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トム・クルーズの名演とスタントアクションが光る傑作映画19選

  • 2024.7.4

『アウトサイダー』(1983)

Tom Cruise, Rob Lowe, C. Thomas Howell, Ralph Macchio, Matt Dillon, Emilio Estevez and Patrick Swayze on the set of The Outsiders, directed and produced by Francis Ford Coppola.

フランシス・フォード・コッポラが、当時スター候補だった若手俳優を集めて撮った1960年代が舞台の青春映画。貧困層の不良グループと裕福な家庭のグループの対立を描き、トム・クルーズは主人公の家に入り浸っているスティーヴ役を演じる。出番は少ないが、血気盛んなキャラを印象付ける熱演で、乱闘シーンでは役に入りすぎて親指を骨折してしまったほど。コッポラも後に、与えられた小さな役を「より良いものにするためには何でもやる熱心な子だった」と語っている。

『卒業白書』(1983)

RISKY BUSINESS - Tom Cruise, 1983

最初期の主演作。一流大学を目指すシカゴの高校生ジョエルが、両親の旅行中にコールガールを家に呼んでパーティを開いて大金を稼ぐというストーリー。両親を送り出した自宅で1人、シャツ1枚にブリーフとソックス姿で踊りながら、ボブ・シーガーの名曲をリップシンクするシーンはその後に何度もパロディ化された名場面だ。

床を滑るようにフレームインし、ワックスをかけて滑りやすい状況でピタリと狙った位置に止まる方法(粘着性のあるスプレーを床に吹き付ける)を考案したのはトム本人だった。編集室でショットが組み立てられるプロセスを学ぶなど、与えられた役を演じるだけに留まらない作品へのコミットはキャリア初期から始まっていたことがうかがえる。

RISKY BUSINESS - Rebecca De Mornay, Tom Cruise, 1983.

撮影当時20歳だったトムは4週間で14ポンド(約6キロ)減量し、筋肉を落とした後は運動せずに少しだけ脂肪をつけて子どもっぽい体型にした。手段を問わない高収入を得たジョエルの行動には1980年代の新自由主義の価値観に対する風刺も込められている。トム自身も1986年に『インタビュー』誌で、本作について「今日の資本主義についての作品」「ジョエルが社会を探検し、荒々しい資本主義の波に飲まれていくのを描いている」と語っている。ちなみにコールガールのラナを演じたレベッカ・デモーネイとは、撮影中の1982年から1985年まで交際していた。

『トップガン』(1986)

Tom Cruise on the set of Top Gun, directed by Tony Scott, 1986.

トムがアイドルからスーパースターにステップアップした初期の代表作こそが、『トップガン』だ。エリート航空戦学校に派遣されたアメリカ海軍の若きパイロットの成長物語。トムは天才的な技術を誇るが、無鉄砲な一匹狼の主人公を演じる。自信にあふれてエネルギッシュという、現在も保ち続けるイメージを確立させた名作だが、実はトムは主演の第一候補ではなかった。トムも当初は気乗りしていなかったが、プロデューサーの計らいで海軍の戦闘機に乗せてもらったら、気が変わったそう。

『ハスラー2』(1986)

THE COLOR OF MONEY, Tom Cruise, Paul Newman, 1986

名優ポール・ニューマンがビリヤードの名手を演じた代表作の続編で、監督はマーティン・スコセッシ。トムはニューマン演じる主人公と師弟のような関係を築きつつ勝負を繰り返す若きハスラー、ヴィンセントを演じる。キューを振り回す生意気な若者役だが、撮影現場のトムは先輩と監督を尊敬するあまり「サー」と呼び続け、居心地悪く感じたスコセッシに止められたそう。ニューマンを父のように慕い、彼に倣って一時期カーレースにのめり込み、『デイズ・オブ・サンダー』(1990)に主演、相手役に抜擢されたニコール・キッドマンと結婚した。

『レインマン』(1988)

RAIN MAN - Dustin Hoffman, Tom Cruise, 1988.

自己中心的な青年が父の莫大な遺産を相続したサヴァン症候群の兄を施設から連れ出し、故郷を目指すロードムービー。20代のトムは偉大な先輩たちと共演し、彼らから多くを学んでいた。ダスティン・ホフマンと共演した本作もそう。そして前作同様、先輩のアカデミー賞主演男優賞受賞をアシストした。ちなみに名優マイケル・ケインは本作のトムの演技が大のお気に入りで、「トムは見事に演じている」「大変な鍛錬と責任が要求されるものだ」と絶賛している。

『7月4日に生まれて』(1989)

Tom Cruise on the set of Born on the Fourth of July, based on the book by Ron Kovic and directed by Oliver Stone.

愛国心が強く海兵隊に入隊したもののベトナム戦争で負傷し、車椅子生活を余儀なくされた帰還兵が反戦活動に打ち込んでいく。ロン・コーヴィックの自伝小説をオリバー・ストーンが映画化し、トムが初めてアカデミー賞主演男優賞候補になった。トムは、脚本も担当したコーヴィック本人と面会し、アドバイザーとしてスタッフに迎え入れた。コーヴィックの傍らで数週間車椅子に座ったきりで生活し、ときには演技に気持ちが入りすぎて泣き崩れてしまったこともあったという。

『デイズ・オブ・サンダー』(1990)

DAYS OF THUNDER - Nicole Kidman, Tom Cruise, 1990

当時カーレースに夢中だったトムが原案を提供し、『トップガン』のスコット監督と再び組んだ作品。ずば抜けた運転技術を持ちながら挫折を経験したドライバー、コールが伝説的クルー・チーフのハリーとともにストックカーレース「デイトナ500」のウィンストン杯を目指す。レース中の事故でコールが担ぎ込まれた病院で治療にあたる医師、クレア役のニコール・キッドマンと1990年に結婚した。

著名な映画評論家のロジャー・エバートは、1980年代のトムの主演映画について「若く世間知らずだが、才能ある主人公。年長で男性の師。優れた女性。主人公が磨くべき技術。試練の場。彼が学ぶべき秘訣や知識。軌跡や遍歴。最初の敵。主人公にとっての最終的な敵」という公式があると記したが、本作にはそのすべてが揃っている。未熟なコールはハリーのもとで成長するが、20代のトムもコールと同様、年長の名優たちとの共演でスキルを磨いていた。トムは自分でレースカーを運転することを希望したが、保険上の理由で実現せず、大半をプロのドライバーが担当した。

『ア・フュー・グッドメン』(1992)

A FEW GOOD MEN - Tom Cruise, Demi Moore, Kevin Pollak, 1992

キューバにあるグアンタナモ米軍基地で起きた若い兵士の死亡事件の真相に迫る軍事裁判の法廷劇。名脚本家アーロン・ソーキンが20代の若さで手がけた戯曲の映画化で、『スタンド・バイ・ミー』や『恋人たちの予感』のロブ・ライナーが監督を務め、ジャック・ニコルソンがグアンタナモの基地司令官、ジェサップ大佐を演じる。トムは、良家出身でハーバードを卒業したエリート弁護士のダニエル・キャフィ中尉を好演。

軍隊内で規律を乱す者への暴力的制裁(コードR)による事件の裁判で、被告の兵士2人の弁護を命じられ、デミ・ムーア演じるギャロウェイ少佐とケヴィン・ポラック演じるワインバーグ中尉と組む。ダニエルは裁判を型通りに済ませようとして、真摯に取り組むギャロウェイ少佐と衝突する。生意気で騒がしい自信家を演じるのはトムの得意技で、女性であるギャロウェイ少佐に対するダニエルの舐め切った態度は実に苦々しい。そこから真実を追求するキャラクターへの変貌を鮮やかに演じ、ゴールデン・グローブ賞で主演男優賞賞にノミネートされた。

『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994)

Tom Cruise and Brad Pitt star in Interview with the Vampire by Neil Jordan

18世紀アメリカを彷徨う2人のヴァンパイアの物語。トムはブラッド・ピット演じる農場主ルイをヴァンパイアに変えた主人公レスタト役で、人間の良心を残したルイを焚きつけるように、欲望のまま残忍に行動する悪を魅力的に演じた。血を吸う演技は真に迫っているが、動物ドキュメンタリーでライオンがシマウマを襲うところを参考にしたそう。当初、原作者のアン・ライスはキャスティングに異を唱えたが、完成作を見て意見を覆し、トムに連絡して自分が間違っていたことを認め、謝罪した。

『ザ・エージェント』(1996)

Cuba Gooding Jr and Tom Cruise in a scene from the film 'Jerry Maguire', 1996.

敏腕スポーツ・エージェントの挫折と再生を演じ、「Show me the money」(大金を見せろ)の流行語も生まれたキャメロン・クロウ監督のコメディ・ドラマ。自己中心な主人公の成長や一緒に会社を立ち上げたシングルマザーとの恋愛など共感度高い役で、2度目のオスカー主演賞候補に。トムの資質の一つは共演者の名演を引き出すことだが、本作でも無名だったレネー・ゼルウィガーが相手役を演じて一躍脚光を浴び、キューバ・グッディングJr.はアカデミー賞助演男優賞を受賞した。

『ミッション・インポッシブル』(1996)

Tom Cruise as Ethan Hunt in a scene from the film 'Mission: Impossible', 1996.

1960〜70年代の人気ドラマの映画化として始まり、現在も進行中のシリーズ。初めてプロデューサー業に進出した作品でもある。トムといえば、命知らずのスタントアクションが今やトレードマークだが、その走りとなったのも本作。CIAの諜報部隊のエージェントとして、強風に晒されながら列車にしがみついたり、宙吊りになって機密情報を盗み出すシーンは今の時代ならミーム化間違いなしのアイコニックな名場面だ。本作以降、自らハードルを上げ続けて毎回超人的なアクションに挑戦している。

『マグノリア』(1999)

MAGNOLIA - Tom Cruise, Jason Robards Jr., 1999

華やかな映画スターであると同時に、性格俳優としても突出した才能の持ち主であることを証明したのが、ポール・トーマス・アンダーソン監督の群像劇『マグノリア』だ。トムは監督の前作『ブギーナイツ』(1997)に魅了され、次回作への出演を監督に直談判して実現した。彼が演じたフランク・T・J・マッキーは、男性たちの間でカリスマ的人気を誇るナンパ指南師。あやしげな自著を教材にセミナーを開き、「誘惑してねじ伏せろ」と聞くに堪えない女性蔑視の言動で集まった男性客たちを煽って荒稼ぎしている。

セミナーの合間に受けるインタビュー取材で鋭く追及する女性記者との心理戦で見せる表情も秀逸だが、圧巻は名優ジェイソン・ロバーズが演じる病床の父・アールとの対面シーン。死期迫るアールの枕元で、フランクは母と自分を捨てた父に積年の怨みをぶちまける。呪うように悪態をつき続けるうちに、思いがけず父を慕う気持ちがあふれ出す姿に心が揺さぶられる。

アールの看護師フィル役で共演したフィリップ・シーモア・ホフマンによると、セリフはほぼトムの即興だそうだ。脚本のセリフに違和感があるというトムの申し出に、監督はトム自身の父親が亡くなったときのことを考えるように促し、名シーンが誕生した。2人を見守るフィルの振舞いは演技ではなく、感情を曝け出すトムの姿に心を打たれたフィリップの反応そのままだという。トムは本作で第72回アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされ、ゴールデン・グローブ賞で助演男優賞を受賞した。

『アイズ・ワイド・シャット』(1999)

Tom Cruise And Nicole Kidman In 'Eyes Wide Shut'

妻だったニコール・キッドマンとの共演3作目は、巨匠スタンリー・キューブリック監督の遺作となった。倦怠期を迎えた医師夫妻が、友人宅のパーティーで妖しい世界に誘い込まれていく。トムはニコールを伴って監督に直談判した結果、出演が決まった。英国在住の監督のためにトムたちが渡英し、1年以上にも及ぶ長い撮影期間はギネス記録にもなった。劇中の関係を強調するために監督が2人を別々に演出し、このときの経験も一因となってか、トムとニコールは映画公開から2年後に離婚した。

『バニラ・スカイ』(2001)

VANILLA SKY - Penelope Cruz, Tom Cruise, 2001

スペインのアレハンドロ・アメナーバル監督の『オープン・ユア・アイズ』のリメイクで、『ザ・エージェント』(1996)のクロウ監督との再タッグ作。オリジナルでヒロインを演じたペネロペ・クルスが同じ役で出演している。ニューヨークを舞台に、大手出版社の後継者でプレイボーイの主人公デヴィッド・エイムスを演じた。

物語はデヴィッドが殺人容疑で逮捕され、自動車事故で重傷を負った顔をマスクで覆った姿で精神分析医と会話する形で進んでいく。自分の誕生パーティーで友人が連れてきたソフィアに一目惚れしたが、以前から付き合っていた女性が嫉妬を募らせ、彼を道連れに自動車事故による無理心中を図ったこと。命をとりとめたものの顔に修復不可能な傷を負って自暴自棄になり、ソフィアの献身的な支えで事故のトラウマを乗り越えたこと。回想の中で順調に回復していたデヴィッドだが、次第に悪夢に悩まされて殺人を犯したこと、さらに驚愕の真実が明らかになる。

撮影中からトムとペネロペにはロマンスの噂が流れ、トムはクランクアップ前にニコール・キッドマンとの破局を発表。撮影終了後にペネロペとの交際が始まり、関係は2004年まで続いた。デヴィッドとソフィアが仲を深めていく描写には、演技を超えたトムとペネロペの関係が垣間見える親密さが漂っている。虚実が入り混じる複雑な構造を壮大なスケールで映像化したシーンも見どころだ。デヴィッドが誰もいないニューヨークの街を駆け抜け、無人状態のタイムズスクエアに佇む場面はCGIなどではなく、実際に通行止めをして日曜早朝に短時間で撮影を行った。

『マイノリティ・リポート』(2002)

"Minority Report" - Tom Cruise, directed by Steven Spielberg.

フィリップ・K・ディックの同名短編小説をスティーヴン・スピルバーグ監督が映画化。2人は以前から一緒に仕事したくて企画を探していたところ、トムが原作を見つけてきた。殺人予知システムが実用化された近未来の世界で、次に殺人を犯すと予見された刑事をトムが演じ、無実の罪を晴らそうと孤軍奮闘する主人公を熱演。スピルバーグは「君がどのスタントをやるのか決めるのは私だ」とトムが危険すぎるスタントに挑まないよう契約したが、結局ほとんどトム自身がこなしている。

『ラストサムライ』(2003)

THE LAST SAMURAI - Tom Cruise, 2003

明治維新後、政府軍に招かれて来日したアメリカ軍人が、政府と対立する士族たちの侍魂に惹かれて行動をともにする物語。親日家でもあるトムは準備に2年をかけ、「武士道」など関連書籍を読みあさり、刀を振りかざす筋肉をつけて大幅増量し、毎日数時間剣術の訓練に励んだ。クランクイン前には自宅のテニスコートで野営生活をしたことも。共演者たちの名演を引き出し、渡辺謙がアカデミー賞助演男優賞候補となった。真田広之も本作を機にハリウッドに進出、現在に至るまで活躍し続けている。

『コラテラル』(2004)

COLLATERAL - Tom Cruise, Jamie Foxx, 2004

『ヒート』(1995)やTVシリーズ「TOKYO VICE』」(2019)など硬派なアクションを手がけるマイケル・マン監督のもと、冷血な殺し屋という本格的な悪役に挑戦した作品。ロサンゼルスのタクシー運転手マックスが偶然乗せた客が実はヒットマンで、意に反して殺人ミッションの片棒を担がされた一夜の物語だ。ジェイミー・フォックスが演じるマックスに高額の料金を提示し、彼が運転するタクシーで街中を回り、一夜のうちに複数のミッションをこなすヴィンセントを演じた。

銀髪にグレイスーツのヴィンセントは目立たず神出鬼没という設定だが、監督は大スターのトムが周囲に気づかれずに行動することは可能なのか疑問に感じていた。そこでトムに宅配便の配達員として荷物を届けるというお題を出したところ、トムはUPSのユニフォームを着てロサンゼルスのセントラルマーケットの人ごみに紛れ、誰にも正体を悟られずにミッションを遂行し、監督を感心させたという。

また、ヴィンセントが椅子を投げてガラス壁を破るシーンで、彼は投げた椅子につまずくが、これは演出ではなく撮影中のアクシデントだった。トムはそのまま演技を続け、その異様な迫力を気に入った監督はそのまま本編に使った。ロサンゼルスの夜を鮮明に描くために、当時はまだ珍しかった高解像度カメラによるデジタル撮影が行われた。ヴィンセントたちの車の前をコヨーテが横切るシーンがあるが、これはロケ現場近くに偶然現れたコヨーテを照明なしで撮影したショットを使用したものだ。

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)

EDGE OF TOMORROW - Tom Cruise, Emily Blunt, 2014.

日本の同名ライトノベルを脚色。近未来、地球に突然現れた宇宙生物ギタイの猛攻に対抗する統合防衛軍の女性軍曹リタ・ヴラタスキと、戦闘経験ゼロながらタイムループ能力を身につけて戦場で生死を繰り返す広報官ウィリアム・ケイジ少佐の物語。勇敢なヒーロー役はエミリー・ブラントに任せて、トムは凄腕広報官だが戦闘が大の苦手という設定で、普段とは違う表情も見られる。リアルなパワードスーツの制作ではトムも開発に加わった。

『トップガン マーヴェリック』(2022)

ウィングマン(僚機)を決して見捨てないという信念のもと、ブラザーフッドや友情、忠誠心を核にしたマーヴェリックと若きトップガンたちの物語として作られた『トップガン マーヴェリック』。『トップガン』(1986)の続編を望む声が30年以上絶えなかったが、トムはスタジオに「すべてを実際に撮影する」と宣言。可能な限りのリアリズムを追求し、キャストたちは実際に飛行中のF/A-18のコックピットで演技をし、セリフを話しているのが前作との大きな違いだ。トムは、空母USSセオドア・ルーズベルトのデッキからの離陸シーンを実演している。

Text: Yuki Tominaga

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