1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 紗栄子「命を助けたくて始めたけれど、いつも覚悟を決めている」【独占インタビュー】

紗栄子「命を助けたくて始めたけれど、いつも覚悟を決めている」【独占インタビュー】

  • 2024.7.21

芸能活動、会社経営、社会支援など多岐にわたる活動を続けている紗栄子が牧場の経営者に。命と向き合う日々のことや、芸能活動をつづける真意などを聞いてみました。

命を助けたくて始めたけれど、いつも覚悟を決めている

紗栄子に牧場の経営者という肩書が加わったのは2020年の夏。牧場では、ケガや病気、年齢を理由に、競走・競技などから引退した馬の他、犬も保護している

「やりたくてやっているというよりは、私がやらないといけないよねという使命感。失われそうな命が目の前にあるなら『じゃあ、どうにかしなきゃ』って。

牧場に関しては、最初はお客さんとして遊びに行っていて、こんなに素晴らしい場所があるんだと感動しました。ところが経営母体が変わるとなって、自分が関わった人や動物たちの生活が危ぶまれていると聞いてしまったら、私にできることがあるんじゃないかと思ったの。それが牧場運営に携わるきっかけでした。

第一次産業に携わったこともなければ、接客業も飲食業も未経験。牧場と動物を守るために請け負ったものの、あまりに経験値がなくて。牧場にかかわる全ての事業を理解しようと、まずは元々働いているスタッフたちを知り、私のことも理解してもらうために、みんなと一緒に働くことからスタートしました。

でも、当時の私にできることはなくて、1日目はひたすら草むしり。そこから3カ月間は毎朝草むしりをするんですけど、他にもキッチンの掃除ならできるなとか、自分ができそうなことを見つけて、それを少しずつ増やしていって今がある。全部が全部、その積み重ねなんですよね」

undefined
「被災地の牧場も訪れました。動物も人間と同じく被害を受けているので、私に何かできることがあればと常に思っています」

この4年間で、命と直面するような容赦ない瞬間に何度も立ち会ってきた。それは、これからも必ず訪れる。もちろん承知の上で紗栄子は引き受けた。タフな覚悟を持って。

「保護馬の牧場なので、お年寄りのコか若くてもケガや病気を抱えているコしかいないので、お別れも結構早いんですね。保護犬たちも同じなんですけど、それは覚悟して引き受けたんですよ。運よく天寿を全うできるコもいれば、急に亡くなってしまうコもいる。頑張ったけれどお馬さん自身がしんどくなってしまって、『もうゆっくりしようね』と安楽死を選ばなきゃいけないときもある。

馬はからだが大きいから、自分の脚で立てないと心臓のポンプだけでは全身の血液循環ができずにからだが壊死してしまったり、立とうとして倒れたときに死に至るほどの大きなケガにつながってしまうこともある。

1年前、まだ5歳の若いコが牧場にきて、リハビリを頑張っていたけれど、よくなってきた矢先に立てなくなってしまって……。自分の決断が正しかったのか、今も分からないけれど、白黒をつけずにずっと抱えて生きていくつもり。苦しくてキツくて、くじけそうになるけれど、命を預かる限りは覚悟をもって選択していかなきゃいけないなって。

ときには事情があって他で飼えなくなってしまったコを引き取るときもあって、前の飼い主さんにはいつでも会いにきてくださいと伝えます。手放す理由が金銭的な問題だけど、食肉にしないで、どうにか生かしたいからと私のもとに連絡をくれます。託されたからには、お馬さんたちが安全な場所で安心しながら、第二の人生を送ってほしい。

楽しいことばかりじゃないし、人間でも動物でも別れは辛くて悲しいもの。だからこそ一日一日を大切に生きなきゃいけないと教えてもらえる。

終わり方って、自分じゃ選べないし、いつその瞬間が訪れるか分からない。誰だって明日なんて約束されてないから、目の前のことに一生懸命生きなきゃいけないよねって痛感するんです。言葉では分かっているつもりだったけど、動物たちが身をもって教えてくれたこと」

私は何ひとつ変わってないけど、世間の声は少しずつ変わってきた

紗栄子といえば、とにもかくにも一挙一動が注目されてきた。ふと「今って、生きやすいですか?」と尋ねると、「うん、めっちゃ!」と清々しいほどの全肯定。

「年齢的なこともあるでしょうし、あとは人って、ちゃんと見てくれているんだなと思えたことも大きいですね。昔と今を比べて、やっていることの何が違うかというと規模が大きくなっただけ。やっている中身は昔から変わらないのに、前は叩かれていたけど、今はそうじゃない。だから、ある程度長く続けることが大事なんだなと気づけたし、続けていると人は認めてくれるものなんだなと。

同時に、何も変わっていないのになんでこんなに扱いが違うんだろうとイラッとしたこともありますけどね。ネット記事でも、昔は散々呼び捨てしてきたのに、今では紗栄子さん。『さんづけなんてしちゃって…….」と(笑)。

とはいえ、自分の人生で手一杯なので、気にしている暇もなければ、そこで怒ったり、落ち込んだりしてもエネルギーの無駄遣いなんですよね。ただ、信念を持ってやり続けると、その瞬間だけ見るとしんどいこともあるかもしれないけど、状況は変わっていくからあきらめないでほしい。

いつ変わるかは分からないけれど、変わることもあるんだよってことだけは今の私が伝えられること。時代も変わるし、捉えられ方も変わっていく。逆にフィットしていたものがフィットしなくなることもあるから、軽やかでいたいですね。

元々の性格もあるけれど、“囚われる”ことがあまりなくて、人の目とか声に傷つくことはあっても、『自分はこうだから』と軸は常に自分の中にあった。牧場の運営にしても、信念があるからスタッフがついてきてくれたし、応援してくれる人もいる。

新しい挑戦に怖さはまったくなくて、逆にしないほうが後悔してしまいそうで。年齢を重ねると自分も弱っていくし、自分で自分を手に枠にはめてしまって、挑戦自体が難しくなっていく。若いときは若いときで、親の目だったり、大人がそう言ってるから、みんながそうしているからと、その時々で足かせになるものは変わっていくけれど、私はそれを感じて生きてこなかったのが、ネジが外れているというか(笑)、唯一希有な部分だったのかなと思います。

私、こだわりが強そうに思われるんですけど、意外とないんですよね。必要とされた場所で、その役割を一生懸命頑張れるのが強み。だからどこに行こうが、何の仕事をしようが大丈夫というか、楽しんで生きられる自信だけはあるんです。

まさか自分が今、縁もゆかりもなかった栃木県に住民票を置くことになるとは想像もしなかったですし、人生が思いがけない方向に転がってばかり」

undefined
「『Think The DAY』特製のキッチンカー。シックなデザインがお気に入り」

そう、お気づきかもしれないが、紗栄子の言葉には、拍子抜けするほどエゴや欲、野心のようなものがない。自分の意志で決めたのは「芸能界に入る」ことくらいだった。

「私の一番ラッキーなところは、たどり着いた先々で人や出会いに恵まれているところ。みんなからもらっているものが多過ぎて、見返りが欲しいとも思わないし、むしろちゃんと返さなきゃという気持ちなんですよ。そういう意味では、皆さんに育ててもらったから今の私があるし、子どもたちを養える力をつけさせてもらった。

そもそも芸能の仕事は求められないと成立しない仕事なので、応援してくれる人がいるから、『じゃあ、頑張ろう』と気合を入れられる。私、自分から『モデルです』と言えるほどの自信はないんです。それでもカメラの前に立てるのは、みんなが求めてくれている、その気持ちに応えるため。それがないと無理です。

読者のみんなは、私の表面的な部分ではなくて、内面までしっかり汲み取ってくれるから、心身ともにコンディションがいい状態で撮影に臨まないと見透かされてしまう。できるならポジティブな姿を届けたいと思うので、撮影のだいぶ前からトレーニングやケアに集中して、自信が持てるまで努力を続けられるんです」

怖さや不安を抱えながらも、芸能人として表舞台に立ち続ける理由はもうひとつある。

undefined
トップス ¥128,000(Simone Rocha/リステア)、ピアス ¥24,200(Soierie)

「名前と顔を知っていただくこと、何かを伝えたいときにちゃんとみんなに注目してもえて、耳を傾けてもらえるような存在で居続けるため。

被災地では、何者か分からなと不安がられてしまうんです。泥棒も増えるし、性被害もあったりするので、”よそ者”に対してどうしても警戒心が強くなります。そういうときに私たちのような、顔が名刺みたいな人間がいるだけで、警戒心がほどけて、スード感を持って支援活動ができるようになんです。それが芸能人であり続ける理由。

若い頃は、自分が満たされていたらそれでよかった。けれどこの歳になったら、自分の手から溢れたものに関しては社会に還元したいと思うようになりました。本当に芸能人にしてくれてありがとうですし、だからこそ正しくこの求心力と発信力は使わせてもらわなきゃ、と気が引き締まります。

自分のために頑張るのは限度があるけれど、誰かのために頑張ると喜びの数が人数に比例してどんどん大きくなる。それが私にとって働く理由だし、人が喜んでいることが自分の喜びになっていった。

昔は、余裕がなかったから自分と子どもたちの笑顔や生活を守ることで必死だったけど、それが両親やファン、スタッフと、ちょっとずつ輪が大きくなっていって、今は社会にまで広がっている。やっぱり愛が原動力なんですよね。

子どもたちには私の背中を見ていてほしい。私を通して、社会のあり方やつながりを学んでいくだろうし、私は彼らのお父さんもお母さんもやらなきゃいけないから、大変なこともあるだろうけど色んなことを感じてほしいなって思っています」

undefined
「お正月の地震で被害を受けた能登で作られているミルクジェラート。お取り寄せすることで支援に繋がります」

キレイ事ではなくて、彼女の言葉が気持ちよく心に届くのは、紗栄子自身が自分の手と足、心をきちんと動かしているから。

「心の赴くまま活動しているけれど、納得していないまま動くことはなくて。自分が経営者になったから許される働き方だし、それが許されるような環境を整えてきました。

もちろん、その分の責任があるので、自由に見えて不自由だけど、不自由の中にも自由は見いだせるもの。楽しめるかどうかは自分次第ですし、そのシンプルさが私にはすごく心地いい。

先のことは深く考えていないけれど、今後も今の生き方をしていけば、いい未来につながっていくはず」


photo : TAKASHI YOSHIDA
styling : YURIKA NAKANO
hair & make-up : KENJI TAKAGAKI[SHIMA]
interview & text : HAZUKI NAGAMINE
model : SAEKO
web edit : KIMIE WACHI[sweet web]

※記事の内容はsweet6月号増刊 otonaSWEETのものになります。
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください。

元記事で読む
の記事をもっとみる