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ドルチェ&ガッバーナ、神秘の島サルデーニャで魅せるアルタ モーダ コレクション【2024-25年 秋冬クチュール速報】

  • 2024.7.6

パリオートクチュールコレクションの幕が下ると、程なくして始まるファッションウィークがある。それが、ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)によるアルタ モーダだ。2012年に初となるコレクションが発表されて以来、イタリアでも指折りの景観を誇る地で数日間にわたって開催されるアルタ モーダは、招待客をメゾンが贅沢にもてなす、豪華絢爛な祭典となっている。連日開かれるパーティーに、会場を行き交うセレブたち。各国から集うゲストたちは皆一様に華やかな衣装に身を包み、続々と披露されるピースの中から、次にワードローブに迎え入れる一点ものの逸品を吟味する。

今シーズン、アルタ モーダの舞台に選ばれたのは、美しい自然に恵まれたサルデーニャ島。フィネキア、ローマ、ヴァンダル、ビザンツ、サラセン人の植民地下におかれ、約400年もの間アラゴン人によって支配されていた過去を持つこの土地は歴史にも彩られ、古代から伝わる伝統や儀式が今もなお深く根付く。その神秘的な文化と、異教に根ざした伝来の複雑なシンボルと神話から、メゾンは今回インスピレーションを得た。

「サルデーニャの不思議な世界を深く掘り下げました」とドメニコ・ドルチェステファノ・ガッバーナは、島の南端の岬にあるノーラの遺跡で行われたショー前の記者会見で語った。紀元前8世紀にさかのぼるノーラには、研ぎ澄まされたモダンさが息づく。そこにアメリカ人現代アーティストのフィリップ・K・スミス3世がアルタ モーダのために制作したインスタレーション『ノーラ ミラージュ』の巨大な鏡張りの柱が加わると、ドメニコとステファノがショー会場探しのために訪れた際に感じた、「デ・キリコの絵画に出てくるような広場」に似た、現世離れした雰囲気が漂う。「過去と現在を繋げたかったのです。そのため、セットとコレクションはより現代的なものにするべきだと思いました」

好きなものをなぞるのは簡単だ。しかし、イタリアの民間伝承に魅せられているステファノとドメニコは意外にもシンプルかつエレガントな方向を攻め、サルデーニャの伝統をオマージュする要素はさりげないディテールにとどめた。

この島は、卓越した技法で作る伝統工芸の宝庫として知られている。2人はその数ある技法の中からいくつかを選び、再解釈した上で、コレクションの核である細身で流れるようなシルエットのピースに巧みに取り入れた。複雑なフィリグリー細工、粗毛のウールラグに用いられる素朴なモチーフ、卓越したシャツ作りやスカートのプリーツ加工の職人技。ルックのほとんどは黒を基調とし、完璧なカッティングが施されていた。そしてなめらかなラインのチュニックをシンプルに引き立てていたのは、趣向を凝らした黄金のフィリグリージュエリー

服をなびかせるそよ風、静まり返った海岸、鏡張りの柱に反射する銀色の光。すべてが見事なドラマを生んだ。

いくつかのピースは、サルデーニャならではの伝統的な織技法で表現される、色とりどりの絨毯をインスピレーションにしていた。レースをあしらった6枚の白いコットン製のパフスリーブシャツは、地元の女性たちが式服専用の繊細なプリーツ加工技術によって製作され、サルデーニャの卓越した職人技へさらなるオマージュを捧げた。

しかし、すべてが伝統を物語っていたわけではない。今回のコレクションは、ローマの王女ジョヴァンナ・カラッチョーロ・ジネッティが1940年代後半に設立した貴族向けのアルタ モーダのアトリエ、メゾン・カロサから打ち出したクチュール服にインスパイアされているという。イタリア人デザイナーのピノ・ランチェッティとアンジェロ・タルラッツィもかつて修行を積んだこのアトリエから着想されたのが、モダンなクチュール精神を感じさせる鮮やかなシフォンのドレープドレスたちなのだろう。

歴史と伝統に立ち戻ったアルタ サルトリア

アルタ モーダでは独特のモダンテイストが追求されていたのに対し、アルタ サルトリアでは再び、この地にまつわる伝統的な文化がクチュールならではの豪勢な演出で表現された。会場となったのは、この日のために建てられた田舎のパラッツォを再現した幻想的な建物。ショーのオープニングの一幕もまた映画さながらのセットに引けを取らない盛大さで、毎年州都カリアリで行われる宗教行事、聖エフィジオ祭を再演。伝統衣装を身に纏った何百人もの地元民が、雄牛に引かれた豪華な荷車に乗って登場すると、バラの花びらやミントの葉を撒き散らしながらゲストたちの前を通っていく。思わず言葉を失うほどの圧巻さだ。すると今度は、会場が不穏な空気に包まれた。間もなくして、羊の毛皮と木のお面を身につけ、約30キロもあるカウベルをぶら下げた人物が現れる。古代から伝わる伝説の動物のような神の生き物、マムトーネスだ。

この地に大切な意味を持つ儀式に敬意を表したオープニング。それに続くコレクションは、贅を尽くした活気あふれるものだった。花柄の刺繍が施されたスリムフィットのスーツ、毛足の長い黒いウールのケープ、金糸のビブスを上から重ねた白いハイカラーのシャツ。クリスタルをあしらった幾何学模様のスカートは、通常は貴族の嫁入り道具のベッドカバーにしか使用されない織物の技法を取り入れていた。サルデーニャの文化に色濃く残るスペインの影響も、装飾をふんだんに施したショート丈のボレロや丸つばの黒いハットで表現された。

数夜にわたるパーティーでは、世界のトップアーティストがさまざまなパフォーマンスを披露。クリスティーナ・アギレラにピアニストのマイカ・マクローリンに、初日を飾ったトリクシー・マテル。ドラァグクイーンヴァイオレット・チャチキケイティ・ペリーが祭典を締めくくり、ほかにもマルマ、ナオミ・キャンベルハル・ベリー、チェ・サン、ルシアン・ラヴィスカウント、テオ・ジェームズらが駆けつけた。

何世紀にもわたって受け継がれてきたイタリアの多種多様な工芸や風習を、自分たちの創作を通じて世界にアピールすることに最も情熱を注いでいるメゾン、ドルチェ&ガッバーナ。「古くから伝わるものを若い世代に広め、大切にされることを望んでいます。職人たちと一緒に制作することで、学ぶことがたくさんあります。彼らの知恵を借りられるのは、本当に光栄なことです。私たちの創作の根底には、職人技への愛があるのです」

Text: Tiziana Cardini Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.COM

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