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「こんな回収あり?」最終週直前NHK『虎に翼』因縁を残していた少女の顛末に伊藤沙莉“寅子”が絶句

  • 2024.9.21

最終週を目前とした連続テレビ小説『虎に翼』の第25週「女の知恵は後へまわる?」において、ピックアップしたいのは司法試験に合格した桜川涼子(桜井ユキ)の言葉、そしてなんと言っても、過去に寅子との因縁を残す美佐江の顛末だ。SNS上では「ずっと気になってた美佐江のこと」「こんな回収あり?」と、驚きと戸惑いの声が入り混じっている。

自分とは何か、を問い直す

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『虎に翼』第24週(C)NHK

ついに司法試験に合格した涼子。新潟で喫茶ライトハウスを経営している間も、彼女の立場を脅かすさまざまな出来事に、苦しむことも多かっただろう。しかし、それらをものともせず、まるで女子部で仲間たちとともに勉学に励んでいたあのころのように、額を突き合わせ試験勉強に勤しむ場面もあった。

よね(土居志央梨)、寅子のもとへ結果報告にやってきた涼子。「とってもワクワクするわ、涼子様が弁護士になる日がくるなんて」と寅子が喜びの声を向けると、涼子は少し目を伏せながら「わたくし、司法修習を受けるつもりはございませんの」と本心を明かす。

それなら、なぜわざわざ試験を受けたのか? その理由として、涼子は「強いて言うなら、わたくしなりの、世の中への股間の蹴り上げ方かしら」と重ねる。

かつて涼子は、華族として何不自由なく生活してきた。その実情は、世間が想像するほど輝かしいだけのものではなかったが、時代や戦況とともに身分が変わるや否や、手のひらを返したように周囲は態度を変えた。

弁護士に、なれなかったわけではない。努力して、なりたいからなった。これからも、彼女の選択次第でどうとでもできる。いわば涼子は、長い時間をかけて自分の人生を取り戻したのかもしれない。「わたくしを、すぐに不幸で可哀想なものに落とし込もうとする、世の中に」と静かに語る彼女の目には、何かに精一杯向き合い、やり遂げた者特有の光が宿っていた。

涼子の居住まいを見ていると、大学院での研究を諦め、家事やアルバイト中心の生活を送るようになった優未(川床明日香)に、寅子がかけた言葉を思い出す。「私は優未が、自分が選んだ道を生きてほしい」と力強く放たれた言葉は、優未や涼子に限らず、現代を生きる私たちにとっても、お守りのように持っておきたい宝物のように輝く。

『虎に翼』メッセージは「声をあげることの大切さ」

第125話では、かつて少年少女の非行事件に関わっていた可能性のある美佐江が、その後どんな人生を送っていたかが明らかになった。彼女の娘、そして母が登場し、美佐江は出産した3年後に亡くなってしまったことが知らされる。

美佐江が最後に書き残したという手帳には「あの人を拒まなければ、何か変わったのか?あの人は私を特別にしてくれたのだろうか?」と、おそらく寅子に向けているであろう言葉があった。

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『虎に翼』第24週(C)NHK

『虎に翼』の根底に流れるメッセージとして、大変なとき、つらいとき、苦しいとき、すべて一人で抱え込もうとしすぎず、どんな結果に繋がらなくとも、何も得られなくとも、声を上げることそのものに意味がある、といった気概を感じる。

美佐江も、声をあげようとした。いや、彼女なりのやり方で、ずっと「助けて」と言っていたのかもしれない。あと一歩、踏み出せば届いたかもしれない寅子の手を掴み損ねた美佐江。そして、寸前のところで糸を断ち切り、掬いきれなかった寅子。彼女たちの人生は交わることなく、なんとも後味の悪い形で終着を迎えようとしている。

努力しても、時間を費やしても、ただ虚しい結果に終わるだけかもしれない。それでも声を上げること。この『虎に翼』は、さまざまなキャラクターやストーリー展開を通して、そのこと一つだけを描いてきたような気さえする。



NHK 連続テレビ小説『虎に翼』毎週月曜〜土曜あさ8時放送

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧 Twitter):@yuu_uu_