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江口のりこさん、30代後半で来た反抗期 「嫌いじゃないのにイラッと」

  • 2024.7.8

2002年に「金融破滅ニッポン 桃源郷の人々」で映画デビューし、04年に「月とチェリー」で映画初主演。以降、数々の出演作で独特の存在感を放ち、脇役から主役まで演じてきた江口のりこさん(44)。7月12日公開の映画「お母さんが一緒」では、母の期待に応えようと生きてきた独身の長女を演じています。そんな江口さんに、19歳で上京した時の思いや年齢を重ねることへの思いなどを伺いました。

「どこにいても一緒。自分が何をするかが大事」

――江口さんは中学を卒業後、進学をせずバイト生活を送り、19歳で上京されました。社会に出たいという気持ちや自立心はいつ頃から芽生えたのでしょうか。

江口うちはきょうだいが5人いてお小遣いもなかったから、早く自分でお金を稼いで、自分の好きなものを買ったり、好きなところに行ったりしたいという思いは子どもの頃からありました。 実際に家を出て自立してみたら、最高でしたね。全部自分のものですから。自分で作った時間で自分のやるべきことをやって、自分で稼いだお金は私のもの。それは嬉しいことでしたよ。もちろん今までずっと一緒に過ごしてきた家族と離れる寂しさはありましたけど、ようやく自分の好きなことが始められる嬉しさや喜びが1番でした。

――実際に東京に出てきてみていかがでしたか。

江口上京するまでは「東京ってどんなところだろう」ってすごくドキドキしていたんです。でも、いざ東京に来てみたら「どこにいても同じだな」と思ったんですよ。自分自身があまり変わらなかったから「どこにいても一緒」。結局は、自分がそこで何をするかが大事なんですよね。

朝日新聞telling,(テリング)

――映画「お母さんが一緒」では、「母親みたいな人生を送りたくない」という思いが三姉妹に共通していることでした。江口さんには反抗期はなかったのですか。

江口: 私は反抗期が来たのが30代後半頃と遅かったんですよ。理由は分からないけど反抗したくなったり、イライラしたりして。一番イラっとしたのが、以前タケノコを1本買ってタケノコご飯を作ったという話を母にしたら、「えらいねぇ」って言われたことにすごく腹が立ったんです。

めちゃくちゃしょうもないことなんですけど、「もう大人なのに、タケノコご飯を作っただけでこんなに褒められるってなんか嫌やな」と思ったんです。私が演じた弥生も作中で三女の清美のことをいつまでも子ども扱いしていますが、そういう風に子ども扱いされるのがすごく嫌でした。その話を友達にしたら、「分かる」って言っていたので、きっとみんな持っている感情なんですかね。私なんでこんなことでイラッとしてるんだ、って自分で自分のことを嫌だと思うんです。母に悪気がないのは分かっているし、嫌いなわけじゃないのに、不思議ですよね。

違う生き方、きっとお互いないものねだり

――telling,では「30歳」、「40歳」というひとつの節目を迎える女性たちの焦りや葛藤を取り上げてきました。江口さんはそういったことでの迷いや不安はありましたか。

江口: つい最近、「あれ?私、44歳になっている」ということに気づいてびっくりしました。ずっと仕事ばかりしてきたんですけど、ふと「私、今まで何してきたんだろう」と思ったこともあるので、節目の歳になった時に不安になる人の気持ちは分からなくはないです。

朝日新聞telling,(テリング)

――「お母さんが一緒」で、三女の清美が内緒で婚約者を連れてきた時、独身の次女・愛美は焦りや嫉妬心のようなものを感じたようでしたが、弥生にもそのような感情があったと思いますか。

江口: その時の弥生には、嫉妬などの気持ちはなかったと思います。弥生はむしろ、婚約者を連れてきた清美に対して「結婚して早く子どもを産んでほしい。だってお母さんは孫が欲しいんだもん」という思いだったと思います。

――江口さんご自身は、「結婚していない」「子どもがいない」ことに対する世間の視線のようなものを感じたり、焦りを感じたりすることはありますか。

江口: 私はないですね。もし自分が会社員だったら、そう感じることがあったかもしれないけれど、私の周辺の人たちって割と自由な感じの人が多く、独身の人も多いですし、離婚する人もいるし。なので、あまりそういうことを言われたこともないし、感じたこともないです。

私の姉は子どもがいるのですが、姉の生活を見ていると「素敵だな」と思います。自分の時間を子どものために、誰かを育てる時間に使っているってすごいですよ。私は100%自分の時間で、自分の好きなように、自分のために時間を使えますから。 きっとないものねだりなんでしょうね。お姉ちゃんはお姉ちゃんで、私の暮らしを何かしら「いいな」と思うことはあるでしょうし。お互い、全然違う生き方をしているなと思います。なので、私は私で、自分に与えられたことをやっていくしかないと思っています。

――「ソロ活」を楽しむ主演ドラマがありましたが、江口さんは一人ならではの楽しみはお持ちですか。

映画を見に行ったり、買い物行ったり、大体全部一人ですね。でも、そのドラマの撮影の時に思ったのは、実際私が撮影する時って、撮影隊みんなといろんなところに一緒に行くんですよ。やっぱり、みんなとどっか行くって面白い。人と一緒って楽しいなって思いましたね。それは発見でした。

「どうすればいいか分からない」のはみんな同じ

――これまで、キャリアの面で何か迷いが生じたことはなかったのでしょうか。

江口: 迷うことはないですね。私たちの仕事って向こうからやってくるものなので、自分がこの役をやりたいと言ってどうにかできるものではないですから。お話をいただいて「今度はこういうことを自分がやらなければいけないんだな」と思ってやっているので、迷っている時間がないんです。

――それでも、時に不安に飲みこまれそうになったり、一人枕を濡らしたりすることはありますか?

江口: もちろんありますよ。仕事に入る前はいつも不安ですし、「どうすればいいのかな」って思いながら仕事しています。「これでいい」と思いながらやっていることはほとんどなくて、いつも試行錯誤しながら作品に入って、終わってホッとするという感じの繰り返しです。自分に巡ってきたものを今の自分なりに一生懸命やる。それでいつの間にか月日が流れてる、みたいな感じかな。

朝日新聞telling,(テリング)

――不安になった時のご自身なりの対処法があれば教えてください。

江口: 自分がどうしたらいいかなということは、ちゃんと見つけていきます。仕事で不安だなと思ったら、まず自分がどういう部分を不安に思っているのか考えてみて、「ここを勉強し直したら、ちょっと不安が消えるかな」という風に、「どうしたら今自分が抱えている不安が消えるか」を色々探します。そうしながら、自分に巡ってきたものを一生懸命やっているだけです。

――「やりたいことがあってもその1歩が踏み出せない」ことに悩んでいる読者も少なくありません。

江口: なかなか実行に移せずに二の足を踏んでいるということは、本当はやりたくないのかもしれないですね。でも、自分が本当にそれをやりたいのかやりたくないのかなんて分からないですよ。私だって「引っ越ししたい」って言いながらもう5年経っていますから(笑)。「どうすればいいか分からない」のはみんな同じだと思います。

■根津香菜子のプロフィール
ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。

■慎 芝賢のプロフィール
2007年来日。芸術学部写真学科卒業後、出版社カメラマンとして勤務。2014年からフリーランス。

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