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伝説のオーパーツ「アンティキティラ島の機械」に新説が浮上!

  • 2024.7.3
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伝説のオーパーツ「アンティキティラ島の機械」に新説が浮上!
伝説のオーパーツ「アンティキティラ島の機械」に新説が浮上! / Credit: UofG – GRAVITATIONAL WAVE RESEARCHERS CAST NEW LIGHT ON ANTIKYTHERA MECHANISM MYSTERY(2024)

その時代の文明にはそぐわない、当時の技術力では説明ができない遺物のことをオーパーツと呼びます。

人類はこれまでに数多くのオーパーツを発見してきましたが、中でも特に有名なのが「アンティキティラ島の機械」です。

これは古代ギリシャ時代の遺物であり、長年の研究から天体運行を計算するためのツールであることが確実視されています。

さらに今回、英グラスゴー大学(UofG)の最新研究により、これまで知られていなかった用途が明らかになってきました。

それによると、この機械は354日周期の太陰暦カレンダーとして使われていた可能性が高いようなのです。

それでは、アンティキティラ島の機械の謎を一緒に追ってみましょう。

研究の詳細は2024年6月27日付で学術誌『Horological Journal』(PDF)に掲載されています。

目次

  • 当時として「1000年先を行く技術力」が詰め込まれていた!
  • 新たな用途が発覚!1年のカレンダーは「太陰暦」を採用していた?

当時として「1000年先を行く技術力」が詰め込まれていた!

アンティキティラ島の機械が見つかったのは1901年のこと。

地中海にあるアンティキティラ島の近海に沈んでいた沈没船から回収されたのです。

発見された時点で機械の大部分が錆びており、部品もおそらく全体の3分の2が欠落した状態にありました。

加えて、無事に残っていた部分も80以上の断片に割れてしまっており、復元はかなり骨の折れる作業でした。

しかし研究者たちの努力により、アンティキティラ島の機械は元々、靴箱サイズの長方形をしていたことが特定されています。

発見された「アンティキティラ島の機械」の実物
発見された「アンティキティラ島の機械」の実物 / Credit: UofG – GRAVITATIONAL WAVE RESEARCHERS CAST NEW LIGHT ON ANTIKYTHERA MECHANISM MYSTERY(2024)

発見されたばかりの頃は、まだその機械の複雑さや重要性は気づかれていませんでした。

ところが数十年にわたる研究の末、人類史上の驚くべき遺物であることが明らかになってきたのです。

まず、発見場所や機械に記された文字から古代ギリシャで製作されたことは間違いなく、その年代は紀元前1〜3世紀の間であると推定されています。

今から2000年以上も前のことです。

さらに研究者たちが驚いたのは、あまりに精巧な機械じかけの造りでした。

細かなパーツが小さな歯車を介して絶妙なバランスで動く仕組みになっていたのです。

専門家によれば、これと同じレベルの複雑さを持った機械はそれから1000年の時を経るまで現れていないという。

元々は靴箱サイズの長方形だったらしい
元々は靴箱サイズの長方形だったらしい / Credit: ja.wikipedia, canva / ナゾロジー編集部

こうして復元されたアンティキティラ島の機械は現在、天体運行を計算するために作られた手回し式の太陽系儀であることがわかっています。

英カーディフ大学(Cardiff University)のマイケル・エドマンド(Michael Edmunds)氏は、その機械じかけの精巧さについてこう評しています。

「この装置はこの種のものとしては抜きん出ている。デザインは美しく、天文学から見ても非常に正確に出来ている。機械のつくりにはただ驚嘆させられるばかりだ。
これを作った者は恐ろしく丁寧な仕事をした。歴史的にまた希少価値から見て、私はこの機械はモナ・リザよりも価値があるといわねばならない」

この発見から、古代ギリシャ文明は研究者たちが考えていたよりも遥かに優れた技術力を持っていたことが明らかになってきました。

では具体的に、アンティキティラ島の機械はどのように使われたのでしょうか?

新たな用途が発覚!1年のカレンダーは「太陰暦」を採用していた?

復元の結果、機械の表示板は全部で3つあり、1つは前面に、2つは背面についていました。

※「アンティキティラ島の機械」の全体の復元像については下図をご参照ください。

背面の2つの表示板は比較的シンプルな造りで、おそらく「1年の各月の名前」と「日食の観測」のために使われたと見られています。

その一方で、前面の表示板は特に複雑な作りをしていました。

3つの針が見られ、1つは日付を、残り2つは月と太陽を表していたと考えられています。

さらに表示板には、リング型のメモリが同心円状にいくつか並んでおり、それぞれが1年のカレンダー黄道十二星座の位置を示すものとして機能していました。

それにより例えば、月の針を動かすと、各日における月の位置がわかるというわけです。

「アンティキティラ島の機械」の全体像を復元したもの
「アンティキティラ島の機械」の全体像を復元したもの / Credit: UCL(2021), canva / ナゾロジー編集部

またこれまでの研究で、1年のカレンダーを表すリングメモリは365日周期でまわる「古代エジプト式の太陽暦」が採用されていたと考えられてきました。

古代エジプトの太陽暦は、太陽の運行にもとづいた暦であり、1年が365日で構成され、それを12カ月に分けています。

各月は30日で構成されており、あとの5日分は年末に祝祭日として追加されていました。

太陽暦は太陽の運行にもとづくため、季節の変化や農業サイクルの把握に適した暦です。

ところが2020年になって、ある研究者チームがカレンダーのメモリをX線で調べてみると、リングの下に無数の穴が規則的な間隔で開けられていたことが判明しました。

リングは壊れていて不完全だったため、全部で何個の穴が空いているかわかりませんでしたが、その時の研究で、どうやら365個よりも354個に近い数だったことが示唆されたのです。

このことから、実際は古代エジプト式の太陽暦ではなく、「古代ギリシャ式の太陰暦(354日周期)」だった説が浮上しました。

そこでグラスゴー大学のチームは今回、新たな分析手法を用いて、カレンダーメモリに開けられた正確な穴の数を調査。

それぞれの穴の間隔を半径77.1mmのカレンダーメモリと照らし合わせた結果、穴の数は明らかに365個ではなく、354か355個並んでいることが判明したのです。

この結果からアンティキティラ島の機械のカレンダーは、古代ギリシャ式の太陰暦を使っていた説が有力となりました。

カレンダーメモリに開けられた穴の復元モデル
カレンダーメモリに開けられた穴の復元モデル / Credit: Graham Woan et al., Horological Journal(2024:PDF)

古代ギリシャの太陰暦は、月の満ち欠けにもとづいた暦です。

1年は354日周期で、太陽暦よりも約11日短くなっています。

夜空をよく眺めている人なら実感があると思いますが、1月の間に2回満月があったり、現代の私たちの使う暦と月の周期にはズレがあります。そのため月の満ち欠けに基づいた太陰暦は、実際の季節などと少しずつズレていってしまいます。

そこで1月の周期や季節を一致させるために太陰暦では定期的にうるう月を追加して、暦を調節する必要がありました。

そのせいで太陽暦よりもズレが生じやすく、扱いづらい面がありましたが、月の満ち欠けにもとづくため、宗教行事や伝統的な月の観測に適していたのです。

つまり、太陰暦のカレンダーを採用していたとなると、アンティキティラ島の機械は「宗教暦な儀式」「祝祭日」を把握するために用いられていたのかもしれません。

しかし、この結果もまだ断定的なものではなく、アンティキティラ島の機械については仕組みや用途の点で不明な箇所がたくさん残されています。

特に最も大きな疑問は「誰がこの機械を発明したのか」ということです。

高度な天文学知識と、当時の1000年先を行くと技術力を持っていたのですから、群を抜いた天才であることに違いはありません。

その天才の正体が明らかになる日は、果たしてやってくるのでしょうか。

参考文献

GRAVITATIONAL WAVE RESEARCHERS CAST NEW LIGHT ON ANTIKYTHERA MECHANISM MYSTERY
https://www.gla.ac.uk/news/headline_1086643_en.html

Antikythera mechanism, world’s oldest computer, followed Greek lunar calendar
https://www.livescience.com/archaeology/antikythera-mechanism-worlds-oldest-computer-followed-greek-lunar-calendar

元論文

An Improved Calendar Ring Hole-Count for the Antikythera Mechanism: A Fresh Analysis(PDF)
https://bhi.co.uk/wp-content/uploads/2024/06/07-HJJuly24-AOTM-2.pdf

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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