1. トップ
  2. 「バルス」に込められた“本当の意味” 『天空の城ラピュタ』の呪文がSNSを沸かせるワケ。

「バルス」に込められた“本当の意味” 『天空の城ラピュタ』の呪文がSNSを沸かせるワケ。

  • 2024.8.30
undefined
© 1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

2024年8月30日(金)、金曜ロードショーで『天空の城ラピュタ』が放送される。機械工の少年・パズーと空から降ってきた不思議な少女・シータによる空飛ぶラピュタ帝国をめぐる物語。少年少女の冒険譚でありながら、発達した技術や文明への警鐘も感じられるストーリーになっている。

SNSを賑わせる「バルス」の意味とは?

undefined
© 1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

放送するたびにSNSで話題になる滅びの呪文「バルス」。作中では、追い詰められたパズーとシータが、ラピュタ帝国を復活させて、世界征服を目論むムスカに言い放つ言葉だ。「バルス」という言葉とともに、城の上半分はさらに上空へと浮き上がり、下半分は崩れてしまう。

「バルス」という言葉の由来は諸説あるが、有力なのがトルコ語で平和を意味する「barış」を語源にしているという説だ。平和を意味する言葉が、滅びの呪文になっているとは疑問がある。

undefined
© 1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

ラピュタは進んだ文明や技術により強大な力を持っている帝国で、財宝を狙う者、その技術を使って世界征服を目論む者がラピュタを探し回っている。人々が争って追い求めるほどの異常な力は、滅ぼしてしまった方が平和に近づくというメッセージが「バルス」には込められているのかもしれない。

作中で、シータはラピュタ帝国の正当な王位継承者であることが明らかになる。彼女は幼いころに、祖母からラピュタ帝国に伝わるさまざまな呪文を教わっており、「バルス」もそのなかの一つ。ラピュタ帝国に住む人々は、自国が持つ技術に危機感を覚え、悪用する者がでないように、平和が脅かされないようにという願いを「バルス」に込めたのかもしれない。

少年少女の冒険譚のなかで表現される警鐘

undefined
© 1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

『天空の城ラピュタ』で描かれるのは、パズーとシータの冒険だ。空中海賊のドーラ一家に追いかけられ、ムスカ率いる政府に追いかけられ、二人は力を合わせて必死に逃げながら、精神的な距離を縮めていく。洞窟でパンを分け合い、笑い合う二人のシーンがなんともかわいらしい。ただの機械工だったパズーと少し弱気な少女だったシータが、冒険を通じて徐々に精悍な顔つきになっていくのも、本作の見どころだ。

undefined
© 1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

少年少女の成長を描きながらも、本作の中心にあるのは空飛ぶ古代帝国・ラピュタだ。作中の最後にパズーとシータはラピュタを訪れ、ロボット兵と交流する。滅びたラピュタ帝国には美しい自然が息づき、人が住んでいたときよりも平和に見える。このシーンからは、発達し過ぎた技術が平和な世界を生むとは限らないという、人間が生み出す文明や技術への警鐘が感じられる。

undefined
© 1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

そして、作中に出てくる大人たちは、ラピュタを追い求めてまだ幼いシータを利用しようとする。作中の全てをかけて、ラピュタの存在自体が平和な生活を脅かしていると示し続けているのだ。

パズーとシータのかわいらしいやりとりの他、記憶に残るセリフも多い『天空の城ラピュタ』。ファンタジーな世界で描かれる行き過ぎた人間の営みが平和や豊かな環境を脅かすことへの警鐘を感じることができる。



ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202

© 1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli