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「泥臭くてもいいから作品にしがみつく」ドラマ『ダブルチート Season2』主演・市原隼人インタビュー。俳優人生を語る

  • 2024.7.3
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写真:Wakaco
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―――今回Season2から参加するにあたり、どんなことを感じましたか?

「すでに構築されていた現場の空気感がありますから、そこに途中から入る難しさや緊張感はありました。でも『ダブルチート』のチームが、Season1から作品の世界をしっかり作り上げてきたからこそ、地上波ではできないことがSeason2としてWOWOWドラマでできたと思うので、『ダブルチート』の世界を熟知したスタッフとともに、作品の世界を掘り下げられたことは喜びです」

―――監督とはディスカッションをされたのでしょうか?

「撮影に入る前に第1話から最終話まで、脚本を見ながらかなり深いところまで話し合いました。監督の演出は迷いがありませんし、照明、音声さんなどの技術スタッフの皆さんも役者のことを考えて寄り添ってくれる現場だったので、安心して芝居ができました。でも本番が近づくと、どうしようもない孤独感に襲われることもありました」

―――それはどのような感覚なのでしょうか?

「役に自分が引っ張られて巻き込まれるような気がしてしまうんです。これは誰にも理解していただけないかもしれません。田胡という複雑な人物を演じる自分だから感じることだと思います」

写真:Wakaco
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―――Season2は、ハードなクライムサスペンス作品です。オファーを受けられたときのお気持ちを教えてください。

「最初に脚本を読んだとき、田胡悠人は、かっこいい男ではないし、生き方も褒められたものではないけれど、生々しい存在感を感じました。人間が生きていく上での、痛み、苦しみ、強さ、覚悟、色々なことを感じさせる魅力的なキャラクターです。

でも次第に、このドラマで描かれる“正義”は、ある一線を超えてしまうと“正義”とは何なのかがわからなくなってしまうような怖さがあると感じました。田胡悠人にも彼なりの信じる道理があって、その一線を超えるか否かというギリギリラインに立っている男。だから“これは難役”になると悩みました」

―――田胡悠人は詐欺師ゆえに、本当の自分を隠し続けているので、何が本当で何か嘘なのかわからない感じがありますね。

「田胡は会話が巧みですし、話術で自分のペースに引き込んでいく力があります。そういう面白さもありますが、常に暗闇からひとつの答えを探し出そうとしている感じもするんです。

その答えを見つけるために詐欺師を演じているのか、それとも根っから人を騙す詐欺師なのか、詐欺師にならなければいけない事情があったのか…そんな風に人を惹きつけ、翻弄させるキャラクターなので、とても難しいと思ったんです」

写真:Wakaco
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―――本作で詐欺師を演じるにあたって、どのような準備をされましたか?

「フィクションなのでキャラクターは虚像であり、役者は常に虚像を実像のように見せるために嘘をついています。僕がこの役に取り組むにあたって準備したことは、田胡悠人をリアルに見せるために、彼に寄り添うこと。これ一択です。

でも撮影中、涙が出てこなくなったり、声がうまく出なくなったりということがありました。彼に寄り添い過ぎたのかもしれません」

―――“役者は嘘をついている”という言葉が衝撃的ですが、どの役でもそう思いながら演じているのでしょうか?

「はい、思っています。観てくださる方に申し訳ないなという気持ちもありますが、虚像とはいえ、生々しく存在する人物として演じ切ることを心がけています」

―――リアリティを意識して演じられて、ご自身の中で田胡役の正解は見えましたか?

「どうでしょう…正直、芝居にはたったひとつの正解はないと思います。僕自身、これまでいろいろな作品に出演してきましたが、100%の満足を感じたことはありません。でも僕たちの仕事は、作品を見てくださる方々に感動したり、楽しんでいただいたりすることなので、そのために全力を尽くすことが大事だと思っています」

―――満足できない中でモチベーションを保つのは大変ではないかとお察しします。

「そうなんです。撮影の後、監督に『いいカットが撮れましたね! 』と言っていただいても、自分ではそれがいいのかどうかもわからない。でも監督の言葉を信じて、しがみつくしかないので」

©WOWOW テレビ東京
©WOWOW テレビ東京

―――ドラマでは田胡として人を騙していますが、市原さん自身は騙されやすいタイプですか? それとも騙されない自信はありますか?

「騙されやすいです(笑)。僕はどんな人でも必ずいいところがあると信じているので。母親から教わったのは『人を恨んではいけない』ということ。何か良くないことがあっても『人を恨まず、罪を恨みなさい』と言われてきたので、人を信じ続けたいです。

最初から人を突き放し、信じないなんて自分はありえない。誰でも可能性を持っていると信じたいし、そう思って生きていく方が後悔しないと思うんです」

―――先程、「役者は嘘を演じているから、騙しているようで苦しい」とおっしゃっていましたが、それでも市原さんが役者を続ける理由はなんでしょうか?

「それはもう見てくださる皆様に喜んでいただけるのなら…という気持ちです。 『市原さんの出演作を見て、落ち込んでいた気持ちが払拭できました』『体調が悪いのですが、市原さんの作品を見て元気になりました』などのメッセージをいただくと、もう涙が出るほど嬉しくて。20代前半で、僕は作品を見てくださる方のために頑張らなくてはいけない! と思うようになりました」

―――そのメッセージ、ファンの方はうれしいですね。

「カッコつけず、泥臭くてもいいから、作品にしがみついていこうと思っていますし、皆様の心を動かせる作品に関わっていきたいです」

写真:Wakaco
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―――30代後半を迎えられて、10代、20代の頃に比べてお仕事への向き合い方は変わってきましたか?

「仕事への向き合い方は変わりましたね。キャリアを重ねて撮影現場の見え方も違ってきますので。これからのことを考えると、どうなっていくのかなという楽しみはあります。

今回、陣内孝則さんと久しぶりに共演したのですが、長くやっていると昔の自分を知っている方と再びお仕事ができるのも喜びです。やはり『成長したと思ってもらいたい』ので、やる気も湧いてきます」

―――撮影の際、陣内さんとはお話しはされましたか?

「このドラマは緊張感のあるシーンが多く、役的にもあまり崩せないので、本番以外でも田胡役の雰囲気を維持していました。だから今回はあまりお話しができなかったんです。でも本音を言えば陣内さんともっとお話しがしたかったです」

―――陣内さんは大先輩ですが、市原さんご自身もベテランの域に入り、俳優の後輩との共演も多いと思います。彼らにアドバイスされることはありますか?

「僕は共演者、スタッフとは、年齢関係なく、作品の成功を目指してやれることをやろうという気持ちで接しています。後輩たちには自由に挑戦して欲しいし、ダメだったらまたチャレンジすればいい。“こうしてはいけない”という制限をかけず、みんなが自由にベストを尽くせる現場が1番だと思います」

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―――お話を聞いていると、本当にまっすぐな気持ちで仕事に邁進しているということが伝わってきます。プライベートな時間とのバランスはどうされているのでしょうか?

「もう人生の3分の2くらい俳優として演じている状態なので、ずっと竜宮城にいる感じなんです(笑)。だから俳優の肩書を外して、何の予定も入れず、自由に過ごす時間は自分にとっての贅沢であり、ご褒美だと思っています。だからときどき、自分にご褒美を与えて、仕事と私生活のバランスを取るようにしています」

―――今後の俳優人生において、何か目標はありますか?

「本格的なアクション作品をやりたいです。言い続けているのですがなかなかチャンスがなくて。30代後半なので体力的にいつまでもできることではないし、早く実現したいですね。

あと10〜20代の頃の無鉄砲な芝居というのは、自分の財産だと思っているので、あの頃のような芝居をしたい。と同時に、やはり年を重ねて、涙もろくなったり、人を慈しむ心が芽生えたりしているので、そういう気持ちを表現できるような芝居もしてみたいです。

とにかく一世一代の芝居をしたい! さっきも言いましたが100%大満足という気持ちになったことがないので、それを感じたい。それがいまの目標です」

―――最後に、『ダブルチート 偽りの警官 Season2』を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。

「僕が演じる田胡悠人は、巧妙な手口で人を騙す詐欺師であり、その詐欺から派生する事件など、さまざまな人を巻き込みながら展開していくクライムサスペンスです。かつ、人間の心の闇も掘り下げたヒューマンドラマでもあります。皆さんもきっと田胡に騙されると思いますので、覚悟してお楽しみください」

(取材・文:斎藤香)

【作品情報】
『WOWOW×テレビ東京 共同製作連続ドラマ ダブルチート 偽りの警官 Season2』
WOWOWプライム・WOWOWオンデマンド
2024年6月29日(土)
午後10:00~放送・配信
主演:市原隼人
出演:内田理央 荒川良々 淵上泰史 結木滉星 / 升毅 羽場裕一 岩松了 /
橋本じゅん 伊藤淳史 陣内孝則(特別出演) 向井理
脚本:田康弘 藤澤 浩和
監督:波多野貴文 河野圭太(共同テレビ)
ヘアメイク:大森裕行 (VANITES)

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