、唾液量が少ないとどうしてもネバつきます。逆に、サラサラ唾液がきちんと出て循環していれば、それほどにおいません。歯周病や内科的な疾患など病気由来の口臭もありますが、これは病そのものを治せばニオイも自然と消えていきます。日常的な口臭のほとんどは器質的な異常がないにもかかわらず誰にでも起こる生理的口臭が強く出た状態で、お口からニオイとなって出てくる揮発性硫化物の発生です。


口臭が「ドブ臭いニオイ」と言われる理由は?

上田恵子院長

揮発性硫化物は、温泉地のような、温めた卵の黄身のような、“硫黄臭さ”を放つガスです。それが『ドブっぽい』、『排水溝っぽい』と言われる所以。歯も舌も表面は唾液で覆われているので、ドブっぽいニオイを放つときは、唾液そのものがネバネバして汚れているということ。その唾液が蒸発すると、嫌な口臭を発生させてしまいます。


口臭がニオイやすいのはどんなとき?

上田恵子院長

一日の中で、もっとも口内の細菌が多いのは寝起きのタイミング。寝ている間は舌の動きが停止するため唾液が出にくく、悪玉菌が飽和状態に。誰でもニオイが出ます。また、唾液の分泌は自律神経が支配しています。交感神経が強く働くと、唾液が出なかったりネバつきやすくなったりするため、緊張やストレスを感じているときも口内が乾いて口臭が起こりやすいタイミング。さらに、奥歯をギュッと噛み締める行為も、口の中の機能が停止して酸素不足になるため、唾液が循環せずに口臭が慢性化されやすくなります。なので、パソコンやスマホを夢中で見つめているなど、一つの作業に集中しているときも注意が必要。とくに下向き作業が続くと、ノドの奥から圧迫された口臭が出てしまうので、気をつけましょう。


口臭がニオイやすいのはどんな人?

上田恵子院長

先述の通り、交感神経が優位になるほど唾液はネバネバして、焦るほど口の中は乾いていきます。そして上下の歯をギュッと噛み締めていると口臭が慢性化されやすくなるので、緊張しやすい人や怒りっぽい人、神経質な人はニオイやすい傾向があります。また、せっかちな人も口内が酸素不足に陥りやすく、口臭が起こりやすい。あとは、真面目な人も、無意識に口をグッと閉じて作業に取り組んだりするので、ニオイやすいと言えるでしょう。虫歯がある人や歯垢が溜まっている人は間違いなく口臭が発生するので、まずは歯科で定期的に検査を受けることが大前提です。


<こんな人も要注意!>

  • 朝食を食べない
  • 水をあまり飲まない
  • 人と喋らない・ボソボソと話す
  • 表情を動かさない
上田恵子院長

口臭を気にしている人の中には、朝食を抜く人がとても多いですが、朝から唾液が出やすい環境をつくるためにも食事は必須。咀嚼(そしゃく)しないとサラサラ唾液は出にくくなるうえに、口まわりの筋肉も衰えていきます。また、水をあまり飲まないと口内が乾いて唾液もネバつきやすくなるため、口臭が起こりやすい状態に。しゃべらない人や話すときにボソボソ話す人、無表情な人は、口があまり動いていないので、舌の動きも唾液の循環も止まりやすい。おしゃべりすることも、口臭ケアにひと役買ってくれているんですよ。


お口のプロが教える【正しい口臭ケア】

ニオイを招く原因である細菌や揮発性硫化物を増やさないためには、「唾液をきちんと出すこと」、「口の中を乾燥させないこと」、そして「舌の動きを止めないこと」が重要。日常の中で簡単にできる対策を今すぐチェック!

起床後はまずうがいをして歯磨き

上田恵子院長

寝る前に丁寧に歯を磨いて、できるだけ汚れを取り除いておくことが必須ですが、それでも寝ている間に菌は増えます。それを、朝起きたときに飲み込んではいけません。まずうがいをして吐き出してから、歯をしっかり磨くことが大事。そこからお水を一杯飲んで、朝食、水でゆすぐという流れを一日の始まりのルーティンに。食事する際、よく噛むこともポイントです。


唾液がネバついたら水で薄める

上田恵子院長

日中、口臭が気になったときは、水を飲むのが第一。乾燥した口内をうるおして、ネバついた唾液も薄めてくれます。殺菌作用のある緑茶は、菌そのものには効果的かもしれませんが、飲み過ぎると元々のうるおす力が低下し、口の中がより乾燥してしまうことがあるので、お水がベストです。


“ら”の舌動きでサラサラ唾液の分泌を促す

上田恵子院長

“ら”と言うと、舌が自然と動いて丸まります。声に出さなくてもいいので、心の中で“ら、ら、ら”と唱えながら、笑顔をつくる習慣をつけましょう。唾液の分泌が促されるので、お水が飲めない状況のときにも◎。口臭解消は、いかにサラサラ唾液を分泌させて、自浄作用能力を高めるかがカギに。日頃からキレイな唾液を循環させることが大切です。


“口元の正しい状態”をキープする

上田恵子院長

食いしばっていたり、上下の歯をグッと噛み締めたりし続けていると口内は密室状態に。ずっと閉じた口をパッと開くと、こもっていたニオイがもわっと出てきます。口呼吸は避けた方がいいですが、適度に口内の空気を流通させることも大事。


そのために見直したいのが“普段の口元の状態”です!

上田恵子院長

軽く口を閉じて正面を向いて力を抜くと、通常は、上下の奥歯にほんの少しだけ隙間が生まれます。常にキープするのは難しいですが、日中はできるだけこの状態を意識しましょう。このとき、上の歯の根元付近(上の歯の根元よりも5mm~1cmほど内側のところにある軽いふくらみスポット)に舌先を軽く当てること。また、舌を動かしたりガムを噛んだりするのも有効です。舌を動かすと、換気扇のような役割を果たしてくれますよ。


食事やおしゃべりを楽しむ

上田恵子院長

口臭の原因はガスなので、ずっとにおっているわけではありません。唾液がサラサラしていればニオイにくくなるし、ニコニコしてしゃべっていたらキレイな唾液が勝手に出てきます。話す、食べる、飲み込むといった行為は、サラサラ唾液が循環しているときにこそできること。表情がゆるんでいるとニオイは出にくくなるので、友達と楽しく話したり食事したりするというのも、質の良い唾液分泌には重要なことです。


イラスト/腹肉ツヤ子 取材・文/橋場鈴里

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