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【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語る国外地挑戦の経緯、日本とタイの違い、タイで流した涙

  • 2024.7.9
【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語る国外地挑戦の経緯、日本とタイの違い、タイで流した涙
【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語る国外地挑戦の経緯、日本とタイの違い、タイで流した涙

Text by 高橋アオ

Jリーグ史上最強のチーム鹿島アントラーズを率いた石井正忠監督は、昨年11月23日にタイ代表指揮官に就任した。

1999年にアカデミーのコーチから指導者キャリアを始め、2017年5月まで常勝軍団鹿島を約19年支え続けた。

Jリーグ、天皇杯、ルヴァン杯を制覇し、2016年に開催されたクラブワールドカップではJリーグクラブ史上最高成績となる準優勝へ導いた。

2021年からタイ1部ブリーラム・ユナイテッドの指揮を執り、2年連続で国内三冠(リーグ、協会オープンカップ、リーグカップ)を達成して前人未到の金字塔を打ち立てた。8月13日にタイ代表のテクニカルディレクター(TD)へと就任するも、9月18日に退任した。

紆余曲折を経てタイ代表に指揮官に就任した石井監督をQolyがインタビューを実施。

第5弾は新天地タイでの挑戦、タイと日本の違い、そしてサムットプラカーンで流した涙と多くのエピソードを語った。

※諸事情により1年前に取材した内容を掲載いたします。

(取材日2023年6月15日)

タイ挑戦を決めた経緯

――休養後はタイ1部サムットプラーカーンの監督に就任されました。初の海外挑戦になりましたけど、家族の存在をすごく大事にされている石井監督が、なぜタイ挑戦を決意したのでしょうか。

まず家族も「できれば日本で監督をやってほしい」という想いは当然ありました。でもなかなかオファーがないなかで、サムットプラーカーンが僕にオファーをくれました。話が進んでいくなか、1度お断りしたんですよ。

でもそのあとも、僕の代わりの日本人監督に対していろいろアプローチをしていたらしいんですけど、そこでも決まらなかったそうです。僕も日本のクラブからのオファーがなかなか来なかったので、もう1度サムットプラーカーンの関係者に連絡して、「日本人の監督は決まりましたか?」と聞いたときに「実はまだ決まっていないんです」と返ってきました。

でも「石井さんに来てほしいとクラブは考えていますよ」と話をいただきました。その間にたまたま『FOOT×BRAIN』(TV東京系)という番組でタイのサッカークラブの事情を取り上げてくれていて、日本人指導者が活躍している内容を家族が見ました。「タイで思い切ってチャレンジしてみたら」と家族も言ってくれたので、そこで決めました。それがきっかけですね。

日本とタイとの違い

――サムットプラーカーンに活躍の場を移されました。タイと日本の違いは、たくさんあると思いますけど、タイと日本の競技レベルで違いはありましたか。

まずサッカーのレベルの違いは感じています。そこは日本よりも少し劣っている部分がありました。あとはタイの選手、外国籍選手もそうなんですけど、かなり攻撃に向くんですよね。

でも守備の組織はなかなか整えられてなくて、だからそこをうまくコントロールできれば強くなるんじゃないかなと、日本でタイのチームと対戦してきたときから感じていました。

なので、守備の組織をしっかりやっていけば成績を出せるんじゃないかと。そういう違いはちょっとありましたね。守備のところが組織的ではないという部分。でも逆に攻撃に向くとすごいパワーを持っているリーグだと思っていました。

――日本より劣っている部分なのですが、具体的にどこの部分でしょうか。

技術もそうですし、判断の部分ですね。あと日本でいう個人戦術みたいなものがそれぞれの選手に浸透してないので、そこも少ないかなと思っています。

――例えばチャナティップ・ソングラシン選手(現タイ1部BGパトゥム・ユナイテッド)のように攻守の切り替えが早い選手もいますけど、チャナティップ選手は特別ですか。

特別だと思いますね。チャナティップや神戸や(横浜F・)マリノスにいて、いまブリーラムに戻ったティーラトンは、やっぱりタイの中でも特別な選手だと思います。

【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語る国外地挑戦の経緯、日本とタイの違い、タイで流した涙
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――個人戦術の部分は、具体的にどのようなプレーを指しますか。

例えば守備のところでいうと、守備の優先順位があるじゃないですか。まず「インターセプトを狙う」とか、「ボールを受けられたら遅らせる」とか、「前を向かせない」とか。そういうところですかね。

攻撃なら「まずシュートを狙おうよ」とか、「ダメだったらしっかりドリブル」とか、「相手に奪われないように相手とボールの間にしっかり体を入れよう」とか。そういうことですね。

――タイでの苦労や良かったと思えた瞬間はありましたか。例えば国民性の違いでタイ人は人前で怒ってはいけないと聞きます。

まずはいいことでいえば、タイの人は親日じゃないですか。なので、言ったことを学ぼうとする気持ちはすごくありますね。それが1番良かったことですね。

あと、いま言われた人前で怒るというとこですけど、(彼らは)プライドが高かったりしますけど、僕自身はあまり変わらず日本と同じようにやっています。

例えば、決まりごととか、やっちゃいけないことで特定の人に怒って、わざと周りにも知らしめるときもあるじゃないですか。そういうことは普通にやったりもしました。でも言ったあとに、例えば練習が終わったら、また個別に呼んでフォローしています。自分の考えを人に伝えるときに、正直に、誠実に、相手に伝えればちゃんと伝わることは、どこでも変わらないのかなと思っていますけどね。

タイで挑戦する日本人監督たち

――タイで活躍されている日本人監督が多数いらっしゃります。タイ1部チョンブリーの手倉森誠監督、前タイ代表監督の西野朗さん、タイU-20代表の三浦俊也監督がいらっしゃります。日本人監督がこれだけ来ている国はなかなかありません。監督同士で交流はありましたか。

西野さんは僕が行ったときは、そんなに長くはいなかったですし、代表監督なのでなかなか交流はありませんでした。手倉森誠も敵チームだし、そんなに交流はなかったんです。

でも僕からすると、手倉森誠は(日本の)オリンピック代表の監督をやっていたわけだし、西野さんも日本代表の監督じゃないですか。だから僕だけじゃなくて、ああいう(実績のある)人がもっと、もっとタイに居続けて、タイサッカー発展のために貢献してもらいたいなと思っていますね。

【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語る国外地挑戦の経緯、日本とタイの違い、タイで流した涙
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――三浦監督との関わりはございますか。

練習時間やグラウンドが違うので、なかなか話してはいないです。チームから借りている住宅がありますので、今年は同じ敷地内に住んでいるんですよ。だから今年はもっと交流しながらやっていきたいなと思っていますけどね。

サムットプラカーンで流した涙

――サムットプラカーンを退団するときに、選手と涙を流しながら別れを惜しんだとお聞きしました。

外国人選手もそういう想いでいてくれました。当然レギュラーで出ている選手もそういう感情になってくれたということは、他のところでもあると思います。でも試合に出ていない選手もそういうことが起こったんですよ。

僕はトップチームの選手だけではなくて全体を見ていて、特にサブの選手は若い選手が多かったので、トライアウトから引っ張って試合に出た選手も何人かいました。

だからそういう選手が「自分をプロの世界に引っ張ってくれた」と感謝の意味で、そういう感情になってくれたと思うんですけど…。でも僕は、チーム全体を分け隔てなく見ていたので、そういう気持ちが伝わったんじゃないかと思いますけどね。

――率直にその光景を見たとき、胸に熱いものはこみ上げましたか。

当然そうですね。僕が最初に泣いたことがきっかけになったんじゃないかな(笑)。見捨てるような形で、シーズン途中でチームも出て行かなきゃいけなくなって…。

なので、申し訳ない気持ちもありますし、自分のなかでも全うできなかった悔しい気持ちもあります。いろんな感情が起こって涙してしまったので。選手も同じような気持ちになってくれたのかなと思います。

【インタビュー】タイ代表石井正忠監督が語る国外地挑戦の経緯、日本とタイの違い、タイで流した涙
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第6弾はブリーラム・ユナイテッドで築いた前人未到の2年連続国内3冠の栄光と挑戦を語った。

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