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「私の方が大変だった」夫に対してイライラが止まらない。愛憎の果てに復讐を選んだモラハラ妻の記録

  • 2024.7.2
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ママがやったら当たり前なのにパパがやったら褒められるのは、どうして? 家庭の事情でママばかりが休むことになるのは、どうして? 何をされても夫にイライラしてしまうのは、どうして?

消化しきれないたくさんの「どうして?」が、夫への激しい攻撃になってしまったモラハラ妻の姿を描くコミックエッセイ『夫にキレる私をとめられない』(いくたはな/KADOKAWA)。この物語は著者・いくたはな先生の実体験だという。過去のいくた先生がそうだったように、夫へのもやもやを抱えている女性に読んでいただきたい1冊だ。

長男出産後のいくた先生が、夫から受けていたモラハラの日々を描いたエッセイ『夫を捨てたい。』の後日談にあたるのが『夫にキレる私をとめられない』である。

モラハラを続けてきた夫はやがて改心し、よきパパ、よき夫としてふるまうようになっていったのだが、今度はいくた先生がモラハラ加害者へと変わっていき……というのが今回のエピソードだ。

「産後の恨みは一生」という言葉があるが、出産という大きな変化を経験した女性が、その期間にパートナーから十分なサポートや理解を得られなかったと感じると、その不信感は永遠に妻の心に残り続ける。

どれだけよきパパとしてふるまおうと、夫の過去が消えることはない。私の方が大変だった! やらなかったくせに! できなかったくせに! 逃げたくせに! あの日の私を蔑ろにして、生まれ変わったつもりになんてさせられない。妻は夫をそう呪い続ける。

いくた先生を苦しめたのは、幾度となく襲い掛かる不平等感だ。自分は周囲に頭を下げ、時には嫌な顔をされながら仕事と育児を両立しているのに、夫にはその気苦労がわからない。謝り続けることで自尊心が削られ続け、自分の存在価値がわからなくなっていく様子が克明に描かれてゆく。

やがて、ささいなすれ違いが導火線に火をつける。いくた先生の中に燻っていた恨みつらみが、夫への攻撃という形で爆発していく描写が生々しい。「全部忘れてなかったことにできない」。その言葉に妻の情念のすべてが詰まっていると思う。

いくた作品の醍醐味は印象的なモノローグの数々だ。端的なのに心にグサッと刺さる、不思議なパワーを秘めている。今作は実体験ということもあり、放たれる言葉の数々が読み手の心の深いところにより一層突き刺さるように思う。

私は出産経験者として、あらゆる母親は多かれ少なかれモラハラの火種を秘めていると思っている。現在進行形で、身近な人に加害している人もいるだろう。この作品を読んで「私には無関係な話だわ」と思う母親はほとんどいないのではないか。

作品をInstagramで公開した当時、読者から厳しい声も届いたそうだが、救われたという人も少なくなかったという。本作はモラハラ妻の反面教師にもなるし、「あっち側」へ行くのを防ぐ命綱にもなり得るのかもしれない。

相手の尊厳を傷つけてしまうモラハラ。物語の終盤は、なぜそのような心理状態に陥ってしまったのかという後悔と反省が当事者目線で語られる。心に巣くう怪物に脅かされながら歩んだひとりの女性の記録に、ぜひ心を揺さぶられてほしい。

文=ネゴト/ あまみん

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