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続く円安と物価高……要因は“カンフル剤”異次元緩和を続けた副作用 石川和男が指摘

  • 2024.7.6

政策アナリストの石川和男が7月6日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。止まらない円安と物価高の一因と指摘される「異次元の金融緩和」の功罪ついて、朝日新聞編集委員の原真人氏と議論した。

日本銀行
日本銀行

7月に入り、円相場は一時約38年ぶりとなる1ドル162円台に迫る安値を連日で更新。賃金の上昇が輸入価格の押し上げによる物価高に追いつかず、実質賃金マイナスの状態が続いている。円安の一因と指摘されるのが、日米の金利差だ。先進国の中でいまだ異常な日本の低金利は、2013年の「異次元の金融緩和」に始まる。日銀は、今年3月のマイナス金利解除に続く金融政策変更のタイミングを慎重に模索しており、7月末の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切るかが焦点となっている。

番組にゲスト出演した朝日新聞編集委員の原真人氏は、金融緩和を第1の矢に掲げた「アベノミクス」について「失敗だったと思う。アベノミクスは3本の矢と言うが、安倍さんが最初に言い出したのは1本目(金融緩和)と2本目(財政出動)だけだった」と振り返り、「1本目と2本目を合わせると、財政ファイナンスと言って先進国ではタブーの政策」だと指摘。「3本目の成長戦略がくっついたのは、当時の麻生財務相と甘利経済財政政策担当相が『さすがに1本目と2本目だけだと財政ファイナンスだという批判を浴びる』と成長戦略を入れましょうとなってくっついたのが3本目」と解説した。そのうえで「ほとんどは1本目の日銀による超異次元の金融緩和の一本足打法で、この11年来た」との印象を述べた。

さらに、2000年代からデフレが進んだと言われることの多かった日本経済について「デフレはどんどん物価が下がる状況。2000年~2010年代にかけて現実に起きていたのは“ほぼ0インフレ”。企業は売上がなかなか増えず、賃金も上がらず、なんとなく景気がよくなっていない感じがする。それで物価を上げれば景気が良くなると始まったのがアベノミクス。ふつうは景気が良くなるから物価が上がる。逆の発想で物価を上げる政策をここ10年以上続けてきて、それが今、この結果です」と言及した。

今後、円安や物価高を是正していくためには「画期的な解決策はないが、地道にふつうの金融政策、財政政策をやるべき。この10年以上、異常な金融政策と異常な財政政策を続けてきた。それがこの結果なので、ふつうに戻すべきだ」と主張。「まだゼロ金利。ゼロではまずい。こんなに物価高なのに、いまだに物価を上げるための政策を日銀は続けている。ゆっくりではあっても上げていくのが当然」と批判した。

一方で「1%上がっただけで、日銀は約5兆円財務が悪化する。日銀の自己資本は約13兆円で、あっとう間に債務超過になる。その時に、世界から信用されるのか? 今の円安は、もしかするとそういうことを市場が予見しているのかも」とも述べ、同じく利上げによって悪化する国家財政への懸念も示した。「財政が悪化して、もしかするとそこで増税が必要になるかもしれない。これまでは借金で何とかなるだろうということだったが、その借金は日銀が国債を買い入れることで支えていた。もう日銀は買い支えできず、まったく新しい世界になる」との見通しを語った。

石川は「異次元緩和を始めた2013年頃は、民主党政権から自民党政権に戻るタイミングで、ある種アドバルーン的な政策は政治的にはありだったと思う。ただ、一種のカンフル剤を打ち続けた。カンフル剤のような強い薬は飲み続けると体がダメになる。そのカンフル剤がいまだに続いている」と指摘した。

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