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「住宅ローンのつきぬ不安」元税理士事務所経理が言語化してみた

  • 2024.7.4

ワクワクするはずのマイホーム購入。

それはほとんどの人にとって人生で一度きりの一大イベントである。

しかし同時に大きな不安と責任を背負うこととなる、覚悟が必要なイベントだ。

今回は住宅ローンにつきまとう4大不安について、元税理士事務所経理担当の筆者がトントンと語ろう。それぞれの解消法も紹介するので、住宅購入を検討している人はぜひ参考にしてほしい。

■不安1:審査に落ちるかもしれない

まず、住宅ローンの審査に落ちるかもしれない不安について見ていこう。

金融機関によって異なるが、住宅ローンの審査では以下のような項目が重視される。

・年収
・勤続年数
・完済時の年齢
・個人信用情報
・返済負担率
・購入物件の担保価値

クレジットカードの支払いを延滞したことがある人や、住宅ローンの審査に申し込む直前に転職をした人などは審査に通るか不安になるだろう。

一定の審査基準を満たしていないと、住宅ローンの審査に通過しない可能性が高い。

特に勤続年数は重要だ。一般的には、住宅ローンの審査に通りやすい勤続年数は3年以上と言われるため、住宅ローンを申し込む3年以内は転職を控えることが望ましい。ただし、転職先が上場企業だったり、国家公務員・地方公務員としての入職だったりした場合は、3年以内の転職であってもチャンスはある。実際に申し込みができるかどうかはケースバイケースなので、まずは金融機関や不動産会社に相談してみよう。

また、審査に不安があるなら頭金の額を増やし、融資額を減らす方向で考えよう。金融機関にとっては貸す額が少ないほど負うリスクは少なくなるうえに、まとまった頭金を用意できるだけの経済的余裕があるなら問題ないと判断される可能性もある。

■不安2:毎月返済していけるのか

住宅ローンを組んで毎月返済していけるのか、不安に感じている人もいるだろう。

住宅ローンを組めば、毎月一定の金額を滞りなく返済する必要があり、返済が滞れば担保に入れた物件が差し押さえられる可能性もある。

このような返済に対する不安は、返済負担率を考慮して借入金額を決めることで払拭できる。

返済負担率とは、年収に対するローンの割合のことだ。一般的には返済負担率が手取り年収の35%以内であることが「無理なく返済できる金額」とされている。

つまり、年収が800万円の人は年間の返済額が年間280万円、月23万円以下であればよいことになる。

しかし、実際に35%と設定してしまうと返済額が大きくなってしまうため、返済の負担を軽減するためには、返済負担率を20%程度にすることがおすすめだ。先ほどの年収800万円の人だと、年間の返済額160万円、月13万程度が現実的なラインになる。

■不安3:家の価値が下がるかもしれない

家の価値が下がることを危惧して住宅ローンを組まない、という人もいるかもしれない。前提として、そもそも家は人が住まなくても経年劣化により傷んでいくので、そういう意味では価値が下がらない家はない。

しかし、なるべく価値が下がりにくい家を選べばその不安は少し払拭できる。まず、立地に目を向けると以下の点を満たす場所であればポイントが高くなる。

● 都心のオフィス街にアクセスしやすい
● 最寄駅から徒歩10分以内
● 周囲に商業施設や病院、公的機関などがあり生活に便利

また、家の構造も価値には影響する。可変性の高い間取りやリフォームしやすい構造であれば、売却時の査定額も高くなるだろう。

■不安4:定年退職後の返済が心配

住宅ローンの借り入れ条件によっては、定年退職後も返済が続くケースがある。

定年退職して年金暮らしを始める際、住宅ローンが完済できていないと生活に不安を感じるだろう。

計画的に老後資金を確保できれば、住宅ローンの返済をしながらもゆとりのある生活を送れるかもしれない。

住宅ローンを返済しながら老後資金を貯めることが難しい場合は、住宅ローンを組むときに頭金を多めに用意するか、繰り上げ返済をするのがおすすめだ。

頭金を用意または繰り上げ返済できれば借入額が減るので、返済期間を短くしたり、毎月の返済額を減らしたりでき、その分老後資金のための貯蓄ができるのが大きなメリットだろう。

ただし、繰り上げ返済には手数料が発生するため、ある程度まとまった資金が集まったタイミングで繰り上げ返済をするのをおすすめする。

実際に、繰り上げ返済をすればどれだけ負担が少なくなるのか、具体的な数字を用いて検証してみたい。以下の条件で住宅ローンを組んでいたとしよう。

● 当初借入額:3,500万円(ボーナス返済分はなし)
● 当初借入期間:30年(うち返済済み期間10年)
● 返済方法:元利均等返済
● 借入金利:初回から0.4%、11年目から0.6%
● 繰り上げ返済は返済期間を短縮する前提で行う

仮に10年過ぎたところで300万円を繰り上げ返済した場合、残りの返済期間は17年5ヶ月となり、利息は34万8,531 円減少する。

なお、計算にあたっては繰り上げ返済が「返済済み期間」の翌月に行われるものとしている。

■不安を感じたら専門家を頼ることも大切

ほとんどの人にとって、住宅ローンを組むのは人生で初めての体験になるはずだ。それだけに、ここで紹介したこと以外にもわからないことばかりで不安になるかもしれない。そんなときは、どんな些細な事でも良いので専門家に相談してみよう。不安を放置していても何も良いことはないため、積極的に頼って欲しい。

文・荒井美亜(金融ライター/ファイナンシャル・プランナー)
立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融マネー系ライターとして活動中。日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。

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