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58歳で「美尻講師」に。拒食症や重度の腰痛を経て夢を叶えた薫さんの「遅すぎることはない」という結論

  • 2024.7.3

美尻講師、ブラビッシモ薫さん。親愛の情を込めて自らと同世代の仲間たちを"おば"と呼び、"おば"が輝ける社会のためにSNSで発信、その投稿にはいいね!と笑いが集まっている。58歳で美尻塾を主催し、そのエネルギー溢れる人柄から、悩みを抱えた多くの女性が駆け込む場所をつくっている薫さん。いつでも人を笑顔にし、ポジティブマインドを持つ彼女だが、その裏側では拒食症の経験やトラウマからの外傷後ストレス障害(PDSD)など、波乱万丈な過去があった。 「当時は自分のことが大嫌いでね。重い腰痛持ちだったり、病み症な性格もあって、生きづらくてどうしたらいいか分からなかった」

そう語る彼女が、ざまざまな葛藤の中で見つけた“生き方のトリセツ”とは。

重度の腰痛持ちだった40代

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運動に目覚める前は、専業主婦で3児の母だった薫さん。結婚退職をした後、子育てをしながら重度の腰痛に苦しんでいたという。また蕁麻疹、原因不明の耳鳴り、慢性的な頭痛があり鎮痛剤を手放せない生活。不調のオンパレードだった。

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そんな薫さんがダンスを始めたのは42歳。ぎっくり腰や体に痛みを抱えながら踊る日々が続いたが、 49歳の時、体が変わるきっかけが訪れる。

「“もしかしたらストレッチが腰痛の私を救ってくれるかもしれない。”と気づいて。そこからは自己流で毎日行っていましたね。すると30年間腰痛持ちだった腰が、1年で驚くほどラクになったんです」 その劇的な腰痛の変化は、かかりつけの整体でも驚かれるほど。その整体師に、ヨガも試してみたらいいのではと勧められた。一瞬で惹き付けられた薫さんは、その場でヨガスタジオに電話し、即入会。

ヨガスクールに通いながら、わずか1年弱というスピードで生徒とスタジオを持つヨガ講師になった。

「自分と同じように体に痛みを持っているダンス友達が多くて、そんな彼女たちが“ヨガを教えてほしい”と機会をくれたのがきっかけでした。最初は会場費を割ってもらう程度で開催していたのですが、知り合いのビルオーナーさんから空き部屋を勧められて。そこからは、とんとん拍子に契約からスタジオ完成まで進んだという感じでしたね」

一見、全てが好調に進んでいる人生にも見える彼女だが、数年前にある大きな事件を経験していた。

ある日突然、パニック障害が発症

そもそも42歳でダンスを始めたのは、ある事件がきっかけだった。

それはいつもの昼下がり。学校から帰宅した子供たちとお昼を食べていたとき、 “ズン”という大きな地響きと共に、近所の人が慌てて玄関へ駆け込んできた。

「薫さん! 家の前に!」

子どもたちを部屋に残し、急いで外に出ると、そこには想像を超える光景があったという。

思いもよらぬ事故現場に遭遇。そのあまりの悲惨さと恐怖から、現場を凝視したままで立ち尽くしてしまった。その日からというもの、日々フラッシュバック現象に苦しみ、だんだんと心が暗く沈んでいったのだという。

「最初は子どもたちのメンタルばかり気にしていたのですが、子どもの立ち直りは思ったよりも早くて、一番精神的に来ているのが自分だということに後から気が付いたんですよ」

入浴中に過呼吸で倒れたのをきっかけに、不眠症や摂生障害に発展。

心療内科から診断されたのは、ショッキングな経験からくる“外傷後ストレス障害(PDSD)”だった。

彼女を変えた“出会い”

抗うつ剤を飲み、睡眠剤がないと寝られない状態が3カ月ほど続いた。

「一人でお風呂にも入れないし、外出もできなかった。死んだように生きる日々が続いていましたね。当時を振り返ってみても、自分がどう生きていたのか全く思いだせないんです。

そんなとき、たまたま娘が友達からEXILEのPVを借りてきたんです。それをチラリと見た時、釘付けになって……。画面の中で楽しそうに踊るメンバーがキラキラと輝いて見えて、“なにあれ、同じ人間?”と驚いたんです。

あんな風に光を纏い、みんなにエネルギーを与えて生きている人達と、大切な家族にさえ何もしてあげられず、こんな風に落ち込んで生きている自分も、同じ“生きている”なんだなと思って」

その瞬間、彼女のなかでスイッチが入る音がした。 「私も向こう側に行きたい! そう思ったんですよね」 そこからは、「なんだろう?」「興味ある!」などの直観に従う覚悟を決めているのだと話す。

その日を皮切りにEXILEを観始め、マキダイさんのファンに。

そしてある日、彼のブロマイドを枕の下に入れて寝ると、半分の睡眠剤で寝られるようになった。そこからは徐々に睡眠剤を減らしていき、最終的には断薬できるほど回復した。自身の急激な変化に驚き、 “EXILEしかない!”と思った薫さんは、即ファンクラブに入会。ライブを探して、ブログをスタートした。そして、EXILEのように踊りたいという気持ちからヒップホップも習い始めた。

「1日ですべてをスタートさせてしまうほど、EXILEという存在が私にエネルギーと、生きる意味を考えさせてくれたんです」

当時、薫さんが42歳の時の出来事だった。

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コロナ禍で知った“生き方のコツ”

「私、実は病みがちな性格で、すぐ精神的に参ってしまい、どん底に落ちるという経験を何度も繰り返してきました。

19歳の時は、失恋で拒食症になり入院。義両親の介護があったときは、毎日朝が来るのが怖くて。娘にも、“あの頃のお母さん、全く笑ってなかったね”って言われるほどでした」

ダンスに救われ、ストレッチを機に51歳でヨガ講師になった薫さんは、コロナのパンデミックにより再びひどく落ち込みかけた。

その際、彼女を救った“新しい考え方”があった。

「コロナでヨガの生徒さんと会うことが無くなってからは、この状況をどう生かせば落ち込まずに済むかを考え、思いついたのが勉強をするということでした。そこからは心理学や脳科学、仏教などの本を片っ端から読み始めました。

すると、読んでいるうちに“生き方にはコツがあるんだな”ということに気が付いたんです」

「人には、自分が持っている力でスイスイと上手に生きられる人と、私のように何をしてもダメで、どうしたらいいか分からず、生きづらくて苦しんでいる人との2パターンがあるんです。私側の人たちは、勉強しないとそのやり方を知らない。だから“生きるのにやり方があったんだよ、知ってた?“って。

今はそれをみんなに伝えているところ。私が助かった言葉や考え方を生徒さん達にシェアし、少しでも自分と同じ悩みを抱く人たちを楽にできたらと思うんです」

57歳で「美尻教室」をスタート

コロナ禍でヨガレッスンに閑古鳥が鳴いたのを機に、ボディメイクに目覚め、トレーニングに励むようになった。

「ヨガで体は健康になり腰痛は治ったけれど、下半身が太いという悩みは消えずにいたんです。“54歳からトレーニングを始めて何か変わるのか?”そんな疑問が何度も頭をよぎったけれど、仕事もないし、面白がってやってみようと思いましたね」

継続して 8カ月が経ったころ、“ミセスの大会に出ないか”というオファーがきた。 思い切って大会に参加した薫さんだが、結果は北関東大会一戦での敗退。 「自分の体型に少しだけ自信が付いた頃だったので、悔しかったです。けれどその大会がきっかけでスタイルの質問を受けることが多くなったんですよ。そこで話を聞くたびに、“女性は腰痛の悩みよりも、スタイルアップに興味があるんだ”と気づきました」 それを機にボディメイククラスを作り、生徒の体に変化が訪れた2年後にコースを増加。「お尻がキレイ」と褒められることが多かったことから、“美尻のサポートをしつつ体の痛いところをメンテナンスする”という切り口で、自身と同年代の女性に向け、57歳で「美尻教室」をスタートした。

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輝くための入り口は、いつだって“自分の体”から

「落ち込んだ分だけ、“自分のトリセツ”が完成していく」 そう話す薫さんには、今も大事にしている教えがある。

お坊さんの説法から学んだ「心技体」という言葉。

「心を強くしたり、精神を整えるためには、まず“体”から見直すことが大切だという教えです。体が整うといつの間にかそれは“技術”となり、技術が身に着いた頃には“心”が整っているんだそうです。 当時、苦しくてどうしたらいいか分からずもがいていたけれど、まず必要なことは体のメンテナンスや、自分の体についてもっと知ることだと学んだんですよね」

ヨガと出会い、自分の体と向き合うことを愚直に続けて9年。今、彼女はこう語る。

「自分で試行錯誤しながら体を動かしてきて、しっかり向き合ってきたからこそ、自分のことが好きで大切にできているんだと思います。私の心がいつでも満タンな状態でいられるから、そこから溢れたものをこうやって人に提供することができるんだと。

まるでジェットコースターのような40代でしたが、今となってはあの頃があったからこそ“今”の私がココにこうして在るのだと思っています」

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ブラビッシモ薫さんが伝えたい「一番大切にしてほしいこと」

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ボディメイク講師という仕事を通して、生徒から人生相談を受けることも多いという。

「多くの生徒さんと接する中で、人は誰しも苦しい時期や辛いことを経験してきていると感じています。大切なのは“起こったことをどう捉えるか“。それを学ぶためにも、まずは自分の体がどうなっているのかを知るところから始めてほしい」

「“自分のことを置き去りにしている”という事実に気づいてない人が多い。周りの人のこと、家族のこと、子どものこと、他人のことばかり優先していると、いつの間にか自分のことがからなくなってしまう。だからこそ、まずは“自分は大切なものである”ということに気づいてほしいんです。

一番最初の指導は、“手で体を洗いながら、ありがとうとつぶやくこと。怪しいと思いますか?(笑)

心がこもってなくてもいいんです。ただひたすら、やってみてって伝えています。 私もこの洗い方を毎日行い、1-2カ月続けたころで涙が溢れて止まらなくなりました。“あぁ私、自分の体にありがとうって言ったことが今まで一回もなかったんだな”って気が付いたんです。腰が痛いとか下半身が太いとか、自分の体を攻め続けてきたなと。そこからは自分自身が大切になり、自分の体に感謝の気持ちを持って向き合えるようになりました。これは運動で体を変えるというのも同じことで、その気持ちを持ったうえでトレーニングを行うと、今までとは全く違うものになるんです。

それはただ“やらされている”だけではなくて、“自分と向き合う気持ちが変わる”ことで、驚くほど結果も変わってくるんです。例えば美尻教室だと、お尻の上がり方にも表れます」

続けて彼女は力強く言った。 「何事も遅すぎることはないんです」そう話す彼女の周りには今日も、再び輝きを取り戻した女性たちの笑顔が溢れている。Photo by Kaoru Nakada

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