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ドラマのような骨肉の争いはこうして起きる…相続財産の規模にかかわらず親族でモメるたった一つの理由

  • 2024.7.4

相続で幸せになる人は何を身につけているのか。相続問題に詳しい税理士の天野隆さんは「相続の局面ではプラス思考が重要。日頃から『イラッとしたときの心構え』と『ツキカエタの法則』を身につけるといい」という――。

※本稿は、天野隆、税理士法人レガシィ『相続格差 「お金」と「思い」のモメない引き継ぎ方』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。

子供の前でけんかをする男女
※写真はイメージです
相続する人の考え方が一番重要

モメる相続とモメない相続の違いはどこにあるのでしょうか。

私は、相続する人の考え方が一番重要なのではないかと思っています。

「親が私たちに財産を残してくれてありがたい」

「お金も大切だけど、親族が仲良くすることはもっと大切」などと物事をプラスに考える「プラス思考」の人ばかりだと、相続はモメません。

一方、「どうも、うちは損している気がする」「妹は親の面倒も見なかったんだから、もっと相続額は少なくていいじゃないか」などと「マイナス思考」の人が多いと、相続はモメる傾向にあります。

モメない相続のために今すぐできること

図表1は、世の中の相続を、大まかに4つのパターンに分けてみたものです。縦軸は考え方の違いで2つに分けており、上が「プラス思考」、下が「マイナス思考」の家族です。横軸は財産の大小で、右が相続財産の多い家族、左が相続財産の少ない家族です。

【図表1】相続の4つのパターン
出典=『相続格差 「お金」と「思い」のモメない引き継ぎ方』

こうして4つのパターンに分けたとき、右上は資産家で「プラス思考」の家族になります。財産もあって「プラス思考」という理想的な家族です。もちろんそうした家族は一定数存在しているのですが、なかなかメディアでは紹介されません。

右下は、財産が多くて「マイナス思考」の家族。これは、相続に際して骨肉の争いになる恐れがあります。テレビの弁護士ドラマの題材になるのはこうした家族で、主人公をいじめる意地の悪い人物も登場してきます。実際には、むしろ例外的な存在ですが、珍しいケースがたまに発生するから、ゴシップ記事を賑にぎわせるわけです。

左上は、財産が少なくて「プラス思考」。「お金はそんなにないけれど、それよりも大切なものがあるよね」という、ほのぼの家族といってよいでしょう。

左下は、財産が多くないのにモメる家族。多くない親の遺産をめぐって争う、ギスギス家族です。遺産分割協議がまとまらずに家庭裁判所に持ち込まれるのは、このパターンです。

モメない相続のために今すぐできるのは、考え方をプラスにすることだとおわかりでしょう。財産をいきなり増やすのは不可能ですが、考え方を変えることはできます。考え方を「プラス思考」に変えることで、モヤモヤ相続もすっきりします。ギスギス家族に陥ることなく、ほのぼの家族を目指しましょう。

相続におけるプラス思考とは

「プラス思考」がよいということは、世の中の多くの人が口にしています。ただ、その割に具体的にどう考えればよいのか、ピンとこない人も多いと思います。そこで、相続の場面における「プラス思考」について、私なりに考えてみました。

その根本にあるのは、ものの見方だと思います。図表2の50円玉の写真を見てください。はたして、この50円玉の穴はへこんでいるでしょうか、出っ張っているでしょうか。

【図表2】物事は「見え方」「考え方」を変えれば違って見える
出典=『相続格差 「お金」と「思い」のモメない引き継ぎ方』

最初はへこんでいるように見えるかもしれませんが、じっと見つめていると出っ張っているようにも見えてきます。同じ1枚の写真なのに、こちらの見方によって、へこんでいるようにも、出っ張っているようにも見えるのです。

同じように、1つの出来事、1つの行為に対して、見方や考え方を変えることで、評価はいくらでも変わります。時に、正反対にもなりえます。

例えば、親が自分に対して距離をおいて振る舞っているとしましょう。それを単に冷たい態度だととらえるのか、実は自立させようとあえて距離を取っているととらえるのか、それは受け手のあなた次第だというわけです。

冷静に考えれば、かわいいわが子を憎く思う親はほとんどいません。この態度は自分のためを思っているのだなと「プラス思考」で考えれば、親子の関係はうまくいきます。

しかし、それを「マイナス思考」で「冷たい親だ」、あるいは「自分は嫌われているんだ」などと考えると、親子の関係がぎくしゃくしてしまいます。相手はそんなことを考えていないのに、自らの「マイナス思考」でどんどん状況を悪くしてしまうわけです。

イラッとするのは自分の得意分野の発見

「プラス思考」については、本書でのちほど詳しく述べますが、ここでは「プラス思考」のクセをつける方法を2つ紹介しましょう。「イラッとしたときの心構え」と「ツキカエタの法則」です。

相続の手続きにおいて、きょうだいの行動や反応が遅くてイライラすることがあるかもしれません。日常生活でも、会社の同僚や部下の仕事が遅くてイラ立つことがあるでしょう。でも、そこで「あいつはダメなやつだ」「私に対して悪意があるんじゃないか」と受け取るのが「マイナス思考」です。

「プラス思考」で考えてみると、相手の遅さに気づくことは、自分の行動や仕事が早いことを意味しています。自分の仕事のペースに合わないから、遅い人に対してイラ立つわけです。

同様に、挨拶をしない人を見てイラ立つのは、自分は挨拶が得意だから、そうでない人が気になるのだと考えればいいのです。もし、自分も挨拶しなければ、他人の悪さには気がつかないはずです。

ですから、イラついたときは、イライラをそのままぶつけるのではなく、裏返して考えてみるといいのです。他人の不得意な点に気づいたら、「そうか、これは自分の得意分野なんだ。いいチャンスを与えられた」とプラスに考えましょう。

イラついたときに、たいていの人は相手を変化させようとしますが、それは無理なことです。仕事のペースが遅い人に早くしろといっても無理。文章が下手な人にうまい文章を書けというのも無理なことなのです。

上向きの矢印
※写真はイメージです
プラスもマイナスも思考は伝染する

相続でも同じこと。がさつな兄に対して繊細になれといっても無理。せっかちすぎる妹に、じっくり考えてほしいといっても無理なのです。それが理解できれば、相続でイラッとしたときにも腹を立てることがなく、「プラス思考」で受け流すことができます。

「プラス思考」は、人に伝染するという性質があります。

天野隆、税理士法人レガシィ『相続格差 「お金」と「思い」のモメない引き継ぎ方』(青春新書インテリジェンス)
天野隆、税理士法人レガシィ『相続格差 「お金」と「思い」のモメない引き継ぎ方』(青春新書インテリジェンス)

1人が「プラス思考」になれば、周囲の人を巻き込んでみんなが「プラス思考」になっていきます。相続の場面でも、自分の主張ばかりしないで他人の話を丁寧に聞く人がいれば、ほかの人もにこやかになって平和に進んでいくことが多いのです。

しかし、困ったことに、「マイナス思考」にはもっと早く伝染する性質があります。誰かが「あんたの奥さんは気が利かない」などということを口走ると、「なんだ、そこまでいうか」「じゃあ、お前のところはどうなんだ」と、どんどん「マイナス思考」が伝染していってしまいます。さらには、自分の奥さんにそれを伝えようものなら、「あの弟がそんなことをいったの⁉」と何倍もの感染力で広がってしまいます。こうなったら、ちょっとやそっとでは譲れません。そんな相続の現場を私は何度も見てきました。

「ツキカエタの法則」でプラス思考へ

そうならないために、私が考えたのが「ツキカエタの法則」です。これは、「プラス思考」になるための5つの心構えについて、その頭文字を取ったものです。

・ツ……ツイている人は、ツイている人とつきあうとさらにツキがつくということ。プラスな人とつきあうと「プラス思考」になり、マイナスな人とつきあうと「マイナス思考」になってしまいます。

そして、ツイている人はどういう人かというと、次のような人です。

・キ……聞き上手。ほかの人の話をよく聞く人はツイてきます。
・カ……感謝上手。「ありがとう」という言葉を使う人はツイてきます。
・エ……笑顔上手。笑顔のあるところには、もちろんツキがきます。
・タ……他人に親切上手な人にも、もちろんツキがきます。

私も、何か心がモヤモヤしたときには、この「ツキカエタの法則」を暗唱することにしています。相続の場面でも日常生活でも、「ツキカエタの法則」を思い出すことで「プラス思考」になれるのです。

お茶を飲みながら笑顔で話す二人の女性
※写真はイメージです

天野 隆(あまの・たかし)
税理士法人レガシィ代表社員税理士・公認会計士
1951年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。アーサーアンダーセン会計事務所を経て、1980年から現職。著書に『やってはいけない「実家」の相続』(青春出版社)など多数。

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