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「すべてにおいて長距離選手の中で一番」3代目山の神・神野大地が語る、“大迫傑”の強さとは

  • 2024.8.9
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連日、様々な競技で盛り上がりを見せているパリ五輪。8月10日(日本時間15:00予定)には注目競技の一つ、男子マラソンが行われます。男子マラソン日本代表は小山直城(28)、赤崎暁(26)、大迫傑(33)の3選手。それぞれの選手の強さについて、プロランナーの神野大地選手に聞きました。

大迫はすべてにおいて長距離界で一番

ーーまずは、2021年の東京五輪のマラソンで6位入賞を果たした大迫選手について伺います。神野さんが感じる、大迫選手の魅力を教えてください。 

神野 結果を出し続けているところがすごいですよね。今、注目されながら結果を出している男子の長距離選手は、大迫さんと川内(優輝)さんくらいではないかと。

陸上競技に対する向き合い方、練習への取り組み、そして結果。大迫さんはすべてにおいて長距離選手の中で一番ではないでしょうか。大迫さんの自己ベストは2時間5分29秒(2020年3月東京マラソン)ですが、大迫さんはもっといいタイムを出せると思っています。僕が言うことではないと思いますが。 

ーーそれだけ結果を出し続けることは難しいということですよね。なぜ大迫選手は注目を浴びながらも好走を続けられているのでしょうか?

神野 とことん自分と向き合って精進しているからだと思います。強くなるためにやるべきことを決めて、それをやりきる能力は陸上選手の中でダントツです。トップアスリートでもなかなか真似できません。

僕は仲良くさせてもらっていることもあり、大迫さんと一緒に練習をさせてもらったこともあります。そのときに感じたのは、走行距離や練習内容の質、トレーニング、どれをとっても、誰も真似できない練習をしているということです。大迫さんは日本人と争うような選手ではない、というか。

陸上は努力を裏切らないスポーツ

ーー大迫選手は天才肌な印象を受けていましたが、誰よりも練習をしているのですね。

神野 大迫さんって、かっこよくてスマートに見えるじゃないですか。どんな練習をしているのかあまり見えないと思うんですけど、練習めちゃくちゃしてるんです。やはり、やることをやっているからこその結果だというのは間違いないですね。

 僕は、陸上競技はセンス以上に、努力できるかどうかが一番大事だと思っているのですが、大迫さんを見ていると、陸上って努力を裏切らないスポーツだなと改めて感じます。

 ーー大迫選手は2021年の東京五輪後、現役を引退しましたが、2022年2月7日に現役復帰を表明。2大会連続で五輪のマラソン代表の座をつかみました。引退から現役復帰という流れを神野さんはどう見ていましたか?

 神野 とてつもない努力をしてきたからこその引退宣言だったと思います。競技に取り組む上で、モチベーションはめちゃくちゃ大事です。大迫さんは自分の努力がとても大変なことだということを理解していて、東京五輪を1つの区切りと捉えていたのだと思います。

 競技を続けるということは、努力をし続けるということ。その努力は並大抵のものではないので、相当なエネルギーが必要になります。

 おそらく大迫さんは東京オリンピックがあったから、どんな苦しいこともやり遂げられてきたと思うんです。しんどくなっても、五輪まで頑張ろうと考えたのではないかと。それで、五輪後に一度引退をしたと思うんです。

 ただ、体力的にはまだ限界ではありません。引退してから休養して、冷静に考えたら、まだやれると思ったのではないでしょうか。また、次の目標を見つけてもう1回やろうという気持ちが芽生えたんだろうなと。本当にすごい選手です。

小山、赤崎の爆発に期待

ーー続いて、2023年10月に行われたマラソン日本代表選考会MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で優勝した小山選手について伺います。小山選手はどんな強みがあるのでしょうか?

神野 小山選手は外さないイメージがありますね。タフなコンディションでも結果を出す強さがあります。

僕も出場した2022年の仙台国際ハーフマラソンでは、小山選手は日本人トップの3位。気温が高くても結果を出すのはすごいなと思っていました。持ち味の安定感で、真夏のオリンピックでも上位に食い込んでほしいですね。

ーーMGC2位で五輪切符をつかんだ赤崎選手についてはいかがでしょうか?

神野 赤崎選手はトラックレースでもいい結果を出しているんです。これまではマラソンとトラックの両立は難しいイメージがありましたが、赤崎選手は、トラックでの成果をマラソンにしっかりとつなげてるなと。

 パリ五輪の代表に内定してからも、マラソン練習ばかりになるのではなく、トラックの試合に出続けながらマラソンのトレーニングをしている印象を受けました。自分のスタイルを確立できていることが赤崎選手の強さだと思います。

 小山選手も赤崎選手も、大学時代の箱根駅伝などでは、それほど注目をされてこなかったと思います。「やっと俺の番が来たか」という思いをオリンピックで爆発させてほしいですね。


取材・文
岡村幸治

1994年生まれ。スポーツ新聞社で野球記者として巨人や高校野球などを取材。2021年に独立し、アスリートや経営者などにインタビューを行っている。海外旅行が好きで、2023年には世界一周の旅に出た。