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太陽が起こす宇宙の嵐「スーパーフレア」現代文明を突然終わらせる!

  • 2024.7.9
2024年5月8日から、太陽は巨大黒点からXクラスフレアを連発。地球を襲った強い太陽風は激しい磁気嵐を起こし、世界中で低緯度オーロラ観測フィーバーが巻き起こりました。
2024年5月8日から、太陽は巨大黒点からXクラスフレアを連発。地球を襲った強い太陽風は激しい磁気嵐を起こし、世界中で低緯度オーロラ観測フィーバーが巻き起こりました。 / Credit:国立研究開発法人 情報通信研究機構 電磁波研究所 宇宙環境研究室/ナゾロジー編

2024年5月8日から、太陽は巨大黒点からXクラスフレアを連発。地球を襲った強い太陽風は激しい磁気嵐を起こし、世界中で低緯度オーロラ観測フィーバーが巻き起こりました。

恒星では太陽の100倍、1000倍という巨大な磁気嵐を引き起こすスーパーフレアが観測されていますが、天文学者によりそれは太陽でも起きる可能性が指摘されています。

もしスーパーフレア級の太陽フレアが地球を直撃すると現代文明は突然終焉を迎えます

衛星は落ち、通信は途絶え、電気系統は全て使えなくなることにより文明は一時的に18世紀レベルまで後退するとも言われています。

今回はそんな、SF映画の導入にされそうな大規模な太陽フレアの可能性について解説していきます。

目次

  • 強い太陽フレアは激しい磁気嵐を起こす
  • 屋久島の杉はスーパーフレア級の太陽フレアを記憶していた?

強い太陽フレアは激しい磁気嵐を起こす

太陽は自身の力で光る恒星で、全体がガスでできています。その大きさは139万2700 km、地球の約100倍あり、その大きさのため内部では核融合が起きており表面温度は約6000℃という高温です。

太陽の黒点という言葉を聞いたことがあると思います。黒点というのは太陽の表面に見られるシミのような黒い点のことで、太陽の表面温度よりも低く、約4000℃です。

それでも大変な高温ですが、太陽の表面温度よりもぐっと低いので、その部分は黒く見えるのです。

磁場により結合した太陽大気の構造。コロナ:高温の上層大気。遷移層:彩層とその上空のコロナをつなぐ薄い大気構造。彩層:光球の上空2000 kmくらいまでの大気構造。光球:可視光で見える太陽の表面。
磁場により結合した太陽大気の構造。コロナ:高温の上層大気。遷移層:彩層とその上空のコロナをつなぐ薄い大気構造。彩層:光球の上空2000 kmくらいまでの大気構造。光球:可視光で見える太陽の表面。 / Credit:太陽画像:国立天文台/JAXA、NASA

黒点は太陽内部で作られた磁場です。その大きさは大きいもので数万kmにも及ぶことがあります。また、黒点の数が多く現れる時期が観測されており、平均して11年周期で太陽活動が活発になり、黒点が増えることがわかっています。

太陽が作る磁場により、黒点の数や形は刻々と変わっていきます。磁場なのでN極とS極がありますが、磁力線がどのような出方をするのかは成り行きまかせ。そのため、磁力線同士が近づきすぎてたびたび大爆発を起こします

この大爆発を「太陽フレア」と呼びます。

太陽フレアは太陽の周囲全体に太陽大気のガス(=プラズマ)を噴出します。強い太陽フレアが地球に向かってきた場合、激しい磁気嵐となって通信障害やブラックアウトと呼ばれる大規模停電などの被害を及ぼします。

1989年には激しい磁気嵐のためカナダのケベック州でブラックアウトが9時間続きました。また、2022年にはスペースX社が2月上旬に打ち上げたスターリンク衛星49基のうち約40基が機能停止に陥り、使用不能になっています。

太陽は地球にこのような被害を及ぼすことがあるため、研究者が毎日注意深く観測を行い、太陽の謎を解き明かす研究を行うとともに、災害につながる情報は宇宙天気予報で公開しています。

2024年3月1日には、提案から5年以上の月日をかけた「高感度太陽紫外線分光観測衛星」、略称「SOLAR-C」というプロジェクトが発足、欧米の宇宙機関の支援のもと、SOLAR-C望遠鏡の開発が進められています。

地磁気の現状を現したグラフ。このグラフからは落ち着いた状態が読み取れる。棒グラフが紫色の文字Severe stomeの高さまで伸びると強い磁気嵐が起きていることを示す。
地磁気の現状を現したグラフ。このグラフからは落ち着いた状態が読み取れる。棒グラフが紫色の文字Severe stomeの高さまで伸びると強い磁気嵐が起きていることを示す。 / Credit:国立研究開発法人 情報通信研究機構 電磁波研究所 宇宙環境研究室/気象庁地磁気観測所のK指数(柿岡)

屋久島の杉はスーパーフレア級の太陽フレアを記憶していた?

地球には常に宇宙からの放射線が降り注いでいます。

考古学や地球科学などで年代測定の手段として放射性炭素14が用いられているのは、その値を測定することで年代を推定できるからです。

そこで、樹齢1900年の屋久島の杉の切り株に見られる年輪の放射性炭素14を測定したところ、774~775年にかけて12%の濃度の増加が見られることがわかりました。

これは北米や南極で測定したデータとも一致したため、地球全体で放射性炭素14の濃度が増加したと考えられています。

屋久島の縄文杉は年輪にスーパーフレア級の太陽フレアを記憶しているかもしれない。
屋久島の縄文杉は年輪にスーパーフレア級の太陽フレアを記憶しているかもしれない。 / Credit:wikimedia

774~775年当時はまだ電気や通信設備はなかったため、大規模な被害はありませんでした。

1204年2月の大きな磁気嵐の時は京都でも低緯度オーロラが見られました。これを記録したのは有名な歌人、藤原定家。定家は「明月記」の中で、「北の方から現れた赤気が山の向こうの火事のようで恐ろしかった」と記しています。

赤気というのは日本におけるオーロラの呼び方で、たびたび日本の歴史の中で観測されており、その度に地球には巨大な磁気嵐が到達していたと考えられます。

低緯度オーロラは当時の人にとっては天変地異に等しい恐ろしい現象だったため、奈良時代でも誰かが記録していた可能性もありますが、当時の低緯度オーロラに関する記録はまだ見つかっていません。今後の古文書発見に期待したいところです。

奈良時代にも地球をスーパーフレア級の太陽フレアが襲ったのでしょうか?詳細ははっきりしていませんが、太陽活動で黒点ができる限り太陽フレアを防ぐことはできません。研究者による太陽の観測は今後も休みなく続きます。

太陽活動はおよそ11年周期で活発になります。現在活発な太陽活動は2025年まで続くとされているため油断は禁物です。巨大な黒点はまだ作られる可能性があるからです。

2024年5月11日に青森県で撮影された低緯度オーロラ。北の空に肉眼でも淡い光が確認できたという。
2024年5月11日に青森県で撮影された低緯度オーロラ。北の空に肉眼でも淡い光が確認できたという。 / Credit:KAGAYA (@KAGAYA_11949) May 11, 2024

スーパーフレア級の太陽フレアに襲われると現代のライフラインともいえる電気や通信設備が使えなくなり、最悪の状態で2週間程度、激甚災害に見舞われたのと同じ状態になるといわれています。

考古学的な記録を見ると、太陽でも十分に甚大被害を起こすスーパーフレアは起きると予測されており、様々なテクノロジーで成立している現代の我々の生活は、過去の地球に比べて巨大フレアの被害の影響はかなり大きくなることが危惧されています。

まだ、太陽による災害に実感を持つ人は少ないかもしれませんが、いつか空から訪れる災害についても多くの人たちが危機意識を持っておくことは重要です。

地震や洪水のように地上が破壊される災害と異なり、スーパーフレアによる災害は、地上が無傷でもPCやスマホが破壊され、保存したデータもすべて失われると言った機械のみに絞った普段とはまったく異なるタイプの災害になると予想されています。

当然電気機器が破壊されることで上下水道の停止や、通信の利用不能で情報を得られなくなったり、110番や119番が使えなくなるといった状況も想定されます。

こうしたスーパーフレアによる異質な災害は、きちんとその被害のタイプを理解して備えていなければ、大きな混乱を引き起こすことになるでしょう。

少しでも空から訪れる災害にも意識を向け、そのとき何が起きるのかは知っておいた方が良いかもしれません。そしてたまには宇宙天気予報もチェックしておくようにしましょう

参考文献

国立天文台広報ブログ「太陽フレアを監視せよ!」
https://www.nao.ac.jp/news/blog/2023/20230330-solar.html#top

自然科学研究機構 国立天文台 太陽観測科学プロジェクト
https://solarwww.mtk.nao.ac.jp/jp/ssobs.html

公益財団法人日本アイソトープ協会「屋久杉の年輪から分かる宇宙放射線量の変化」
https://www.jrias.or.jp/books/cat3/2012/704.html

ライター

百田昌代: 女子美術大学芸術学部絵画科卒。日本画を専攻、伝統素材と現代素材の比較とミクストメディアの実践を行う。芸術以外の興味は科学的視点に基づいた食材・食品の考察、生物、地質、宇宙。日本食肉科学会、日本フードアナリスト協会、スパイスコーディネーター協会会員。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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