1. トップ
  2. NHKの夜ドラマ「ダントツで面白い」と評判 “秋クールナンバーワン”の呼び声高い本格派作品に注目集まる

NHKの夜ドラマ「ダントツで面白い」と評判 “秋クールナンバーワン”の呼び声高い本格派作品に注目集まる

  • 2024.11.20

口コミで評判が広がり、秋クールナンバーワンの呼び声も高い『宙わたる教室』(NHK総合)。新宿の定時制高校を舞台に、学ぶことが人生を豊かにし、自己肯定につながっていく過程が、繊細に描かれる。さまざまな事情を持った学生たちの瞳に、希望が満ちていく姿を見ていると、自然と勇気が湧いてくる。

学ぶことの美しさ

undefined
『宙わたる教室』11月19日放送(C)NHK

学校、勉強、学び。『宙わたる教室』で描かれるそれらはとても美しく、尊く映る。それは、本作に出てくる生徒たちが、学びを通して世界を開き、自分を解放していく姿が丁寧に描かれているからだ。

第1話で描かれた不良生徒の岳人(小林虎之介)は、読み書きが困難なディスレクシアという学習障害を抱えていた。音で聞いたものであれば正しく理解できるのに、読んだり書いたりすることができない。本人も周りもそれに気付くことができず、岳人は低い自意識を抱えたまま、定時制高校に通っていた。目標を持って進学したにも関わらず、学習障害がそれを阻む。

第2話では、フィリピン人の母と日本人の父を持つアンジェラ(ガウ)の物語が描かれた。真面目に学習するも言語の壁もあり、なかなかついていけない。娘のレイナ(黒崎レイナ)に店番を任せてまで自分が高校に通う意味はあるのかと自問自答するように。クラスメイトが起こした事件に巻き込まれたことを口実に退学しようとする。

第3話では、学ぶ意欲があるにもかかわらず、起立性調節障害で保健室登校を続ける名取佳純(伊東蒼)が居場所を見つけていく過程、第4話では熱心に授業に望みすぎて、クラスメイトと衝突していた長嶺省造(イッセー尾形)が定時制高校に通う理由、妻との思い出が描かれる。

定時制高校の学生たちは、さまざまな理由で定時制高校に通い始めるも、劣っているという自意識、そこから生まれる怒りや諦念が、心の中にくすぶっている。そんな彼らが、主人公・藤竹(窪田正孝)と出会い、科学実験を通して知らない世界を知り、自己を少しずつ肯定していく。

その過程に、藤竹による熱血なセリフがあるわけではない。科学実験を通して、生徒たちが自分で気付き、これまでの知識を生かして成功体験を重ねていく。学び、行動して、発見し、その過程が人を変えるのだ。知識が人を救っていく様はこんなに美しいのかと、自然と涙が溢れてくる。

知識が自分を支え、周りを変えていく

undefined
『宙わたる教室』11月19日放送(C)NHK

後に、岳人、アンジェラ、佳純、長嶺は藤竹顧問の元、科学部を結成。高校の科学部などが研究発表を行う学会への参加を目指して、研究を行うことに。

科学部メンバーは、実際に発表会に足を運ぶも、レベルの高さに圧倒される。できるわけないと尻込みするも、藤竹に背中を押され、これまでの知識を生かして発表のテーマを決めて実験をし、要旨をまとめて提出する。これまでおこなってきた惑星や地学に関する知識と実験が結実した瞬間だ。しかし、定時制高校の参加の前例がないと、高校科学部の発表会の参加を断られてしまう。それに誰よりも怒ったのは藤竹だった。学び、自己肯定をしたものの、どうせダメだと諦める。でも、科学部の努力を見てきた藤竹が、部員の誰よりも怒ってくれた。学ぶことが自分を支え、それでもダメだと思った時に先生が背中を押す。第5話では、人との関わりのなかに生まれた救い、喜びが描かれた。

高校生発表会を諦めざるを得なくなった科学部は、学会を目指して準備を進めることに。第6話では科学部メンバーの情熱が、全日制に通う学生の心を温めた。学びの経験が自分の心と行動を支え、周りを動かす。一人ひとりの努力が繋がって、一つのものを作っていく過程は、夜空に浮かぶ星座のようにほのかな光を放つ。やはりこの物語は美しいのだ。

『宙わたる教室』の原作は、伊与原新(いよはらしん)の同名小説。この小説自体が、大阪の定時制高校が日本地球惑星科学連合2017年大会「高校生によるポスター発表」の優秀賞を受賞し、JAXAの基礎実験に生かされた実話に着想を得て書かれたもの。実話がもとになっていることを踏まえると、よりこの物語の清らかさが胸に迫ってくる。

SNSでは、「毎回泣かされる」「ダントツで面白い」という声も。学ぶことは、知らない世界、知らない自分への入り口になる。そんな実感を与えてくれるドラマだ。

NHKドラマ10『宙わたる教室』 毎週火曜よる10時放送
NHKプラスで見逃し配信中


ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202