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都知事選終わる 現職3選の厳しさと難しさ

  • 2024.7.9

「報道部畑中デスクの独り言」(第374回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は「東京都知事選挙」について---

東京都庁
東京都庁

「七夕決戦」とも言われた東京都知事選挙が終わりました。7月7日夜、ニッポン放送でもショウアップナイターを中断して開票速報をお伝えしましたが、投票締切直後の午後8時に現職の小池百合子知事の3回目の当選が確実に。開票率0%で当選確実=「ゼロ当」となりました。

今回の選挙は小池氏のほか、立憲民主党や共産党が支援する前参議院議員の蓮舫氏、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏、元航空幕僚長の田母神俊雄氏が立候補、これに52人が加わり、史上最多の56人が都知事のイスを争う構図となりました。

選挙の主な争点は、子育て・少子化政策、災害対策と言われましたが、最大の争点はやはり、2期8年の小池都政の評価だったと思います。初当選時に掲げた「7つのゼロ」、東京五輪、新型コロナウイルス対策の対応など…結果は有権者が小池都政に「及第点」を与えたということになります。

小池氏の選挙戦略は現職の強みを最大限に生かしたものとなりました。給食センター、病院への視察、水防訓練の参加など、課題の対象となる視察を重ね、これらは「事実上の選挙運動」となりました。街頭演説は告示後最初の週末に島しょ部、多摩地方から始めました。俗に「川上作戦」と言われました。これまた課題が山積する地域を重視する戦略を取り、他候補とは、良くも悪くも「格の違い」を見せつけていたと思います。

一方、小池氏の勝利とともに注目されたのは蓮舫氏と石丸氏の2位争いでした。情勢分析で「石丸氏が蓮舫氏より上」という情報が入ります。結果は石丸氏165万8363票、蓮舫氏128万3262票、石丸氏が蓮舫氏に37万票以上の差をつけて2位に入りました。石丸氏大健闘の理由は様々考えられますが、石丸氏が1日約10か所の街頭演説に臨み、さらにSNSを中心にした緻密な戦略が大きな成果となったことが挙げられるでしょう。

対する蓮舫氏、皮肉なことに「2位じゃダメだった」ようです。目論んでいた「事実上の与野党対決」の構図は崩れ、「若者支援」で取り込みを目指した若年層も、石丸氏の支持層と被り、石丸氏の後塵を拝しました。また、蓮舫氏は立憲民主党と共産党の支援を受けました。これは来たる国政選挙を前に、両党連携の効果を測る意図もあったとみられますが、巨大な無党派層を抱える東京都の選挙構造を完全に見誤ったと言えます。自民党でさえ、かつての都知事選で推薦候補が敗北を重ねています。国政の構図を持ち込めるほど都知事選は甘くなかったということです。蓮舫氏本人は決して明言しないでしょうが、今回の選挙を次期衆議院選挙「鞍替え」に向けたステップにしたかったことは想像に難くありません。それはうまくいくのかどうか……石丸氏の後塵も拝した今回の結果で、戦略の練り直しが迫られることになるでしょう。

小池百合子事務所 当選確実直後(ニッポン放送・小永井一歩記者撮影)
小池百合子事務所 当選確実直後(ニッポン放送・小永井一歩記者撮影)

さて、話を小池氏に戻します。小池氏は291万8015票を獲得、「圧勝」ではありましたが、私は小池氏の「勝ち方=票の取り方」に注目していました。

東京都のトップが知事になってから行われた都知事選は今回で22回目。小池氏のほかに3選以上を果たした知事は4人います。安井誠一郎、美濃部亮吉、鈴木俊一、石原慎太郎の4氏。4氏に共通するのは、得票率が2期目をピークに、3期目以降が、目減りしているということです。

2期目から3期目にかけての得票率の変遷です。
安井誠一郎 61.23%→50.93%
美濃部亮吉 64.77%→50.48%
鈴木俊一 60.16%→57.81%
石原慎太郎 70.21%→51.06%

得票率そのものは、時の対立候補にも左右されますが、ここに2期目から3期目に向かう知事の厳しさ、難しさがあります。

初当選では新たな都政に対する有権者の期待を一身に背負います。1期目で植えたいわゆる「政策の苗」は、2期目になって刈り取られます。それは大きな成果となるものもある一方、未達に終わるものや、“失政”と総括されるものも出てきます。石原都政では、前者は「ディーゼル車規制」などであり、後者は「新銀行東京のとん挫」でしょう。公約未達や失政に対する批判が高まるのも2期目から3期目の時期の特徴です。

現職の知事が行政に対する限界を感じるのもこのころ。さらに、この時期は往々にして人事が停滞すると言われます。気心知れた「お友達」で脇を固める傾向があるのです。「権不十年」とはよく言ったもので、こうなると、不正の温床もできやすくなります。

批判をかわすため、3期目に新たな政策を展開していくこともままあります。石原都政ではそれが「東京五輪誘致」でした。五輪誘致は石原都政では実現に至りませんでしたが、猪瀬都政でリベンジを果たし、小池都政の2021年に開催をみます。

さて、小池氏の得票率はどうだったか……2期目の59.70%から今回は42.77%となりました。この数字を内外はどう判断するでしょうか。「反小池票」の主な受け皿が石丸氏となったことは明らかでしょう。小池都政はそうした批判票に対して、今後どう対応していくのか…「東京大改革3.0」では、「セーフシティ」「ダイバーシティ」「スマートシティ」を掲げ、その筆頭に「首都防衛」を挙げていました。「木造住宅密集地域の解消促進」「調節池の整備」「無電柱化の推進」「マンション防災の強化」「シェルターの整備」「避難所改革の推進」「富士山噴火を想定した降灰対策推進」「グリーンインフラ」……今回の都知事選で災害対策は子育て・少子化対策の陰に隠れがちでしたが、これは焦眉の急です。

今回の東京都知事選挙の投票率は60.62%。前回を5.62ポイント上回り、衆議院選挙の同日だった2012年以来の60%台となりました。また期日前投票は215万1251票に達し、過去最多。有権者の18.7%に上りました。今回の選挙はポスターの掲示板や政見放送で様々な物議を醸しましたが、SNSの活用が定着し、新たな選挙のカタチが生まれたと言えるかもしれません。

都知事選から一夜が明け、小池知事は都幹部を集めた庁議で「重責に身が引き締まる思い。一朝一夕にはできないが、職員の力を活かし、都政を前進させる」と訓示しました。まさに「勝って兜の緒を締めよ」……3期目の小池都政に対し、新しい時代の都民の目が光ります。

(了)

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