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まだ存在しない彼氏に備えて私の家を掃除する。不器用な父の愛情

  • 2024.7.5
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父親は私や弟のことは好きではないと思って大学生あたりまで過ごしてきた。
なぜそう思っていたかというと、私たちよりもいとこや家族ぐるみで仲の良い子供を可愛がっているように見えたからだ。
私と弟にはめったに、ものは買ってくれなかったが、友達と分けなさいと言ってシールを買ってくれたり、お菓子を買ってくれたりしたからだ。

良い父親だと思ってもらいたくて、外では良い顔をしていたのかもしれない。
何だか寂しかった。他の父親のように欲しいとねだったものを時々は買って欲しかった。

◎ ◎

それでも親の愛情を疑ったことはなかった。
なぜなら私がやりたいことは全部やらせてくれたからだ。向いてないからやめた方がいいと言われたこともない。 一度はチャレンジさせてくれた。
習い事、部活、留学、私立の大学への進学……。もしかしたら厳しい時もあったかもしれないが、私にお金のことを心配させる素振りを見せることはなかった。やりたいことを応援するのに必要なのはもちろんお金だが、送り迎えなどの時間的拘束も発生する。
何の心配もすることなく自分がやりたいことをできていた私はどれだけ幸せだったのだろう。 私も子供に同じことをできるだろうか。

愛されてると思ってなかったから、幼少期はいろんなところに連れて行ってもらったり、 送り迎えをしてもらうことに対してお礼が言えてなかった。それだけ父がどこかに連れて行ってくれることが当たり前になっていた。
当たり前に献身的になれることを愛情と言わず、何と言えるだろうか。

今でも長期休みには家族旅行をするのだが、旅費は大抵父親が持ってくれる。
社会人にもなって父に旅費を支払ってもらっていることは大きな声では言えない。
普通子供が払うべきだろという意見が大多数であることは分かっている。私も支払う準備はしているのだが、これもきっと父親の愛情なのだろうと思って、甘えることにしている。
父が引退したらその時は、私が支払うと決めている。

◎ ◎

最近早く彼氏を連れて来いといった旨のことを口にするようになった。

父自身も強く思っているかもしれないが、祖母からプレッシャーがかかっている可能性もある。急に彼氏を連れてきても嫌がるくせにと思ったが、私の将来が心配なのだろう。
アラサーにもなって、まだ自立しきってなく、親に心配をかけている自分が情けなくなった。
両親からすると、今の私の年齢はとっくに結婚していて、もうすぐ子供が生まれるといった時期だ。いつまでも仕事ばかりして結婚しないどころか、彼氏の一人も連れてきやしない。
もうすぐ還暦を迎える親の身としては、心配になるのは当たり前だ。

もちろん好きで心配をかけているつもりはないので、私だってどうにかしたい。

先日父が私の家に泊まりに来たのだが、掃除が行き届いていないところを掃除してくれた。 そのことを母に話すと、実家では父はやってくれないので、母の担当の掃除らしい。
きっと私の彼氏が家に泊まりに来た時に、私が恥ずかしい思いをしないようにと慣れないことをやってくれたに違いない。

いつまでも私は父の子供であり、助けられてるんだなと思った出来事だった

■高山葵衣のプロフィール
在宅勤務メインのアラサーOL。 お家時間と心を充実させるべく、ていねいな暮らしを目指している。 好きなものは北欧雑貨とからあげ。

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