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「最近ハマってるアニメは?」が、父と2人きりの気まずさを一掃した

  • 2024.7.5
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「23:30、〇〇駅着です。お迎えお願いします(泣き顔のemoji)」

26歳にして実家の子供部屋に住んでいた当時の私が、59歳の父親に送ったLINEである。

実家暮らしだった頃、通学や通勤の際に、最寄り駅まで父に車で送迎してもらっていた。いや、白状すると、学生時代の朝の登校時に関しては、週に2、3回は学校まで車で送ってもらっていた。私がとんでもなく寝坊することが多かったからだ。

父は「一体いつになったらこんな地獄から解放されるのか」と思っていたことだろう。文句ばっかり言いながら、でも絶対車で送迎してくれた。毎日。

全く甘やかされて育ったものである。甘やかされて育った割には、親への感謝の心や親孝行したいという気持ちが自然と湧き上がってこないので、本当に良くないなあと思う。いつになったら親孝行できる真の大人になれるんだろう。気持ちはずっと自分勝手な娘のままだ。

◎ ◎

通っていた学校までは車で約30分、特に何も話さなかったが、父と私の2人の時間だった。
特に、「学校はどうだ?」や「友達とはどうだ?」など、突っ込んだプライベートな質問は飛んでこない。父と話すことがなさすぎて気まずかった。そんな状況が何年も続いた。

だが、ある日いい喋り出しを生み出した。「最近ハマってるアニメある?」である。
「昨日のランチ何食べた?」だと父のプライベートに興味がありそうでちょっと恥ずかしいし、「最近仕事どう?」だと朝からちょっと重いし、アニメの話がなんだか気軽な感じなのだ。父とアニメの話をするようになった途端、父との会話での気まずさが一気に軽減された。

父とは対面で話すよりも、実家のリビングで横に並んで大きなテレビの画面をいつも一緒に眺めていた。作品はいつも父のチョイスだった。

実家を出て1人暮らしを始めて驚いたことは、Netflixの閲覧履歴やマイリストが父と私の区別がつかないほど作品のラインナップに被りがあることだった。
実家で父と観ていたアニメの続きや新シーズンのみならず、新しく始まったアニメも被っていることが多かった。知らぬ間に、好きなアニメのタイプが似てきていたのだ。
もしかしたら、アニメを通して、父とコミュニケーションを取っていたのかもしれない。
直接話さずとも、共にアニメを観て同じアニメに心を動かされ、影響を受け、そうやって徐々に好みが似てきたのかもしれない。

◎ ◎

実家を出てから2年、「実家にいる間にもっと父と話せばよかった」と、いつか後悔しそうで怖い。だが、毎日深夜まで横に並んでただアニメを観ることが、私たち親子のコミュニケーションの取り方だったのかもしれないと思うことにした。

とはいえ、私は父についてもう少し知る努力をすべきだ。
思い立って、「子供が大きくなったらやりたいことって考えたことある?」とLINEで聞いてみた。ちょっと恥ずかしかった。程なくして返事がきた。「美味しいものを食べて、お酒を飲むこと」だそうだ。

この夏の帰省は、家族で飲みに行くことに決めた。

■高森ゆうのプロフィール
湘南在住のインドア関西人。夫と二人暮らしをしています。冬が大の苦手で、冬の自分には期待していません。食べてる時が一番幸せ。

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