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最推しキャラが死んだ。喪失感に嘆くオタクが救われる方法は?/やましたひでことカレー沢薫のオタクの断捨離④

  • 2024.7.5
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断捨離とは——新たに手に入りそうなものを「断ち」、家のいらないものを「捨て」、モノへの執着から「離れる」こと。これによって人は心まで解き放たれ、もっとご機嫌な人生を生きられるという。 そんな理念のまったく反対側にいるのが、オタクだ。新しいものはどんどん欲しいし、買ったら捨てられないし、モノへの執着はすごくある。部屋は散らかるけれど、好きなモノに囲まれたオタク人生は最高。 だが本音を言えば、「本当はモノを整理してキレイな部屋で暮らしたい」「憧れのインテリアにして人を呼びたい」といった願望もあるようで…。「オタクの断捨離」では、漫画、アクスタ、コスプレグッズ、服…などを集めるオタクの実態を観察しつつ、漫画家・カレー沢薫氏&やましたひでこ氏とともに、愛すべきオタクたちにとって快適な“断捨離”を模索していく。

※断捨離はやましたひでこ個人の登録商標です。

第4回 「最愛の推しが突然死んでしまったオタク」

今回のゲストである岡山さんは、CMで有名な大手グループ会社に勤める女性。とある人気キャラクターにハマってからというもの、推しのグッズを買い集めてきた。

アクスタが120体以上、クリアファイルが500枚以上。観音開きの棚をひらけば、推しのグッズが“観音様”のように祀られている。

コロナ禍が少し落ち着き、仕事が多忙になったこともグッズ集めに拍車をかけた。仕事の合間を縫ってわずかに残った自分の時間を、“通販”というお金で簡単に買える快楽につぎ込んだという。

このままでは、部屋が推しのグッズで埋め尽くされる。部屋を片付けなければ…。そんな嬉しい悲鳴を上げていたのは、この前まで。その後、最愛の推しが死んでしまったのだ。突然の出来事に心の整理が追いつかず、今でも推しの死を受け入れられずにいるという岡山さん。

グッズを見るたびに思い出すのは、生きていた頃の麗しい姿…。最近は何をしていてもモチベーションが上がらず、心にぽっかりと穴があいているような気分で、部屋にいることさえつらいのだそう。

一方で、推しのグッズを片付けたい気持ちもある。グッズが多すぎて彼氏を部屋に呼べなかったため、「グッズを手放したら彼を迎え入れたい」と岡山さんは語る。

新たにグッズを買い求める気持ちはないので、これ以上増える心配はない。けれど、部屋を片付けたとして、推しを失った喪失感を埋めることはできるのだろうか? そんな想いが岡山さんの胸中をグルグルと駆け巡る。

〈「愛別離苦」で四苦八苦のひとつ by やましたひでこ〉 ああ、私やましたひでこがなんとかできる問題ではありません。 「推し」という言葉になっていますが、それは大切な存在であったということですね。 そう、対象がリアルであっても、バーチャルであっても、「大切な存在」が死んでしまった!ということは、大きな喪失感。 喪失感は、他者がとやかく言って慰められるものでもなく、また励ますことも無意味。 本人がどっぷりとそれに浸り味わうしかなく、味わい尽くしてこそ、浮上の機会と時期が訪れるもの。 いえ、もしかして、その浮上はずっとやってこないのかもしれない。 恋人を失う 配偶者を失う 親を失う 子を失う 仏教でいうところの「愛別離苦」で四苦八苦のひとつですからね。 愛する存在と別れ離れなくてはならない不条理な苦しみ。これは決して癒えることはないものなのでしょう。 でも、だからこそ思うのです。 もうひとつの四苦八苦「怨憎会苦」、即ち、怨み憎む者に会う苦しみ、これも逃れられないことではあるけれど、少なくとも「怨み憎むモノ」は自分で断捨離することが可能ですから。ダ・ヴィンチWeb

推しを失った今できることは、どっぷりと喪失感に浸ること。喪失感を味わい尽くしたとき、モノを片付けるという選択肢に目を向けられるかどうかは、岡山さんの気持ち次第。漫画やアニメの推しを失うことは、わりとよくある話だ。断捨離は、モノの片付けだけではなく、深い悲しみに向き合う術をも教えてくれる。 ※このお話の続きは、2025年1月発売予定の書籍版にてお読みいただくことができます。

文=吉田あき

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