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植物コラボで楽しむ夏のガーデニング〜野菜トリビア&コンビネーションプランツ〜

  • 2024.7.4
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ガーデニングは、育てる植物を自由に選ぶことができ、好きな組み合わせを試せる、とてもクリエイティブな趣味です。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが今回ご紹介するのは、「コンビネーション」をキーワードに、1株で2種の野菜が収穫できる接木野菜の話題と、異なる植物を組み合わせる植栽アイデアについて。ドイツでいま話題の新しい野菜や人気のトマト、そして、夏の植物の組み合わせについてご紹介します。

夏の到来

夏の庭
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

今年もそろそろ季節は夏へ。また暑い日々がやってきますね。湿気が多く気温の高い湘南の夏は、乾いて涼しいドイツの夏に比べると過ごしにくく、いまだに慣れません。けれど、海のほうから吹いてくる心地よい風が、少しだけ暑さを和らげてくれます。店頭に並ぶスイカは、丸い外見の中に隠れた冷たく瑞々しい果実を想像するだけでも、この地域の夏を乗り切る手助けをしてくれます。

この季節、夏に向けてローメンテナンスでOKな植物や、植物の組み合わせを探したい時期です。定番の組み合わせはもちろんのこと、新鮮だったり、想像していない組み合わせをガーデンセンターで発見するのも楽しいものです。

梅雨どきは挿し木や接ぎ木に向く季節

接ぎ木
Andrei Shcherbinin/Shutterstock.com

湿度が高く植物の生育が旺盛な梅雨どきは、植物を増やすのに挑戦してみるのも面白いですよ。種まき、挿し木をはじめ、植物を増やすには、種子、枝、根、球根などからなどいろいろな方法があります。

古くから行われてきた植物の増やし方に、接ぎ木があります。これは、既存の樹木の芽や小枝を、台木となる別の木の幹や枝につなげて成長させ、新しい株を増やす方法で、果樹によく使われます。台木は、サイズや適合性、土壌条件や寒さへの耐性を考慮して選ばれます。接ぎ木の歴史は古く、紀元前から2,000年以上にわたり行われてきた手法です。

接ぎ木で生み出された新感覚野菜苗トモッフェル(TOMOFFEL)

このように、2種の異なる植物を組み合わせるのは、決して新しい考えではありませんが、近年では野菜苗でも接ぎ木が多く普及し、カボチャを台木にしたキュウリ、ナス、スイカなどを一例に、たくさんの種類の接ぎ木苗があります。

さて、最近、ドイツの市場にはトモッフェル(TOMOFFEL)という新しい植物が登場しています。TOMOFFELという名前は、ドイツ語のトマト(Tomate)とジャガイモ(Kartoffel)を組み合わせた造語。このトモッフェル、なんと地上部ではトマトが、地下ではジャガイモが実るのです! 別名はTOM TATOで、こちらですでに商標登録もされています。

トモッフェルは新種ではなく、既存の植物を接ぎ木により組み合わせたもの。トマトの芽をジャガイモの枝に接ぎ木すれば、このようなことが可能です。生育としては、初めにトマトが育ち、実が実ります。それからしばらくするとジャガイモが育ち、収穫できるようになります。トモッフェル専用の鉢もあり、収穫が簡単にできてトマトを傷めないので、栽培してみたい人におすすめ。苗と鉢のセットを購入すれば、簡単に栽培をスタートできますよ。

いままでは別々の場所に植えるものであったトマトとジャガイモ。トモッフェルならば省スペースで2種類を栽培でき、バルコニーガーデンにも面白いアイデアです。もっとも、現時点では「面白いアイデア」という面が強く、さほど多くの収穫は期待できません。

ドイツで人気のトマトたち

トマトの種類
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

トマトはドイツでもとても人気が高く、趣味のガーデナーなど多くの人が栽培しています。サイズ、形、色、性質など、そのバリエーションの豊かさは膨大。一度トマトの品種バリエーションをいくつか集め始めると、つい蒐集してしまう中毒性があります。自分で育てれば、プチっと摘み取ってそのまま口に放り込むという喜びもひとしお。強健で育てやすく、増やすのも簡単ですよ。栽培中はあまり濡れないほうがよいので、雨風から守られる、屋根がある壁の前などでよく育ちます。

そんなドイツ中のトマト愛好家が頼りにしているのが、ドイツ南部、森と平野のはざまにある小さな農場。ここではおよそ1,200種の栽培用トマト品種、500種のチリやパプリカ品種を保有しています。一人の人物が、どうやってそれほどたくさんの種類を集めることができたのでしょうか?

ここのオーナーの方は東欧にルーツを持ち、子どもの頃から既にさまざまな品種を集めていました。当時、彼女は両親の農場を手伝い、長い冬に備えてたくさんの野菜の保存をしていたそう。ドイツに移住してからは、母国での経験や学んだことを生かし、また伝統品種も故郷から多数入手して販売しています。

美味しいトマトを味わうだけでなく、そのトマトが自宅の菜園にやってくるまでのちょっとしたエピソードや有名人にちなんで名づけられたストーリーなどを知ることができれば、より愛着が湧きますね。

日本でよく見かけるトマトとは一味違うトマトの仲間をいくつかご紹介しましょう。

ビーフステーキトマト

ビーフステーキトマト
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

日本ではまだマイナーですが、ドイツなどではビーフステーキトマトと呼ばれる大きくて肉厚なトマトがよく栽培されています。例えば、Ochsenherzというトマトはドイツでとても普及している品種です。これらの種類は、大きくなって赤く色づくまでに時間がかかるのが難点で、私は栽培したことがありませんでした。収穫を待ちきれませんし、こうした品種は特に変わった味がしないので、ちょっとつまらないと思っていたからです。そのため、購入するのはもっぱら大玉トマトでした。

ところが先日、イギリスで有名なビーフステーキトマトMarmandeを食べる機会があり、この認識を覆されました。このトマトは肉のような食感と強い風味を持ち、サンドイッチに挟んだり、調理用にぴったり。そして、なにより驚かされたのが、これらのビーフステーキトマトは、しっかり熟すととても美味しいということ。1個のトマトで2人が十分食べられるので、コストパフォーマンスから見ても効率的です。

マイクロトマト

マイクロトマト
Mabeline72/Shutterstock.com

大きくて肉厚なビーフステーキトマトの対極にあるのが、マイクロトマト。小さな可愛い実を付けます。黄色や緑などの色もあり、スグリにも似たサイズなので、ドイツ語ではスグリに由来する「Johannisbeertomaten」という名前で呼ばれます。ガーデンやバルコニーで栽培しながら、毎日ちょっとつまむのにぴったりのサイズ感。株の横を通りがかるたびに、一口食べたくなります。収穫期は6月から初霜が降りる11月頃までと長く、栽培も簡単です。

トマティーヨ

トマティーヨ
Plateresca/Shutterstock.com

トマティーヨという名前ですが、じつはトマトの仲間ではありません。もっとも、ナス科の果菜類という点では共通しています。

未熟なトマトのような緑色の実は、カサカサとした薄い殻に覆われていて、和名のオオブドウホオズキの名のとおり、ホオズキによく似ています。殻をむくと現れる明るい緑の実は、とてもおいしそう。メキシコ料理でよく使われ、またイタリア料理のソース、サルサヴェルデを作るのに欠かせない食材です。

サマーガーデンにおすすめの植物の組み合わせ例

花の組み合わせ
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

植物を組み合わせるというのは、接ぎ木のように2種を一株にする手法もあれば、寄せ植えや花壇のように、さまざまな植物を配置して景色を楽しむための組み合わせもあります。極端に生育環境の異なる植物同士を合わせなければ、組み合わせ方は自由自在。ぜひ、お気に入りの組み合わせを見つけてみましょう。

ここでは、いくつかのバリエーションをご紹介します。

ブルー&ホワイトの夏のガーデンアレンジ

ブルー&ホワイトの花壇
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

青と白の組み合わせは、その色合いを持つデルフィニウムやカンパニュラが手に入りやすいことから、取り入れやすいカラーコーデです。涼しげなので、夏のガーデンにもおすすめ。青と白のデルフィニウムを混植するほか、青のデルフィニウムと、白い花としてガウラや宿根フロックス、モモバギキョウを組み合わせるのもいいですね。モモバギキョウは開花期間が長く、また花がら摘みや切り戻しになどの手入れでさらに長く楽しむことができます。

デルフィニウムを地植えにする際は、少し注意が必要。強い雨風によって倒れたり傷みやすく、一夜にしてその美しさがなくなってしまうこともあります。けれど、その冴えた青色は美しく、育てる価値は十分にあります。適した場所を見つけられたら、本当に美しい姿が見られますよ。

クラシックでエレガントなホワイトアレンジ

ホワイトガーデン
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

イギリス・ケントのシシングハーストカースルガーデンは、その完璧なまでに美しいホワイトガーデンで有名です。花壇を縁取る緑の生け垣と、白花ばかりを集めた花壇は、背景のレンガの城や塀と鮮やかなコントラストを描きます。個人的には、暗赤色のレンガ造りのイギリスの城の多くは、その大きさと周囲に何もないことも相まって、ちょっと重厚すぎるように感じてしまいます。フォーマルガーデンやランドスケープデザインがそうさせるのかもしれません。

けれど、ホワイトガーデンの美しさは格別。そこからインスピレーションを得て、自宅にもホワイトガーデンをつくってみるのはいかがでしょうか。ホワイトガーデンに利用したい花は、白花のピオニー、宿根フロックス、ヤツシロソウ、シルバーリーフも魅力のリクニス・コロナリアやセント―レア・モンタナ、ニガヨモギなど、たくさんの種類があります。

我が家の夏の庭に咲くローメンテナンスな花々

ヘメロカリスとルドベキア
我が家の庭に咲くヘメロカリス(左)とルドベキア(右)。

私のパーマカルチャーガーデンでは、今年はルドベキアとヘメロカリスが美しく育っています。このエリアには、非常に強健で、かつ周囲の緑から浮き上がり広い庭でも主張するはっきりした色合いの花が欲しかったのです。

ルドベキアは土に種子を播いた状態で届き、そのまま土に置いておいたらその場所で発芽してしまいました。じつは庭の小径の真ん中で育ってしまったのですが、幸いただの土の通路だったので、通路のほうを植物に合わせるように変更しました。

毎年、本当にヘメロカリスは頼りにしています。花数も多くたっぷりと咲き、発色も素晴らしいですし、ローメンテナンスで、手入れは時々花がら摘みとして終わった花を取り去るだけです。将来、いくつかの種類を追加すれば、よりカラフルなガーデンになっていいかもしれません。

サマーガーデン
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

夏はいろいろなガーデンやガーデンセンターを見て回るチャンス。もし気に入った植物や組み合わせ方があれば、ぜひ写真を撮って記録しておきましょう。後から見返して確認したり、同じや似た組み合わせを再現するときに役立ちます。特に、台風の後にもきれいな姿を保っているものは、強い植物として覚えておきたいもの。新しい経験やチャレンジができる夏が待っています!

Credit
話・写真 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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